2012年12月06日

スタートアップのスキルはより一般的なビジネススキルになる

昨日からスティーブン・G・ブランクの『スタートアップ・マニュアル』に目を通してながらあらためて、今後ここで書かれているようなスタートアップに関するスキルはより一般的なビジネススキルになってくるだろうなという印象を強くしています。



そう。全員とはいわないまでも、スタートアップに関するスキルは起業家に限定されることなく、既存の企業で働く多くのビジネスマンももつ時代がそう遠くない未来に訪れるのだろう、と。社内起業家も含めたらアントレプレナー的なミッションをもった人の割はかなり多くなるのだと思います。
そして、そうなった時こそ、これまでのビジネスのやり方が本当に大きく変わるんだろうなと感じます。

「スタートアップのスキルはより一般的なビジネススキルになる」の続き
posted by HIROKI tanahashi at 08:23| オープンイノベーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年12月04日

不確実な時代に「未知」を「既知」へ変える方法としてのオープンさ

結果的にはあとで間違えてることが明らかになったとしても、最初に自分でそう感じたのなら、そう思ったことは決定的に正しいと思います。


▲TRANS ARTS TOKYO展より

だから、最初から間違えてるんじゃないかと怯える必要はまったくありません。どんどん自分が思ったことをいろんな人にぶつけてみればいいと思います。
けれど、それと同時に大事なのは、あとで自分が思ったことが間違いだと気づかされたら、すぐにその間違いを認めること。そういう謙虚さがあれば、間違えることを過剰に気にせず、自分のアイデアや感じたことを他人と共有することができるようになると思うんです。
「不確実な時代に「未知」を「既知」へ変える方法としてのオープンさ」の続き
posted by HIROKI tanahashi at 21:42| オープンイノベーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年12月01日

コモディティ化された製品を販売するような企業で構成される経済では、社会は繁栄せず、国民の利益や繁栄を台無しにする

『オープン・サービス・イノベーション』を読み始めています。
「オープン・イノベーション」ということをもう少し自分の頭のなかで整理しようと思って。



その本のなかで著者のヘンリー・チェスブロウがこんな風に書いている箇所に目がとまりました。

中国やインドが世界経済を牽引し、世界各地でアウトソーシングが増大し、コモディティ化がつづいている現状で、私たちの子孫は高収入を得られるような職に就くことができるのだろうか? コモディティ化された製品を販売するような企業で構成される経済では、社会は繁栄せず、国民の利益や繁栄を台無しにすることになるのではないか。

これって凄い指摘だし、的確な指摘だなと読んでいて思いました。

ここでは「コモディティ化された製品を販売するような企業」の個々のビジネスだけが問題視されているわけではなくて、社会の繁栄や国民の利益という観点から「コモディティ化する製品」が問題視されています。

こういう視点の大きさをもって、自分たちのビジネスの現状を見つめ直す姿勢をもっと多くの人がもてるようになるといいのになと思います。
だって、そもそも自分たちの仕事が社会のためになるものを生み出す仕事だと捉えているなら、それがうまくいかない現状があれば逆に社会に不利益をもたらしている可能性もあることも想定するのが理屈というものだと思うので。

そのあたりも含めて自分たち自身がポジティブに生きられる方向性を探っていかなくてはいけないでしょうって思うのです。立ち止まってうなってる場合ではぜんぜんない。

「コモディティ化された製品を販売するような企業で構成される経済では、社会は繁栄せず、国民の利益や繁栄を台無しにする」の続き
posted by HIROKI tanahashi at 11:17| オープンイノベーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月28日

問題定義とは結局「どんな夢を見るか?」ということ

前回も書きましたが、今月はやたらと慌ただしくいろんなところに顔を出したり、ワークショップやセミナーをさせていただいたりしています。
昨日も会社の主催で夜に「未来をつくるワークショップ」と題したデザイン思考の発想法を体験するワークショップをやらせていただきましたし、今日は大阪に日帰り出張してきました。



この1ヶ月のあいだに物理的にも場所を移動したり(今日の大阪だけでなく熊本や青森に行きました)、普段触れない領域に足を踏み込んだり(廃業したホテルや大学という場所や、アーティストの方々や温泉地の経営者の方々などとの交流)、いろんな方々とセミナーやワークショップで出会ったりしていましたが、そんな風にいろんな領域に顔を出して、実際に触れてみると、やはり自然と視野は広がるわけで、普段とは違ったことを考えられたりもして、それだけでも良い経験になります。
その意味でこの11月はとても有意義な時間を過ごさせてもらったなと感じているわけです。

「問題定義とは結局「どんな夢を見るか?」ということ」の続き
posted by HIROKI tanahashi at 20:27| オープンイノベーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月26日

オープンになって外の世界と対話する

イノベーションへの近道は、オープンになって、自分が普段過ごしている世界とは別の、外の世界と対話を積極的に心がけることだと感じます。
内と外の境目をあいまいにしたところで、既視のものとはまったく別のイメージが見えてくる。それには既存の境界を越えて、オープンな気持ちで自分にとっての非日常的な世界と交わることが大事なのではないかと思います。

20121126a.jpg
TRANS ARTS TOKYO展より

クリス・アンダーソンも『MAKERS―21世紀の産業革命が始まる』のなかでこんな風に書いています。

たとえイノベーションを起こそうと思わなくても、「パブリックな空間でもの作りを行う」だけで、イノベーションのきっかけになるかもしれない。それがアイデアの特性だ。アイデアは、シェアされると拡散する。

そうなんですよね、新しいことを生み出すこと、イノベーションを生み出すことって、本来、新しさやイノベーション自体を求めて生み出すものというより、パブリックな空間で活動を行う結果、自然と生まれてくることなんだと思います。

アイデアはシェアされ拡散されることで、個人がバラバラに考えていたときには予想もしなかった創発を呼びます。その創発が繰り返されることで、イノベーションが生み出される。そんな確率が劇的に高まるのがインターネットを介したオープンイノベーションの最大の特性でしょう。

「オープンになって外の世界と対話する」の続き
posted by HIROKI tanahashi at 22:24| オープンイノベーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月21日

アート×自然の力で地域を元気にする:奥入瀬ネイチャー×アーツキャンプ2012

先週末の16日(金)〜18日(日)の3日間で、青森県の十和田・奥入瀬で行われた「奥入瀬ネイチャー×アーツキャンプ2012」に参加してきました。

R0013045.jpg
▲ 星野リゾート 奥入瀬渓流ホテルの暖炉の上の巨大な岡本太郎さんの作品

今回のキャンプは、十和田・奥入瀬地区をベースに、これまでにない新しいタイプのアートプロジェクトをつくろうという目的で、全国から集まったアーティスト、キュレーターの方々が、十和田湖、奥入瀬地区の自然や施設をフィールドワークしながら、その地でどんな新しいアートプロジェクトができるか、やりたいかを考えるための3日間でした。

かえっこなどの活動で知られるアーティストであり、十和田市現代美術館の副館長もつとめる藤浩志と、展覧会の企画運営などを事業とするナンジョウアンドアソシエイツの新居音絵がホストとなり、十和田市が主催となって行われたイベントです。
20数名のアーティストやキュレーターの方々が参加するなか、普段はアートに関する仕事をしていない僕が参加したのは、このところずっとテーマにしている「地域を元気にする方法」について、考える手だてになるような予感がしたからでした。
「アート×自然の力で地域を元気にする:奥入瀬ネイチャー×アーツキャンプ2012」の続き
posted by HIROKI tanahashi at 23:01| 地域 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月14日

創造性を資源として価値を生むことを重視する社会にしていくには…

創造性を資源として価値を生むことを重視する社会にしていくにはどうすればよいのでしょうか?
物質的な資源を加工して価値を高めるこれまでの社会における知恵の使い方ではなく、知恵そのものを資源に価値あるものを創造することで経済面でも文化面でも豊かな社会をつくっていくためには自分はこれからどんな活動をしていけばよいだろうか?
最近はそんなことを考えています(そんなことを考えるのは、ここでそんな話をしたいと思っているからですが)。



そして、そんな社会にするために何より必要なことは、知識や情報というものをモノと同じように私有しようとすることをできる限りやめて、知識や情報は社会の共有資産としてオープンにシェアし、人びとが知恵を使って創造性を発揮する活動をどんどんしていけるようなそんな環境をつくることが大事だと思います。
そして、そんな活動自体もオープンにし、いろんな人々が知恵を出して、次々に新しい価値を創造していけるよう、そんなオープンイノベーションやコ・クリエーションを重視した環境がつくっていきたい。
そんな風に考えるのです。

「創造性を資源として価値を生むことを重視する社会にしていくには…」の続き
posted by HIROKI tanahashi at 23:51| 思考 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月08日

グラフィカルにノートをとりながら思考を整理する

最近、こんな風にグラフィカルな表現を交えて、自分の頭のなかを整理することが僕自身のブームになっています。

IMG_4618.jpg

上は「より良き未来をデザインするため」には、「問題を正しく定義する」ことが大事ということを整理してみようと思って描いたノートです。
これを描きながら、
  • 問題を正しく定義するための場として、多様な人びとを集めたフューチャーセッションのような場があり、そこでは様々な人のもつリソースを引き出し、つなげるような外部者の役割もあるなとか、
  • そういう外部者の役割は従来のように解決のためのプロダクトを提供するのではなく、参加者が自主的に問題解決の方法をつくれるようなプラットフォームを用意してあげることだろうとか、
  • その意味では、これからの問題解決は、人が外の商品やサービスに任せてしまっていた問題解決のコストを内部化して、自分たち自身でそれを作っていけるような、そんな持続可能性のある社会OSをデザインする必要があるのだろうな、とか

といったことを考えているわけです。

いままでよりもグラフィカルな表現でノートを取りはじめてみて、頭の整理がしやすくなった気もしているので、今回は、みなさんにもグラフィカルなノート作成をおすすめしたいという意味でも、他にもいくつか最近書いた/描いたノートを紹介してみます。

「グラフィカルにノートをとりながら思考を整理する」の続き
posted by HIROKI tanahashi at 21:13| ソーシャルイノベーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月07日

【参加者募集】第2回プロトタイピング・ワークショップ 〜つくることで発想を転換する〜

作りながら考えるプロセスを学ぶプロトタイピングを中心としたデザイン思考のワークショップ。
前回10月に開催した際には、参加いただいた方にも大変好評だった、このワークショップの2回目を、12月1日(土)に開催します。

このワークショップでは普段誰もがお使いになっている身近なものを題材に、インタビューからアイデアスケッチを経て、最後はプロトタイピングによって、ありきたりの発想から抜け出したアイデアの創出のプロセスを体験していただきます。



前回のワークショップでは、講義も含めて3時間という短いあいだに、上の写真のような形で自分たちのアイデアを簡単なプロトタイプとして作成し、自分たち自身でアイデアを評価するという体験をしていただいています。
イノベーションの手法としてより注目度が高まっているデザイン思考のなかでもとても重要な手法であるプロトタイピングを中心に、2対1で行なう相互インタビューやグループワークも交えたワークを行ないながら「作りながら考える」ことの重要性を体感いただければと思います。

参加者の募集はいつものとおり先着順にさせていただいています。
定数に達し次第、締め切らせていただきますので、ご興味のある方はお早めにお申し込みください。

→ ワークショップ参加お申し込みページ

以下、ワークショップ内容の詳細です。ワークショップの詳細はこちら
posted by HIROKI tanahashi at 11:46| 告知 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年10月02日

【参加者募集】第1回プロトタイピング・ワークショップ 〜つくりながら考える体験のデザイン〜

10月27日(土)に、頭のなかのアイデアをスケッチやプロトタイプで視覚化しながら考えるプロトタイピングの手法を体験するワークショップを開催します。



といっても、上のスケッチのようなユーザーインターフェイスのプロトタイピングを今回は行いません。
もうすこし誰にとっても身近なものをテーマにプロトタイピングの手法を使った新しい体験のデザインを考えていただくワークショップです。

概要

変化の大きな時代、さまざまな領域で従来のあり方からの変革=イノベーションが求められるなか、多様性はイノベーションの触媒ということで、最近、創造の場は、それぞれ立場の異なるステークホルダーが集まって、意見を交わしアイデアを出し合うコ・デザインの形をとることが多くなってきています。
コ・デザインの方法では、1つの視点からだけ物事をみて袋小路にはまってしまうのではなく、複数の視点をあえて衝突させることで従来的な常識から抜け出す糸口を見つけ、そこを突破口にこれまでになかったイノベーションを実現していくのです。

その際、異なる専門分野、異なる価値観をもった人が互いに意見を交わし合えるような状態をつくることがポイントです。普段接点のない人同士だとほっとけば単なるすれ違いになりかねませんので。

異なる視点の交差は必要ですが、すれ違いは避けなくてはいけません。
そのためには、同じものをみて話ができるよう、さまざまな視覚化の手段をつかってコ・デザインの場をファシリテートしていくのです。デザイン思考で「作りながら考える」方法であるプロトタイピングの方法も、僕はそうした多様な人々が集うコ・デザインの場において意見を交差させる手段の1つとして使っています。

今回のワークショップでもそうした観点からコ・デザインという方法を体験していただくため、グループワークでのプロトタイピングを中心に、インタビューや対話の方法も交えたワークを行ないながら「作りながら考える」とはどういうことかを体験していただきます。

なので、今回のワークショップの特徴はこんな感じ。

  • プロトタイピングといっても「モノを作る」ことが目的ではなく、「そのアイデアは問題を感じてる人自身を助けるものになってるの?」を作りながら考える方法を体験していただく内容
  • 常識にとらわれて見落としてしまっている日常的な事柄を、他者との出会いから再発見していくことができるコ・デザインの可能性を感じていただく
  • インタビューや対話を通じたグループワークの楽しさや有効性を知っていただく


ということで、以下のワークショップ内容もご確認いただきつつ、ご興味のある方はご友人・ご同僚をお誘いの上、ふるってご参加ください。

なお、参加者の募集はいつものとおり先着順にさせていただいています。
定数に達し次第、締め切らせていただきますので、ご興味のある方はお早めにお申し込みください。

第1回プロトタイピング・ワークショップお申し込みページ

以下、ワークショップ内容の詳細です。
「【参加者募集】第1回プロトタイピング・ワークショップ開催」の続き
posted by HIROKI tanahashi at 21:25| 告知 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年09月25日

誰が世界を変えるのか ソーシャルイノベーションはここから始まる/フランシス・ウェスリーほか

昔から複雑系の科学の考え方が好きです。

たがいに関連しあう複数の要素がそれぞれ個々に局所的(ローカル)にインタラクションしあうなかで、大局的(グローバル)にもなんらかの振る舞いを創発させる複雑系は、その全体としての振る舞いが、個別の要因、部分からは明らかでないという不確実性、予想不可能性に、僕はとても惹かれます。



写真は、すこし前に3331 Arts Chiyodaでみた藤浩志さんの展覧会で撮った1枚ですが、藤さんが主催する、子供たちがおたがいにいらなくなったおもちゃを交換するソーシャルなシステム「かえっこ」で起こっていることも、ある意味、複雑系のシステムのなかの創発的な出来事のように感じます。

その意味では、もともとウェブの仕事に関わっていた経歴もあるし、長年、こうしてブログやソーシャルメディアを使ったコミュニケーションもしてきているので、そもそも現在のソーシャル的なものがグローバルにつながりあった複雑な社会と深く関係していることだとは感じていましたが、最近、デュポン社とマギル大学が共同で設立したソーシャルイノベーション・シンクタンクで、ソーシャルイノベーションについての研究を行ってきたフランシス・ウェスリー、ブレンダ・ツィンマーマン、マイケル クイン・パットンの3人がまとめた『誰が世界を変えるのか ソーシャルイノベーションはここから始まる』という本を読んで、さらにその考えが強くなりました。

「誰が世界を変えるのか ソーシャルイノベーションはここから始まる/フランシス・ウェスリーほか」の続き
posted by HIROKI tanahashi at 22:47| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年09月14日

ワーク・シフト/リンダ・グラットン

ひさしぶりに書評記事を書いてみようと思います。
取り上げるのは、ロンドン・ビジネススクール教授のリンダ・グラットンが2025年をターゲットとして「働き方の未来」を考察した1冊『ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉』です。
とにかく必読だと思います。

ワーク・シフト

この本に関しては、すでに十分すぎるほど話題にはなっていますし、いろんな方が紹介&絶賛している1冊です。販売のほうも好調のようです。

ですので、あらためて僕が紹介するまでもないと思わなくもありません。
けれど、この本が扱う「働き方の未来」というテーマに関しては、僕自身、積極的に考えたり、実践的に動いたりもしたいと思うと同時に、いろんな方と話をしていきたいと感じています。
だから、ここで書評記事という形をとって書いてみたいのは、単純な内容の紹介というより、この本を読みつつ、あらためて感じた「未来の生き方」についての僕自身の考えです。

「ワーク・シフト/リンダ・グラットン」の続き
posted by HIROKI tanahashi at 20:01| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年09月12日

連載「ThinkSocialな時代のビジネスデザイン」をスタート

エンタープライズジン内の「ビズジェネ」というコーナーに連載記事「ThinkSocialな時代のビジネスデザイン」を書かせていただくことになりました。

先ほど、公開された第1回目の記事「共益の創造を目指すコ・クリエーション戦略」では、連載をはじめるにあたって前提としている、社会的に大きな変革が望まれる「ThinkSocialな時代」を概観しています。



この連載では、歴史的にも大きな変換点といえる現在そしてこれからの社会環境で、個人はいかに働き、企業はどのような戦略で事業を展開していけばよいかを考えていこうと思っています。
また、様々な社会課題が山積みとなった社会において、個人や企業が生き抜くためにはどんな変革が必要となり、その変革を実現するためにはどんな方法が有効なのかもテーマとして扱っていきます。

興味のある方、ぜひご一読いただけると幸いです。

共益の創造を目指すコ・クリエーション戦略(前編):ThinkSocialな時代のビジネスデザイン


posted by HIROKI tanahashi at 14:03| ソーシャルイノベーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月29日

僕らは、現実から切り離された仮想現実のなかで未来を夢見ているけれど…

マニエリスム期の画家にして建築家であるフェデリコ・ツッカーリ(1542-1609)は、1607年に発表した「絵画、彫刻、建築のイデア」というエッセーの中でディゼーニョ・インテルノ(Disengo Interno)という概念を登場させています(詳しくは「ディゼーニョ・インテルノ(デザインの誕生1)」参照)。

ディゼーニョ・インテルノは英語で言い換えればインテリアデザイン。
ツッカーリが用いている意味としては「内的構図」であり、心の内側にあるデザイン案ということと理解することができます。



マニエリスム研究で知られるグスタフ・ルネ・ホッケは名著『迷宮としての世界』のなかで、このツッカーリのディゼーニョ・インテルノ(内的構図)がどのように画家・建築家に用いられるのかを次のように示しています。

最初に〈わたしたちの精神にある綺想体〉が生まれる、とツッカーリはいう。これは要するに、ある〈イデア的概念〉、ある〈内的構図〉Disengo Interno である。かくしてつぎにわたしたちはこれを現実化し、〈外的構図〉Disegno Esterno へともちこむことに成功する。
グスタフ・ルネ・ホッケ『迷宮としての世界』

最初に画家・建築家の内面に、イデア的概念であるディゼーニョ・インテルノが生まれる。先ほど、心の中のデザイン案と言いましたが、まさに建築物のデザインイメージであり、これから描こうとする絵の具体的なアイデアです。画家・建築家は自身の表現技術を用いてその内的イメージを外化し、絵や建築という形で実体化するという流れです。

これはマニエリスムの1つ前の時代にあたるルネサンス期の絵画においては逆でした。ルネサンス期に開発された遠近法による絵画は外界にあるものをたくみに写すこと、つまり外的イメージを遠近法を用いて内面化=抽象化するというものあり、ツッカールのいうディゼーニョ・インテルノの流れとはまさに逆向きの流れです。

しかし、人類の視覚表現やそれにともなう思考の歴史の流れとしては、先に外から内へのルネサンスがあったからこそ、マニエリスムの内から外へが可能になったとみることができると思います。
外にあるものを「対象」として自分から切り離し、一方で「対象」から自由になった主体の内面で見た像として遠近法画を描くスキルを先に手に入れたからこそ、外にある「対象」に左右されずに主体的にイメージを扱うことが可能となり、内面にあるイメージを描くということもできるようになったのだということができます。

それは人類が外の世界の文脈から切り離された自由なバーチュアル空間を内面に獲得した瞬間だったといえるのでしょう。

「僕らは、現実から切り離された仮想現実のなかで未来を夢見ているけれど…」の続き
posted by HIROKI tanahashi at 20:23| 視覚表現 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする