「たった6つのステップで人は全世界の人々と繋がっている」的なスモールワールド・ネットワークについて、わかりやすく解説されたポピュラー・サイエンスの本だ。
で、ちょっと思ったことをメモ。

上の図は、ネットワーク全体の隔たり係数が小さいスモールワールド・ネットワークを形成するネットワークの形の1つで、ブキャナンが貴族主義的ネットワークと呼んだものを簡略化して描いたもの。
貴族主義的ネットワークの特徴は、
・極端に他のノードとのつながりをもったハブ(=コネクター)が存在
・各ノードがもつリンク数はべき乗則に従い、ごく少数のノードが非常に多くのリンクをもつ
・ハブによるクラスターが形成されている
といった点で、コネクターの存在がネットワーク全体の「世界を狭く」しているという。
さて、上の図も青いノードをスタート地点にすると、緑のノードまでは4ステップ、ピンクのノードまでは7ステップと、隔たり係数はわりと小さくなっている。
当然、隔たり係数が小さいほど、ノード間のコミュニケーションはとりやすい。
上の例なら、緑のノードとのコミュニケーションのほうがピンクのノードとのコミュニケーションよりははるかに現実的だろう。例えば、mixiなどのSNSを考えた場合でも隔たりが4ステップしかないなら、もしかしたらSNS内で旧知の知人に出会うシーンも想像に難くない。
先の図のネットワークで緑のノードがピンクのノードより有利なのは、青のノードから数えて2ステップ目にショートカットの役割を果たしているリンクが存在しているからだということに気づいただろうか?
もし、この1本のリンクがなければ、緑のノードとの隔たりは急に大きくなり、そのステップ数は8となり、むしろピンクより大きくなってしまう。
見た目の距離では、はるかにピンクより近くにあるのに、この1本のショートカットがなければ両者の隔たりは大きくなってしまうのだ。
こうしたことは地下鉄での移動の際にもたまに見られる。地下鉄に乗ればすごく遠回りだけど、タクシーを使えば1メーターという具合に。この場合、タクシーがショートカットの役割を果たしてくれる。
さて、昔からマーケティングではセグメンテーションということが言われる。
しかし、こうしたネットワークを考えると、従来のセグメンテーション~ターゲティングというマーケティング手法が、選択権が需要側に移り、かつアテンション・エコノミーの時代となり、マス的な手法の効力が弱くなっている現在では、すこし見直しが必要なのではないかと思える。
例えば、口コミといったマーケティング手法を使う場合や、ブログをマーケティング・コミュニケーションのツールとして使おうとする場合などを考えてみよう。
従来のセグメンテーションの方法では、緑よりピンクのクラスターのほうが自社にあったセグメントに属するクラスターであったとする。しかし、先にみたとおり、ピンクのクラスターまでの隔たり係数は7で緑より遠い。
また、先ほどの緑のショートカットが存在しなければ、距離的に近くにあり、感覚的にはピンクより攻略が楽だと思われる緑のクラスターが実はそうではないということもありえる。
最近、非常に思うのは、感覚的な判断のみで可能/不可能を論じることの危うさである。先の図の例では「計算」というほど、大げさのものではないが、もっとネットワークが大きく複雑になれば、緑までの隔たりとピンクまでの隔たりは感覚ではなく、計算によってしか計れなくなる。そして、大部分の現実のネットワークはそうした複雑で大きなネットワークだ。かつ人が関わるネットワークであれば、それは時間とともに変化する。
そう考えた場合、単純に個々の要素(人)の性質(興味、関心、好み、etc.)をベースにセグメンテーション(クラスター化)を行ったとしても、必ずしも、そこをターゲットにしたマーケティング施策が功を奏するとは限らない。うまく行かない理由はネットワークの特性にあったりするはずだ。
ウイルスやヒトの生物学に関してどんな知識をもっていても、それだけではエイズの流行に大きく影響するネットワークの働きについて、なんの手がかりも得られない。同じく、地球の生態系の安定性についても、生物を個別に研究しただけでは確かなことは言えない。さまざまな要素の性質を個別に把握しても、要素が集まったときどのような働きをするか、ヒントになるものはほとんど見えてこないのだ。マーク・ブキャナン『複雑な世界、単純な法則』より引用
グローバル化、インターネットによるつながり、そして、ブロゴスフィアやSNS。そうした要素を考えると、マーケティングにもネットワーク視点の発想が必要になってくるのは間違いない。
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