企業とそのWebコミュニケーションに対する無自覚な批判

最近、「クリエイティブと著作権」や「不祥事の際の企業の対応にあらわれる企業の基本姿勢」で書いたことだったり、「NTTドコモのmixiコミュニティ10日で閉鎖したんだって(あるいは「せめこれ4」)」という事例だったりと、Webを使った企業のコミュニケーションの悪い面が、僕の目に映っているわけで、あらためて企業とWebコミュニケーションの関係について、もうすこし踏み込んで考えなきゃいけないなと思っています。

企業の不手際を無自覚に批判してもはじまらない

というのも、企業がそうした不手際を起こすことの理由の明確化やどうすればそれを改善できるのかということを明示できるようにすることは、僕の仕事にとっても重要なことだと思うのが1つと、もう1つ、こうした企業の不手際が表沙汰になった際の、ブロガーなどの反応にも首をひねる部分があるからです。

不手際を起こした企業に対し、その企業の不手際を批判したり、多くの企業にWeb2.0的なコミュニケーションは向いていないということは簡単です。
他人の失敗を笑えばいいだけですから。
でも、それだけでは言葉も行動も足りないって感じています。

総務省による調査によれば、現在、日本には、ブログを書いている人も、mixiやってる人も、それぞれ何百万人もいることになっています(総務省の調査は登録者数を調べたものなので、そのうち、どれだけアクティブユーザーがいるか知りませんけど)。
そのうち、結構多い割合で、どこかしらの企業なりで働いているユーザーが含まれているはずだと思います。
あるいは、いまはまだ学生だとしても将来的には、企業なり、どこかしらの組織に身をおいて働く人も含めれば結構な割合を占めるのではないかと思います。

だとすれば、企業のWebコミュニケーション批判って、ある意味、自己批判であってしかるべきではないかと思うわけです。
個人ではブログやSNSでコミュニケーションしてるのに、企業のWebではそれをやらないこと、あるいは自分でやらないまでもその利点や危険性を会社に伝えないことって、企業人としてどうかという批判もあってしかるべきかな、と。

しっかりしたリスク管理も考えずに、先走って不手際を明るみに出してしまった企業を笑うのは簡単ですけど、あなたの働く企業はどうなのか、と。
ちゃんとしたリスク管理もしたうえでWebコミュニケーションができているのか? あるいは、そもそも、外部を満足させるようなWebコミュニケーションができているか、まだ、できていないなら、それを考えているのか?
そうした自社の問題に対して、何の考えも行動も起こしていないなら、なぜ外部の不手際を無自覚に笑えるのでしょうか?

企業としてのリテラシー(読み書き能力)

ここまで読んで、中には、だって、僕は(私は)担当じゃないし、そんなことが言える権限がないもの、と思った方も多いのではないかと思います。
そうなんです。それこそが企業がうまく外部に対してコミュニケーションができない理由の1つだったりします。

企業ではWebマスターなりなんなりが、Webでの情報発信、外部からのフィードバックに対する対応を任されたりします。
しかし、多くの場合、外部からのフィードバックに対する対応には、Webマスターの知識や権限だけでは答えられないものが含まれていたりします。
そうなると、当然、Webマスターは企業の別部門の担当者などから、答えるために必要な情報を収集したり、その担当者自身に回答をしてもらうなど、お願いすることになるわけですが、他の部門が「僕は(私は)担当じゃない」なんて思っていたら、Webマスターのその活動は途端にスピードが鈍化し、効率が悪くなります。

NTTドコモのmixiコミュニティ10日で閉鎖したんだって(あるいは「せめこれ4」)」の中で、
いまのWebの世界のスピード感についていこうとしたら、やっぱり外部の企業に委託して、即断即決で双方向のコミュニケーションを行っていくことなんて、よっぽどじゃないとできないと思うから。
ほとんど予測できないほど、多種多様な問いかけを行ってくるユーザーに対して、きちんとひとつひとつコメントしようと思えば、自社でそれなりにWebコミュニケーションができる人が揃った企業でさえも、企業としての一貫性を保ちつつ即座に返信することはむずかしいくらいですから、それを外部に委託して、外部がいちいちどのような対応をすべきか確認するみたいなプロセス踏んでたら、とてもじゃないけど、スムーズなコミュニケーションなんて望めません。

と書きましたが、それは上記のように、個人とは異なる組織固有の問題がリテラシーの問題として存在するからです。
単に物書きができる人が数人いるだけでは、企業のWebコミュニケーションは成り立たないのです。

流行ではなく、自社が行う活動の1つとして消化する

企業が行うWebでのコミュニケーションといえば、マーケティング寄りの話に偏りがちですが、とうぜん、企業にとっては顧客以外にもステークホルダーはいます。
採用希望者や投資家、あるいは、従業員の家族や親類、それにまだ関係をもたずにいる非顧客などもいるわけです。
そうした人たちとどういった関係性をつくっていくことで、社会のおける企業の価値を高めていくかということが、企業コミュニケーションにおける最大のミッションであると思っています。

そうしたことを真剣に考えるのであれば、Web2.0やWebマーケティングなどという言葉を単に流行の1つとして取り上げるのではなく、真に自社が社会における企業価値を高め、企業の社会的責任を全うするために行う活動の1つとして、それによるメリット/デメリットもきちんと考慮したうえで消化していくスタンス、そして、具体的な業務プロセスとして落とし込んでいくことを考えていかなくてはなりません。
その際には、単にマネジメント層にそれを任せるのではなく、「1人1人が意識すべきサステナビリティ(持続可能性)」で書いた次のような言葉が当てはまるのではないかと思っています。

組織が生き残りをかけるためには、皮肉なことに、1人1人がサステナビリティ(持続可能性)を意識すべきなのだと思います。
そういう風にスタッフ1人1人を意識付けられない組織文化をもつ組織は、環境変化の際に生き残れないのではないでしょうか?

8月10日に発売予定の『マーケティング2.0』では、Web2.0やWebマーケティングなどという言葉を企業が流行としてでなく、1つのプロセスとして取り組むために基本となるポイントについてまとめさせていただいた文章を書かせていただいています。
渡辺聡さんが監修を担当された本書では、私のほかにもみたいもんのいしたにまさきさんや、UIEvolutionの中島聡さんなどが執筆を担当されています。
(その他の執筆者については渡辺さんのこのエントリーに詳しく)
こちらはAmazonで予約開始となっていますので、興味のある方はぜひ読んでみてください。

最後は告知となってしまいましたが、本当にここで書いた問題は、よその企業の問題としてではなく、自身でブログやSNSでコミュニケーションを行っているあなたがたひとりひとりの会社の問題として、各自がどう考え、どう行動していくかという問題だと思っています。

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