自分をつくる:其の2.クリエイティブ・クラスも営業力を鍛える

日々の仕事の中で感じていつつ、さらに『伝統の逆襲―日本の技が世界ブランドになる日』を読んで明確に感じたのは、いわゆるデザイナーや職人など、普段、営業活動とは無縁な人も、自分が普段行っている仕事をお客さんにどう売るか、どのように説明して買ってもらうかということを考えなくてはいけないのだろうなということです。さらに、できれば考えるだけでなく、実際に売りに行く実行力があるとさらに望ましい。
売るという活動には単に「ものがいい」という以外にも様々な要素が必要とされるのだということを身をもって理解できなければ、日本のものづくりの課題である「販売に戦略と実行力がない」という課題を克服することはできないと思うからです。

クリエイティブ・クラスこそ、行動はクリエイティブに

リチャード・フロリダの『クリエイティブ・クラスの世紀』で、デザイナーや職人など、手に職をもち、さらに自分で考え、創造できる人をクリエイティブ・クラスと名づけました。

僕は、クリエイティブであるためには、単にものをつくる能力だけではいけないと思います。
コミュニケーション能力はもちろんのこと、スケジュール管理能力やコスト管理能力、さらには営業力や交渉力、戦略的思考も必要とされるのだと思います。

なぜなら、そうした総合的な能力がなければクリエイティブなものを実現することはできないから。わかりやすくいえばグッチを再生した元グッチのクリエイティブ・ディレクター、トム・フォードを目指さないといけないわけです。
ここを完全に分業してしまっているところに日本のものづくりの問題があるのではないか。いや、ここだけじゃなくて、やたらと分業しすぎなのは創造力という意味では問題です。

つくる人も売り方まで考えてものづくりをしないと

奥山清行さんは『伝統の逆襲―日本の技が世界ブランドになる日』のなかで、こう書いています。

「山形カロッツェリア研究会」を続けてみて、職人のポテンシャルの高さがあらためてよくわかった。その一方で課題も見つかった。販売と統一戦略である。山形に限らず、日本の「ものづくり」の弱点は、販売に戦略性や実行力が乏しいことだ。
奥山清行『伝統の逆襲―日本の技が世界ブランドになる日』

この本で比較されるイタリアでは企業の80%以上が従業員30名以下の中小企業でありながら、従業員50名以下の企業でもその50%がローマなどの大都市を経由せずに海外と直接取引をしているといいます。見本市などでは中小企業の社長たちが下手な英語で熱心に説明する姿を頻繁に見かけるといいます。中小企業であれば大企業のような明確に頼ってはいられません。職種の分離はあったとしても営業マンだけが売ることを考えていればいいというわけにはいかないはずです。ものづくりに関わる人々も自分のやってる仕事の成果を売るためにどうすればいいかを考えているはずです。

行き過ぎた分業の結果

しかし、分業化が極度に進んでしまった日本では、売る人とつくる人の分業が悪い意味で進みすぎているのではないでしょうか。使う人の気持ちを考えてデザインすることはできても、それを実際にどう売るかまで頭を働かせているデザイナーはあまり多くないのではないかと思います。

ただ、それではこれからはダメだと思うのです。
もちろん、それを専門とする営業マンほどの営業スキルはなくてもいい。かといって自分は営業マンじゃないから営業はいっさいできなくてよいと思ってたら、それは大きな勘違いです。営業のチャンスに必ず営業マンがいるわけではない。さらには営業マンが得意な営業とデザインの専門家だからできる営業は別ものだとも思います。

クリエイティブを実際に形にできるのはクリエイティブ・クラスの人だけ

それでも、こう書くと、そんなことは営業やマーケティングをやってる連中にまかせておけばいいことで自分たちが考えたり行動したりすることではないと感じるデザイナーの方や開発者の方がいらっしゃるかもしれません。

しかし、そうやって、どう売るか、何がお客さんに求められているのかを自分たちでは考えることなく、その答えを自ら探す努力も怠ってきた結果が、ろくすっぽ「ものづくり」の何たるかもわかっていない連中がとってきた、あまりおもしろくない仕事を与えるまま、やらなきゃいけないという不幸な状況に自分たちをおいやってしまったのではないかと疑ってみる必要はあるのではないでしょうか。

クリエイティブを形にできるのは他ならないデザイナーや開発者、職人のように手に職をもった人たちです。そういう人たちが与えられた仕事をただこなすだけで、未開の地の開拓に乗り出そうとしない状況で、クリエイティビティにあふれた仕事など生まれるはずはありません。

いくら僕らのようなマーケティングやリサーチのスキルをもった人間がユーザーの行動の背後に隠れたイノベーションの種を発見できたとしても、その種を育て、きれいな花を咲かせたり、おいしい実を育てたりするためには、その技をもった人とのコラボレーションなくしては成り立たないのです。

本当の意味でクリエイティブな仕事ができるようにために

だからこそ、デザイナーや開発者、職人などの方にも、世の中という未開の地にどんな花や実を育てれば、人々が喜ぶのか、そして、その花園、果樹園をビジネスとして実現するためにはどんな戦略、実行力が必要かを考えることも自分たちの仕事であり、それを考えることで自分たちが本当にやりたい仕事をやれるようになるのだということに気づいてほしいと思うのです。
そうなったときこそ、本当の意味でクリエイティブな仕事ができるようになっていくはずです。そして、そういう仕事ができる人が数多くいて、そういう仕事をさせてあげられる環境を用意できる企業が強くなっていくのではないかと思います。

本当の意味で「ものづくり」に力点をおいた企業を目指すのであれば、こうした点についても考えていかなくてはいけないのではないかと思うのです。



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