でも、今後はその考え方ってかならずしも「当然」ではないはずだ。
「情報デザインおよび組織デザインにおけるツリー構造とリンク構造」では、
ファイルをベースに考える還元主義的発想から、ユーザー行動をベースにとらえるネットワーク的発想に切り替えていかないと、この膨大な情報を処理可能なWebサイトの設計なんてできないんじゃないかと思うのだ。
なんて書いたが、この発想をもう一歩進めると、情報間のユーザー導線を決めるナビゲーション=リンクの設定をそのものに、ユーザーの行動結果や意見を反映する機会をもっと増やしたら、どうかと思うのだ。
とはいえ、何もこの考え方はとりたてて新しい考え方ではないはずだ。
実際、そうしたユーザー導線はいくつかのWebサイトでは実装されていたりする。
- amazonの「この本を買った人はこんな本も買っています」やはてなRSSの「おすすめフィード」
- del.icio.us、flickrをはじめとするタグ
- CNET Japanの「ブロガー注目記事ランキング」をはじめとするランキング
ユーザー自身が情報間のユーザー導線の設定に関与したナビゲーションの形はすでに存在している。
ユーザーの意見や行動を反映しているのだから、ユーザーのことをちゃんと知りもしない設計者が勝手にリンク構造を設計するよりも、ユーザビリティも優れたものになる可能性は高いのではないかと思う。
しかし、こうしたナビゲーション・システムを導入しているWebサイトはそう多くない。
それでいて、Webサイトをマーケティング・ツールとして活用したいなんていうのはちょっと虫が良すぎる話だ。
とはいえ、はてなブックマークのように「注目のエントリー」や「最近の人気エントリー」を目立つ形で表示してしまうと、多くのノードが集まったネットワークでは数多くみられる「感染」が発生してしまい、「お金持ちほどより豊かになる」のと同様に、同じエントリーブックマークが集まるという現象が起こってしまう。
『「みんなの意見」は案外正しい』の著者、ジェームズ・スロウィッキーは、集団が賢い選択をするための条件として、
- 多様性
- 独立性
- 分散性
- 集約性
の4つの条件をあげている。
私的情報は不完全な情報なので、自分の手もとの情報だけを頼りにすると、その被験者自身は間違いを犯しやすくなる。だが、グループとしては集合的に正しい答えを出しやすい。個人としては間違ってもいいと言った途端、グループ全体としては間違えなくなるはずだ。ジェームズ・スロウィッキー『「みんなの意見」は案外正しい』
おそらく、ユーザーの行動や意見をサイトのナビゲーションに反映することを考える際も、こうした点は十分に配慮すべきなのだろう。
そして、何より、サイト設計にユーザーの意見を反映することが必要なのは、スロウィッキーのこんな言葉に象徴されているのではないか?
専門家を追いかけるなんてことは間違いで、しかも大きな犠牲を伴う間違いだというのが本書の主張だ。専門家を追いかける代わりに、集団に答えを求めるべきなのだ。ジェームズ・スロウィッキー『「みんなの意見」は案外正しい』
Web設計者は「集合知の利用」を単なる流行と考えるのではなく、周囲に流されやすかったり、狭い専門知識に固執しがちな人間の行動にみられる法則性を、いい方向に回避できる手段としてより真剣にとらえることが必要なのではないだろうか?
この記事へのコメント