ユーザー中心設計における行動分析の重要性と、分析不在のペルソナの危険性
昨日の「業務システムのユーザビリティ」でも紹介しましたが、いま川床靖子さんの『学習のエスノグラフィー』を読んでいて、あらためてユーザー調査後のワークモデル分析の重要性を感じています。
語ること、行うことは、あるコンテキストの中でそうすることであると同時に、あるコンテキストを構成するという二重の行為である。
川床靖子『学習のエスノグラフィー』
これだけだとわかりにくいのですが、ここで言われていることは、日常の生活において誰かと何か話をしたり、仕事である成果物を依頼主に受け渡したりする場合でも、そこでアウトプットとして相手に受け渡される具体的な発話や成果物は、会話の流れや契約という文脈が最初から存在する状態で受け渡しが行われるというだけでなく、発話や成果物が相手に受け渡されるということ自体により会話の流れや契約という文脈が成立するということを意味しています。
つまり、会話や契約のルールは、ルールが守られて(あるいは破られて)はじめてルールとなるのだということです。
これはいわゆるエスノメソドロジー的な視点ですが、人間の行動や認知というものを理解するうえでは非常に大事な視点だと思います。特に、ユーザー中心デザイン、人間中心設計を行う場合にはこの「状況・コンテキストに埋め込まれた認知的行為」ということをきちんと理解しておかなくては、いくらユーザーの行動を観察やインタビューにより調査しても、その行為や認知の構造を正しく理解するための構造=状況・コンテキストの分析を行うことはできないでしょう…