パースの三項関係

最近、もう一度、チャールズ・S・パースの論理学や記号学をちゃんと知っておきたいと思うようになりました。ユーザビリティとブランディングの両方に関わる認知、理解の問題をきちんと考えるうえで、パースをしっかり捉えておくことが重要だろうと感じるのです。 パースについては「ブランドとは何か?:1.A Model of Brandとパースの記号論」で、ブランドというものとパースの三項関係について紹介しました。最近でも「体験を支える情報アーキテクチャ」で再び論じています。 パースの記号学においては、記号というものを表象(Representamen)、対象(Object)、解釈項(Interpretant)の3項目で捉えます。 パースは、表象から対象を想起して解釈を発生させることを記号過程と呼んでいます。図にするとこうです。 例えば、これをブランドの価値、ロゴ、具体的なブランド商品という関係にあてはめると、こういう図になります。 これは何を言っているかというと、AppleのロゴをみてiPhoneを想起し、かっこいいというブランドを価値を感じるというようなケースに当てはまります。 これはブランド認知でいうところの「ブランド再認」の認知過程を示した図ということになります。

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地域の力

いま読んでいる田中優子さんの『未来のための江戸学』は、僕のいまの大きな関心事である地域活性、地域ブランドという面でも、大いに考えさせられる1冊です。 そのなかには「地域の力」というキーワードも出てきて、その内容はとても共感するものです。 たとえば、こんな一文があります。 ゼミ合宿では佐渡と秋田に行く。江戸時代の日本は各藩が特産品を持ち、経済も法律も自立していた。漁や農や流通や鉱物資源で独自の産業が発展し、武士たちもそれに尽力していた。漁で大金を稼ぐ者もおり、農村では優れた布や紙が生産されていた。そういう地域の力を知らなければ江戸を知ったことにはならない。 田中優子『未来のための江戸学』 こうした事柄はすでに何冊か田中優子さんの本を読んでいる僕にはすでに馴染みのあるものですし、ほかにも柳宗悦さんや日本文化の形成/宮本常一さん、東と西の語る日本の歴史/網野善彦さんの本を読んでいれば同様の地域とクリエイティブな生産力の結び付きの事例には事欠きません。 そもそも僕が地域に目を向けたのも、こうした本によって考えさせられることがあったからですし、そうした知識に触れることができたからこそ、自分自身の足で訪れた高千穂や宮島という土地からも地域の力の重要性というのは直接感じることもできました。また、学生時代に田中さんのゼミの学生同様に佐渡を訪れ地元の人と交流させてもらった経験があるのも、いまとなって生きているのかもしれないなと思います。 その意味で田中さんの「地域の力」というキーワードは僕…

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売れ続けるしくみとしてのブランド

売れるものを作るか。売れ続けるもの、あるいは、そのしくみを作るか。 これは似ているようで、違う考えによってプランを組み立てる必要があることです。 単に瞬間的に売ることが必要なのであれば、キャンペーンを行ったり、価格を下げたり、話題性のあるものでとりあえず試しに買ってもらったり、まだ買ったことがない人に向けた商品をわかりやすい販促手段で買ってもらったりすることで、一時的に売り上げを伸ばすことはできるはずです(もちろん、それにはそれなりのプランが必要ですが)。 ただ、そうやって買ってもらったものがその後も買ってもらえるかというと、ほとんどの場合、あやしいでしょう。買った理由が価格の安さやキャンペーンだったりすれば、それはものを評価して買っているわけではないのでリピートにはつながりにくいでしょう。話題性だけの商品なら買ったあとにがくんと評価は下がって逆に二度と買わないと思うかもしれません。まだ買ったことがない人向けの商品であれば、その人が次に買うときは「すでに買ったことがある人」になるわけですから、その商品を買う理由はなくなります。 そういった面で、売れるしくみを作ることと、売れ続けるしくみを作ることには違う面が多々あります。売れ続ける仕組みとしてのブランド・マネジメントを考えるなら、従来の売れる仕組みとしてのマーケティングとはまた違った視点での発想が必要になるはずです。

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持続性のデザイン

地域ブランディングということを考えはじめ、さらにこの先行き不透明なビジネス環境を思うに、自分たちの意思やビジョンをいかに持続させていくかが非常に重要になってきていると感じています。 これまでの考え方というのは、どちらかというと自分たちの将来をいかに実現していくかというところに重きが置かれていたのだと思います。将来のゴールを描いて、そこにどう到達するのかの戦略を考え、実行に移す。それはそれでこれからも必要なことだと思いますが、その際、視野にあまり入れることがなかった変化する環境のなかで、いかに自分たちの思いやビジョンを維持していくかというところをきちんと視野に入れて考え、実行する方法を模索する必要があると思います。 つまり、無常を前提としたうえでの持続性のデザイン。

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地域というインターフェイス

最近、地域ブランディングに興味があります。興味があるというか、その活動に仕事として関わっていくことはできないかを検討しているという状況でしょうか。 もともとブランディングは、得意分野の1つです。人間中心設計とかペルソナとか以前は、そちらのほうがメインだったわけです。 ただ、人間中心設計やデザイン思考という仕事の仕方の経験を経て、おなじブランディングでも人びとの生活スタイルやその基盤をつくるという意味では、企業におけるブランディングより、人びとが生きる環境としての地域のブランディングに目がいくようになりました。 マーケティングは売れる仕組みづくりというのに対して、ブランディングは売れ続ける仕組みづくりだといわれます。そのブランディングの対象を企業から地域に移すと、「売れ続ける」だけではなく、「何度も訪れたくなる」「住みたくなる」「働きたくなる」といったところに目的も移ります。つまり、単に経済的なことだけが目標ではなくなり、経済と文化をともに豊かにするためのブランディングという活動になるのだと思います。 経済的な豊かさだけでは満たされなくなってきているというのが、いまの社会的な価値観の変化傾向でしょう。その意味でも人が生きる場としての地域をいかにブランディングし、「何度も訪れたくなる」「住みたくなる」「働きたくなる」場にするための方法論の確立と実践は社会的にみても大きな課題ではないかと思うのです。

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マインドシェアの獲得に必要な5つの要素

名が知れていること。世間的に有意なある一定量以上の評価をされていること。信頼や親しみを獲得していること。個人であれ、企業であれ、周囲や世間のマインドシェアを獲得することで、何かと得することはあるはずです。

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恋愛にたとえると・・・

ブランディングでも、マーケティングでも、ユーザビリティでも、やっぱりキモになるのはユーザー視点/顧客視点をもつことだと僕は思います。 でも、最近すごく気になるのは「ユーザー視点で」といいつつ、実際にはユーザーのことを知ろうとしない、その作業をするのを億劫がる人、拒む人が意外と多いことです。 ユーザーに焦点を合わせるというのは、単なる態度ではない。そのための作業が必要なのだ。(中略)何をデザインするのかを知るための地ならし作業であるマーケット・リサーチで、あるいは日々のプログラミングにおける決定、うまくいったかどうかを決めるユーザービリティ・テストで、製品がユーザーの求めているものに応えているかどうかの品質保証の手続きにおいて、そして消費財サービスにおいてである。 ローラ・デ・ヤング「第13章:ソフトウェア・デザインを支える組織」 テリー・ウィノグラード『ソフトウェアの達人たち―認知科学からのアプローチ』 ユーザーのことを知ろうとする作業に懐疑的で、とにかく自分たちのやりたいことをやろうとする。まぁ、それで効果がでないことも十分ありえることがわかっているならいいんですけど、そうではなく同時に効果をお求めでいらっしゃる。 なんで自分たちがコミュニケートしようとする相手のことを知るのをそんなに拒絶するのだろう?って思います。 誰か異性のことが気になりだし、その相手といい関係になりたいなって思ったとき、あなたは相手のことを知り相手の気持ちも考慮しつつ自分の気持ちを伝えるか、そ…

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ブランドも人間中心のデザインの対象ですね(前編)

ブランドをシックスシグマとISO13407:人間中心設計プロセスでデザインするといいですねという話は今年のはじめあたりからあちこちでお話させていただいています。 きっと、そうしたほうがブランディングに関する考えを具体的にまとめていきやすいと思って、そういう話をしていたんですが、先日、人間中心のデザインについて考えをあらためて以来、形がなく、人が自分の体験した複数の経験の複合からその価値を評価したりしなかったりする対象であるブランドこそ、まさに人間中心のデザインの対象としてぴったりなんだなと思いましたので、そのあたりをすこし。

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ブランドの肌触り

今日、MarkeZineの編集部の方と打ち合わせをしていて、ブランドとWebユーザビリティの関係についての話になりました。 とある会社さんでは、Webのユーザビリティを考える際に、ブランドとの関係を考慮に入れるそうです。 ブランドの肌触り確かにそれは一理あるなと思いました。前から書いているように、ブランドの価値はユーザーがブランドに接するあらゆるタッチポイントでの総合的な評価によって築かれます。様々なブランド体験がユーザーのなかであわさった形でそのブランドの評価が決まります。当然、そこにはWebでの体験も含まれるでしょう。 ブランドにはそのブランドなりの肌触りみたいなものがあると思います。 ぬいぐるみクマのようなやわらかな触感もあれば、女性の肌のようななめらかな肌触り、シルクのような冷たい感触、ツイードのジャケットのようなざっくりとした温かみのある素朴な感触などもあるでしょう。そうした肌触りが感じられるブランドになれば、それこそそのブランドが肌に触れてもいいほどの親近感を持ってもらえている証拠なのではないかと思ったりもします。 しかし、一方で遠めで見ていた印象と、実際に触れた肌触りが異なると、ブランドに対する思いがちょっと冷めてしまうこともあるかもしれません。 意外性それ自体は悪いものではないのですけど、その意外に感じた違和感がうまくそのブランドの世界に統合できなかった場合、どうしてもブランドの評価が下がってしまうということはあるでしょう。 ブランドのタッチポイントを設計…

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Webだけではブランディングはできない

ブランディングに関する相談を受けた場合、最近はまず手始めにブログ検索などを中心にネット上でのそのブランドの現在の評価がどうなっているかを調べたりするようにしています。調べてもみると、ブランドの側が狙っているものと、市場が感じているもののギャップがわかってなかなか参考になります。 Webだけではブランディングはできない多くのブランドが顧客に親しみ、信頼をもってもらおうとWebでのイメージ訴求や情報発信に力を入れようとしますが、Web上の実際の評価をみると、販売員の態度が悪かった、営業が知識不足だったなどといった意見のほうが目立つことがあったりします。商品そのものの良し悪しよりもそういった売り場、購入の現場でのブランド経験の評価の低さのほうが声に出して語りやすいのかもしれません。 自社のWebサイトを使ってブランディングを行なおうとする際に、こうした自社サイトの外の意見を無視して、いくらブランドのイメージをよくしよう、高い価値を感じてもらおうとしてもダメです。ブランドのマイナス側面を削減しようともせず、いくらプラス側面ばかりを訴求しても、基礎となる土台が不安定なのですから、ブランドの価値は積み重なっていきません。 先日の「間違っても人様の会社のブランドをつくることができるなどと勘違いしないこと」というエントリーでは、ブランドをつくるためには、まず、社内の人間がとにかく自分たちの会社は何を追いかけてるのか? どんな夢に向かって進んでいるのか? 自分たちはどうすれば輝き、外部の人に認めて…

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ブランド経営のむずかしさ

夢だとか、こだわりだとか、そういう強い想いって大事だなと思います。 そういう強い想いが結局はブランドを形作る原動力になるのだろうし、何かを伝えていく、何かを具体的に作り上げていくためには必要なのだろうと思います。 強い想いだからこそすぐに実を結ばないもちろん、どんなに強い想いがあっても最初からうまくはいきません。 いや、むしろ、想いが強ければ強いほど、そして、それが後のブランド価値につながるような独自性のある想いであればなおさら、最初はまわりからは冷たい目で見られることのほうが多いのでしょう。 でも、強い想いを捨てずに、その想いを持ち続けて、まわりに伝えていこうとする姿勢を持ち続けることはとても重要なんだと思います。 それは強引に他の人に理解してもらおうと先を急ぐことではありません。地道にコツコツと1つ1つ形作っていくこと。遠回りでも地道に地盤から固めて、徐々にまわりを納得させられるだけの継続性をもつこと。結局はそういうものがブランドを築き上げるのだし、個人においても信頼や理解を得ることにつながるのだと思います。 まわりを見つつも流行に流されないそれにはあまりに流行に流されない姿勢も必要なのでしょう。流行に乗るということはやはり独自性を一部あきらめることでもありますから。 かといって、それは周囲を無視して自分の勝手な思い込みだけで突き進むということではなく、自分の信じたものを強く抱きながらも、それを現在の環境にどう生かしていくかをすこしずつでも考え、実現していくこ…

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間違っても人様の会社のブランドをつくることができるなどと勘違いしないこと

考えれば、ごくごく当たり前なことを書きますね。 これはかなり真実です。 どう頑張ってもブランドにならない会社社内にいる人が自分の会社のブランド力を微塵も感じない会社にブランディングはできません。 ブランドって人を魅了するわけですから、社内の人間さえ魅了できなかったり、社内の人間の自分たちのブランドって何だろうっていう問いにいくら考えても答えられない会社にブランディングはできないんです。 夢のない会社がブランドになることはないのです。そして、企業における夢とは他人が見せてくれるのではなく、自分たちで見るしかないんです。 これ、間違えちゃいけません。 ブランディングは内にある魅力を外の人にも知ってもらうだけのことブランディングって所詮は企業内に隠れて外には出なかった魅力を外の人にもわかるようにする作業でしかないわけです。 社内の人しか感じてなかった魅力、そして社内だけがこっそりと追い続けていた夢を、外部のもっと多くの人に知ってもらおう。共有してもらおう。そして、できればいっしょに夢を追いかけてもらおうというのがブランディングです。 内に魅力がなければ外からは手の出しようがないだから、そういう目的意識がない企業はいくら外部の会社がテコ入れしようとブランドとはなりえないわけです。 高い目標を追いかける意識、そして、その行動力こそがブランドなわけで、そんなの外部から手を入れようがない。だって、企業のミッション自体を外部が定義してあげるなんてさすがにおかしいから。 せめてで…

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ブランドとは何か?:3.ブランドの革新性

「ブランドとは何か?:2.般若心経の五蘊」では、「ブランドは常に新たな宣言とその実行によって、物事の関係性を生起させていかなくてはならない」と述べました。顧客の評価としてのブランドは、常に新たな革新によって顧客に新たな価値提案を行なっていかなければ、その価値を時とともに目減りさせていくしかありません。 「ブランドがわからない」とおっしゃる方は、おそらくそのあたりの感覚がいまひとつ実感として掴めないのではないのではないでしょうか。評判という確固たる実在をもたないものがいかに維持され、逆にどのような場合にその存在を喪失するのか。そのことがつかめないのではないでしょうか。 ワタリバッタ(飛蝗)ブランド認知という言葉があります。何度も書いているとおり、ブランドは顧客の評判ですから、当然、認知されなくてはブランドたりえません。しかし、ひとりの顧客に認知されたからといって、それがブランドとはいえないのはおわかりでしょう。 では、どれだけの人が認知すればブランドなのか? はたまた、ある一定の数を超えた認知が確立されたとき、ブランドが価値を持つのであるというのなら、それはどのような形でそうなるのか? このことをイメージしやすくするため、ワタリバッタの例を見てみましょう。 その生活史の中の大型化した形態が、ワタリバッタ、飛蝗として恐れられるバッタは、普通はただの無害なバッタである。それが気候によって、限定された場所に多数のバッタが群れることを強いられたときには、まったく新しい一連の変化が始…

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ブランドとは何か?:2.般若心経の五蘊

さて、前回の「ブランドとは何か?:1.A Model of Brandとパースの記号論」では、A Model of Brandとパースの記号論を参照することで、ブランドが確固たる対象をもたず、同時にまったくそれを表象する対象がないわけでもない、認知の総体であることについて触れました。 般若心経のなかの五蘊(色・受・想・行・識)と色即是空このブランドを実体としてではなく、複雑な関係性のなかに生起してくる解釈論、認知論的な存在として捉える見方は、同じく般若心経のなかにも見出すことができます。  観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空 度一切苦厄 ここでは、観自在菩薩は五蘊が皆、空だとわかったといっています。 五蘊とは、私たちの身心を構成する5つの集まりとされ、次の5つを意味します。 色 : 物質的現象、形あるもの受 : 感覚、外界と触れて何らかを感受すること想 : 表象、知覚、脳内にできあがる具体的なイメージ行 : 意志、特定の方向に気持ちが志向すること識 : 認識の蓄積、あらゆる知識や認識の総体 この五蘊がすべて空だということです。 空とは単純な無ではなく、実体ではなく、関係性のなかで仮に現れた現象だということです。  舎利子 色不異空 空不異色 色即是空 空即是色 受想行識亦復如是 「色は空に異ならず、空は色に異ならず、」、そして「色すなわち空であり、空すなわち色である」と。さらには「受想行識もまたまた是くの如し」というわけです。   仏教的なモ…

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ブランドとは何か?:1.A Model of Brandとパースの記号論

昨日、会社で同僚が「ブランドって何?」と言ってました。 最初に答えを言ってしまえば、ブランドとは顧客が感じる評価の総体です。総体というのは要素を1つ1つ足し合わせたものという意味ではなく、要素に還元できない全体性をもったものという意味で総体といっています。 価値提供プロセスが顧客の評価としてのブランドを生み出すそれゆえに企業が顧客に対して価値を創造、提供するすべてのプロセス(企業内の非価値提供プロセスは除く)が、結果として顧客の評価を生み出すという意味で「ブランドのつくりかた 1.シックスシグマを使う、2.戦略マップとバランススコアカードを使う、3.顧客インサイトを把握する」や「苦情対応システムがブランドをつくる」といったエントリーを書いてきました。 また、価値提供プロセスの1としてWebサイトを捉えれば、直接的経験としての価値提供と間接的経験としての価値提供として、ブランドプロミスに沿ったWebサイトをいかに価値提供プロセスの一部に組み込むかという企画、設計ができるようになると思います。その企画のフレームワークとしては「Webブランディングの企画のためのフレームワークを図にしてみた」を参照いただければと思います。 認知科学的対象としてのブランド一方で、では、いかにして顧客の評価がブランドになるのかという認知学的な問いも一方では成り立つのでしょう。実はここが意外とブランドをむずかしく感じさせるところなのかもしれません。 でも、それはビジネスの理解が足りないというよりもヒト…

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苦情対応システムがブランドをつくる

あなたの会社の苦情対応の仕組みはどうなっているでしょうか? 苦情とは顧客の生の声苦情対応システムとはVOC(Voice of Customer)システムにほかなりません。苦情とは顧客の要求そのものです。普段、マーケターがさまざまな調査手法を駆使して、また、多大なコストをかけてでも欲しがっている顧客の声が勝手に向こうからやってくるのです。 しかも、アンケートやフォーカスインタビューなどの手法では得ることがむずかしい顧客の真の声が聞こえてくるのが苦情です。そこには顧客が何を重視してるのか、顧客が製品を実際にどのように利用しているかなど、貴重なマーケティングデータも含まれます。 にもかかわらず、苦情対応をないがしろにして、せっかくの機会を逃した上に、誠実な対応をしないことで大事なブランドイメージまで破壊してしまっている企業も多いのではないかと考えられます。

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ブランドのつくりかた:3.顧客インサイトを把握する

「ブランドのつくりかた:1.シックスシグマを使う」ではシックスシグマの手法を使った企業のコアプロセスの特定、アウトプット要求とサービス要求の2つの顧客要求について、そして、「ブランドのつくりかた:2.戦略マップとバランススコアカードを使う」では戦略マップとバランススコアカードを使って、戦略の可視化と測定によるコントロールの手法を紹介しました。こうした手法を使うだけでも随分と「ブランドをつくる」方法が製造業の方などにも慣れ親しんだものになってくるのではないかと思います。 顧客インサイトを分析するしかし、それだけではまだ不足しています。当然、この戦略がそもそも正しいの?という疑問があるわけです。 そのためにはやっぱり顧客の購買における選択要因、利用における満足要因などの顧客インサイトに関する情報収集、分析なども当然必要になります。そうでなくては、その戦略がブランドに対する顧客の評価をあげることにつながるかどうかを検討することができないわけですから。ようは顧客のインサイトを知らなければ、単なる当て推量で戦略(もどき)を描いているのにすぎないわけです。 シックスシグマのロードマップ『シックスシグマ・ウエイ―全社的経営革新の全ノウハウ』は次のようなロードマップが描かれています。 コア・プロセスと主要顧客の確定顧客要求の定義現行パフォーマンスの測定改善活動の優先順位づけ、分析、実行シックスシグマ・システムの拡張と統合 1番目の「コア・プロセスと主要顧客の確定」は「1.シックスシグマを…

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ブランドのつくりかた:2.戦略マップとバランススコアカードを使う

「ブランドのつくりかた:1.シックスシグマを使う」の続きです。 今回は、バランススコアカードと戦略マップについて考えてみようと思います。 結果だけ測定してもしょうがないまず、なぜ、バランススコアカードなのか? それは結果だけ測定してもしょうがないからです。ここでいう結果とは、最終的なビジネスの成果としての売上や利益と考えてください。あるいはブランドに関して考えるならば、顧客に受け取られたブランドの価値、評判と考えてもいいでしょう。しょうがないというのは、結果の数字だけみても、それを改善するヒントは得られないからです。 ブランドの評判ということでは、「ブログ検索で市場のブランドイメージ浸透を検証する」でブログ検索によってブランドの評判を測定する方法を紹介しました。また、消費者の口コミをリアルタイムに分析する電通のリサーチシステム「電通バズリサーチ ver2.0」などで収集することはできるでしょう。 参考情報:ネットの口コミ、集めて分析します - 電通がバズリサーチを強化:MYCOMジャーナル しかし、繰り返しますが、「結果だけ測定してもしょうがない」のです。結果だけではなぜそうなったかがわからず、改善しようがないからです。 これを解決する手段として、バランススコアカードと戦略マップです。

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ブランドのつくりかた:1.シックスシグマを使う

昨夜のエントリー「マーケターの失敗につながる3つの能力欠如」では、「ブランド・マネジメントのために組織・文化・情報を支援するのに必要な、顧客視点でのプロセス形成能力」の欠如を補うためには、シックスシグマを使うことが有効ではないかと書きました。 ブランドのつくりかたそんなことを考える背景にはやはり「製品のつくりかたは知っていてもブランドのつくりかたは知らないって、ビジネスとしてどうなの?」という思いがあります。 これに関しては、さつませんだい徒然草さんに参考になるトラックバックをいただいたので、ぜひこちらも参考いただければと思います。 たこやき屋の場合だと、「たこ焼きを美味しく作る」ってのはもちろん大事。でもそれだけじゃダメなんです。「美味しいと感じてもらえるたこ焼きを作る」ほうが大事なの。言葉遊びみたいだけど大きな違いなんすよね(この違いをわかってもらいたい)。 さつませんだい徒然草:そうだよ! そうなんだよ!(マーケターの失敗につながる3つの能力欠如を読んで) とにかくブランドの重要性はわかっていても、そのつかりかたを知らないというマーケターは非常に多いのだろうと思います(僕自身も含めて)。 ブランドがキャンペーンと同じレベルであれば、これまで行なってきたマーケティング手法も使えるのかもしれませんが、その方法ではどうしても長期にわたり競争優位性をもった企業資産としてのブランドを構築、維持していくことはむずかしいでしょう。 昨日も紹介しましたが、『利益を創出する統合マーケ…

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Webブランディングの企画のためのフレームワークを図にしてみた

先ほど「思考のフレームワーク」というエントリーでも触れましたが、思考の効率化や思考力をあげるためには既存のフレームワークを活用した上で、自分なりの考えを整理し、膨らましてみるのが良い方法だと思っています。 そこでちょっとWebブランディングの企画のためのフレームワークについて考えてみました。 Webブランディングの企画のためのフレームワークまず最初に定義しておくと、このフレームワークはあくまでWebを活用した企業ブランド、製品ブランドそのもののブランディングの企画、戦略立案のためのフレームワークとして想定されています。世の中的にはWebブランディングと評して、企業や製品のブランディングではなく、Webサイトそのもののブランディングだったり、価値評価みたいなことをやってる会社なんかがありますが、それとはまったく別物です。 あくまで企業がWebを利用して、ブランディングを行なっていくためにはどうすればよいかという企画を作成するためのフレームワークだと思ってください。 では、さっそく図からご紹介。 まぁ、こんな感じです。 これだけだとわからないので、すこし説明しておきましょう。

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