危機感・問題意識創出のためのプラクティス その5つの軸

物事を深く考え整理したり、積極的に新しい活動をはじめたりするためには、危機感や問題意識というものがあったほうがいい。それがないと、考えたり行動したりするモチベーションが生まれないだろうし、思考や行動の方向性が見いだせずに動きが鈍ります。
考えることをしない人、自ら積極的に行動するということができない人は結局、危機感や問題意識をもてていないという場合が多いのでしょう。

と、ここまではどこでも言われていそうなことですね。ロクにもの考えてない人でもここまでは言えますよ。だって、あちこちで言われてきていることですから。

で、ここからが意外と多くの人が勘違いしがちなポイント。

危機や問題がある状況に対する評価だということを見落としてませんか?

危機感とか問題意識って、本当に危機だったり問題だったりが存在するから感じられるものだと思っていませんか?

でも、よく考えればわかるはずですけど(あっ、よく考えてないのか)、危機だとか問題だとかって、ある状況に対する評価なわけですよ。とうぜん、そんなものが巷に転がってるわけじゃありません。観察者とのインタラクティブな関係において、はじめて存在しうるのが評価なわけですから、見ようとしなければ危機も問題も見えないのは当然です。結果、見ようとしないものに危機感、問題意識は生まれえません。

日常において「いまここ」を生きている上でさほど大きな問題など存在しない

でね、日常生きているうえで大抵のものは多少の不具合はありつつもそこそこのレベルでは機能しているわけですよ。不満を感じたりイラつくことはあっても(それらは問題とは言いません)、本質的に支障があるかといえばそんなことはそれほど多くはありません。特に将来的にみれば不安があるなんてのは、現時点ではまったくノープレブレムだと想定することも十分可能なはずです。

日常において「いまここ」を生きている上でさほど大きな問題など存在しないと感じているのが普通の状態だと思います。

そうである限りにおいて、普通に暮らしてたら現状は大きな支障なく機能しているわけですから、その状況・コンテキストのなかでは危機感、問題意識というのは自然には生まれてこないわけですね。

危機や問題がある状況に対する評価だということを見落としてませんか?

さぁ、ここまで書けば、もうわかりましたよね。
どうして危機感、問題意識をもてないがゆえに、物事を深く考え整理したり、積極的に新しい活動をはじめたりする人がすくないのか、が。

考え、行動するためのモチベーションの源泉としての危機感、問題意識は、ある状況に対する評価であるがゆえに自然には存在しにくい。それを感じ取るためには、通常、自分がいる状況・コンテキストから身を放してみて、普段とは異なる状況・コンテキストから元いた自分の状況を評価するという思考的・行動的な実践が必要になるわけですが、考えない・行動しない人にはこのこと自体、非日常的でなかなかできません。袋小路にはまってる状態なんですね。

で、この卵が先か鶏が先か的な状況を抜け出すためには、そりゃ、最初はちょっと無理してでも、自分の視点の位置を変えてみることで、危機や問題がないかを見てみることが必要でしょう。

危機感・問題意識創出のためのプラクティス

先にいったようにいまに不安がなくても、将来的な視点を導入すれば不安に感じられることって往々にしてあります。その漠然とした状態の不安をもうちょっときちんと整理して、問題として体系化・構造化してみるのです。これが基本的な危機感・問題意識創出のためのプラクティスです。

で、いまは「将来」という視点を導入することで時間軸を変えた文脈から、いまここの自分やその環境をみる例をあげたわけですけど、いまここの状況・コンテキストを別の状況・コンテキストから見て、それによって危機感・問題意識を創出する場合、ほかにもいくつか取りうる視点の位置というものが考えられます。

5つのプラクティスの軸

思いつくものをあげると、以下のようなものがあげられます。

  • 時間的な文脈を変えてみる
    将来という視点から見るほか、過去という文脈を導入することも考えられます。個人的な過去もそうでしょうし、歴史的な過去としての近い過去、遠い過去を参照する視点の位置に据えることもできます。とうぜん、そのためにはまずは過去の状況・コンテキストを知るために歴史を学ぶことになるでしょう。その学習自体から、いまここに対する危機感・問題意識が生まれてくることもすくなくないと思います。
  • 空間的な文脈を変えてみる
    海外に行くと日本のよいところ、問題点が見えてくるっていうあれです。もちろん、移動する場所は海外に限りません。普段、遊びに行く場所を変えてみるとか、会社内で席替えするとか、そういう空間的な変化に身を置くことで、これまでとは違った発見が得られることは多々あります。おなじ場所でもしばらくの間、目をつぶってみるということでも空間は変化します。前に書きましたけど、僕は交差点で赤信号を待つ時に目をつぶって待つってことをよくやってます。
  • 立場を変えてみる
    これは職種でもいいですし、組織におけるポジションでもいいでしょう。社長じゃない人が社長になったつもりで考えるとか、デザイナーがシステムエンジニアになったつもりで考えるとか、いろいろあるでしょう。お客さんの立場になるとか、子どもの立場になるとか、いろいろあります。立場をいろいろと変化させることで、これまで見えていなかった総合的な面での問題点が見えてくることはよくあることです。これは昨日の「IDEOのデザインプロセス、再び。」とも関係する話ですね。
  • ルール・文化を変えてみる
    明文化されたルールであれ、暗黙的に存在する文化のなかのしきたりであれ、いったん、その外で考えるということをしてみるといいと思います。もし、いまあるルールやしきたりがなく、異なるプロセスで物事を運べるとしたら、どんなことが考えられるか。例えば、よく感じるのは自分がある会社のなかにいるからこそ、その仕事ができているにも関わらず、あたかもそれが自分の力であるかのように感じている人を見かけますが、それってその会社のネームバリューなり、その会社にあるプロセスや文化の上だからできている仕事って実はたくさんあるわけです。実際、どれだけがそうしたものに支えられているのか。もし、その支えがなくなって自分が外で仕事をしなくてはいけないとなったら、どうなるのか。そういう視点で問題・危機を感じ取ってみるのもいいでしょう。
  • 他人と問題解決の時間を共有する
    これは「自分の視野を広げるためにも他人の意見には耳を傾けなきゃ」でも書いたことですが、結局、自分の物事の見方を手っ取り早く変えるには、他人の目を借りて見てみることだと思います。ある問題解決のための共同作業をしながら、他人が問題をどう捉え、どう解決しようと考えているかに耳を傾けるわけです。それはワークショップなどの形式で「みんなで手を動かしながら考える」ことをすれば割と自然にできることです。そうすることで解決すべき問題の構造というのがより明確に見えてきます。他人の目を借りるほかの方法はやっぱり本を読むことです。批評的な視点で本を読んでも仕方ない。書いた人の言葉をひたすら信じるくらいの読み方がいいと思います。

まぁ、こんな感じで「いまここ」とは異なるオルタナティブな視点に自分を置いてみる。そこでどんな世界が見え、どんな問題や危機が見いだせるか。そういう実践的な思考練習はぜひしたほうがいい。

なんでしたほうがいいかって?

そりゃ、ピンチこそチャンスだからですよ。
問題意識、危機感を積極的に持てる人ってチャンスを見つける力がある人ってことです。
問題解決の力は日本人はわりとあると言われてます。一方で、いま必要なのはそういう問題発見の力です。

与えられた問題に対して解決策を探しだす人は、大企業ともなれば山ほどいる。その能力がないと入社試験に受からないということなのだろう。
反面、問題を「生み出す」人がいない。ここが日本のビジネスシーンで大きく欠けている部分である。

昨日書いた「IDEOのデザインプロセス、再び。」で、IDEOやユーザー中心のデザイン・プロセスが真に優れているのは、問題発見のプロセスをその内部に持っているからです。問題発見がなければ先はない。イノベーションってその先にあるものです。

  

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