抽象的/具体的という軸に対して消極的態度をとる
「知らないのは名詞だけではない」で、本などを読んで書いてあることがわからないのは、必ずしも書かれた文章の問題ではなくて、そもそも文章で表現されている事柄を読む側が見たり体験したりしたことがなく知らない場合もあるだろう、ということを考えた。
その場合、文章によって何かを伝えるというのは、読者が知っていることに関して伝える場合よりも困難さが増す。相手が見たこともないものを認識できるようにしたり、理解できるようにするのはむずかしい。そのむずかしさは必ずしも文章表現だけの問題ではないだろう(文章表現によって伝わる可能性が高まる可能性はあるにしても)。
そして、これは文章表現に限らず、道具や機械、あるいはその機能の一部に関しても同様のはずである。
見たことも体験したこともない道具や機械、機能-つまり、相手にとって新奇な道具や機械、機能-を認識、理解してもらうことは、すでに類似した道具や機械、機能が認知されたものを理解してもらうよりはるかに困難だということだ。
極端な言い方をすれば、人は知っていることしかわからないのだ(もちろん、それは人それぞれの想像力の度合いによって変わってくる)。