制御された不完全な秩序とカオスの中に芽生える秩序

今日もWebのベキ分布を示す法則性が気になって、今度はページごとのサイト内リンクの数を調べてみました。あるページに他のページからどれだけのリンクがはられているかってことです。

結果を示す前に、何故そんなことを調べたかを説明しておきましょう。
Webのネットワークがもつスケールフリーの法則性を発見したアルバート=ラズロ・バラバシは著書『新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く』の中で、Webのネットワークの各ノードがもつリンク数を調査した結果をみたときの驚きを次のように書いています。

われわれはリンク数の度数分布を両対数グラフに表し、それをうまくなぞるような関数を探してみた。その結果にわれわれは度肝を抜かれた。リンク数の度数分布は、数学でいうところの「ベキ法則」にぴたりと合っていたからだ。
アルバート=ラズロ・バラバシ『新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く』

その後、バラバシらがハリウッド俳優のネットワークや物理学の論文引用件数、航空会社のルートマップなど、いたるところにベキ法則を発見したことは『新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く』に詳しい。
そんなこともあって、では、全体ではベキ法則があてはまるWebのネットワークの中に存在する1つ1つのサイト内のリンク数はどうなっているか気になったんです。

サイト内リンクはベキ分布しない

このブログのサイト内のリンク数も含め3つのサイトを調査してみましたが、最初にある程度、予想していたとおり、以下の両対数グラフのとおり、サイト単位ではベキ分布はみられませんでした。



3つのグラフはそれぞれ異なりますが、どれも階段状になった平らな部分がいくつか見つかります。
これは現在のWebデザインの主流として、グローバル-ローカルナビゲーションを基本としたナビゲーション・デザインが実装されていることを考えれば、ある程度、当然のことです。
ブログに関してはグローバル-ローカルナビゲーション的な構造はとっていませんが、逆にある程度固定されたサイドバーがすべてのページにつく構成になっていることが多く、青で示したグラフのように、グローバル-ローカルナビゲーションをもった一般のサイト以上に平らな部分が長く続くのがみてとれると思います。

こうしたナビゲーション設計に基づくリンク構造は、階層構造をベースに組織化された情報をつなぐことになるため、基本的に階層単位でどのページも同一のリンク数をもつことになります。
例えば、トップページに戻るリンクとグローバルナビゲーションに含まれるリンクはほぼすべてのページに存在するでしょうし、第2階層のローカルナビゲーションもそのディレクトリ内のすべてのページに存在するはずです。これが階段状のグラフを生み出すわけですが、どのグラフも右下のほうで階段状の分布が崩れ、ベキ分布にみられるような直線の分布がみてとれるのは、下層にはられたリンクが階層構造による構造化を免れているからだといえます。

サイトの内外に境界はない

このように個別のサイト単位で見ていくと、Webのネットワークはすこしもベキ法則に従うものではありません。
しかし、先にも書いたようにWeb全体では各ノード(1つ1つのWebページを巣蔵するとよいでしょう)のもつリンク数はベキ法則に従うことがわかっています。
この矛盾は簡単に解決されます。先の僕が行った調査はサイト内リンクに限ったものでしたが、実際にはWebサイトには外部リンクが存在します。サイト間ではられた外部リンクがWebのネットワークをベキ法則に従うものとしているのでしょう。

下のグラフは、上でリンク数の調査を行ったのと同じ3つのサイトのページごとのページビュー数を同じく両対数グラフにあらわしたものです。「ベキ分布を示すWebの法則性」では、ページビューはベキ分布に従わないと書きましたが、あらたに調べたこの3つのサイトはわりとベキ分布に近い分布傾向を示しています。特にこのブログの数値をしめした青いグラフなどはほぼ直線に近い分布を示しています。



サイト内リンクが最初のグラフで示したように、階層的に平均化されたようなリンク数の分布がみられるものであるとしたら、このグラフが示すような小数のページが非常に多くのページビューを集めるようなベキ分布の傾向は見られないでしょう。しかし、実際には検索エンジン経由だったり、はてブをはじめとするソーシャルブックマーク経由、あるいはRSSリーダー経由のアクセスがあるわけで、それがこうしたベキ分布のアクセス数にあらわれるのでしょう。
ようするにWebサイトには内と外の区別はないわけです。Webサイトを設計をする際に、通常、サイト内の情報設計のみを考えますが、それはこうしたWebへのアクセスやサイト内のリンク構造とWebのネットワークのベキ分布をくらべると、非常におかしな行為であるように思えてきます。

制御された不完全な秩序とカオスの中に芽生える秩序

しかしながら、どのページも等しく(もちろんプライオリティ付けやターゲット別のカテゴライズはあるでしょうが)見てもらおうとして設計するWebサイトのリンクが、階段状の分布とベキ法則的直線が入り混じった不完全な秩序をみせるのに対して、各サイトの設計者、運用者がそれぞれ勝手にリンクをはった結果できるWebのネットワークがベキ法則という法則性にもとづき組織化されているというのは、考えてみると不思議なものです。
一方は制御しようとしていてもそれが全うできないのに、もう一方は何の制御もないのに自然と組織化されてしまうというのは、なんと皮肉なことなのでしょうか。

もちろん、これはWebサイトの設計にかける労力が無駄だといっているのではありません。Webサイトのデザインは、そこに書かれた内容同様に、そのサイトのオーナー(それが個人でも、法人でも)の主張であり、個性なのですから、それが完全であろうとなかろうと、きちんと設計すべきものだと思います。
しかし、その一方でサイトの外部のネットワークは無情にも、少数者が非常に多くのリンクを集めるベキ法則に従います。これをただ嘆くか、それが法則だと考え、それを考慮したWebコミュニケーションを考えるのかは大きな違いでしょう。

前にも書いたとおり、ベキ分布にしたがうものはフラクタル性をもつといわれています。
上には上があり、下には下がいるわけです。
そして、はてブの人気エントリーなどを見ていてもわかるとおり、GIGAZINEのような定番はあるものの、見知らぬサイトのあるエントリーが突然人気エントリーなることはいくらでもあるわけです。フラットな世界では扉は大きく開かれているのです。ただ、その結果がフラットとはかけ離れたものだったとしても。これをチャンスと見るか、残酷とみるか? さて、あなたはどっちの視点でWebでのコミュニケーション、デザインをしていきますか?

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