企業サイト開発における非ユーザー中心デザインのすすめ

『ペルソナ作って、それからどうするの? ユーザー中心デザインで作るWebサイト』なんて本を書いた僕ですが、必ずしもすべてのWebサイト開発に「ユーザー中心デザイン」が必要とは思っていません

むしろ、企業サイトの開発においては、むしろ、ユーザー中心デザインより先にやることがあるのは明らかです。実際、『ペルソナ作って、それからどうするの?』のなかでも企業サイトであれば、ユーザー中心デザインをする必要はないことははっきり書かせてもらいました。IDEOのデヴィッド・ケリーは言っているように「ある問題を理解したとしても、同じ方法で次の問題も解決できるわけではありません」。
当たり前ですけど、問題解決には解決する問題にあった解決方法を選ばないと意味はありません。デザインにおいて重要なのは何よりまず問題解決に適した問題解決プロセスそのものをデザインすることだと思います。

企業サイトのデザインではUCDよりビジネス戦略のデザインの方法を知る必要がある

多くの企業サイトは、いや、企業は、ユーザー中心デザインのアプローチで解決できる問題以上のものを抱えています。

Webサイトのユーザーが自社のサイトをどんな風に使っているかということ以前に、自分たちの会社ってどういう商売をどうやって展開していこうとしているのか、そのためにはWebサイトを全体のしくみのなかにどう位置づけ、どのようなしくみとして自社のステークスホルダーとの接点としてデザインするのか。そうした問題にまともに答えられる企業(担当者)は少ないはずです。

何を言ってるかといえば、こんな3C分析シックスシグマのフレームワークで用いられるキーワードをちりばめた図を使って、自社がどんな風にビジネスを展開し、それをうまく回すためにWebサイトを使ってどのようなコミュニケーション戦略をとっていくかを明示することができますか?ということです。



僕としては、企業サイトのデザインに関わる人間なら、ユーザー中心デザインの方法なんて知らなくてもいいから、こういうビジネス視点でのコミュニケーション戦略のデザインの方法を知ってなければまったくダメでしょって思います。

企業サイトのコミュニケーション・デザイン

なんでもかんでもUCDじゃないわけです。

この点は僕の本を読む際に誤解してほしくないなと思う点です。僕はすべてのWebサイトをUCDでデザインする必要なんてまったく感じてないし、むしろ、その必要もないのにUCDを使うのは悪だと考えます(時間の無駄という意味において)。

企業サイトというのは、何かしらのビジネス問題を解決するため、企業戦略・マーケティング戦略を具体的に実現する手段として、企業のコミュニケーション戦略を展開するためのしくみの一部であるはずです。
まずは、そのためには自社の「主要顧客」が誰で、彼らの「アウトプット要求/サービス要求」と自社の「コアプロセス」や「サービス基準」との関係を整理すること、その際には自社と顧客の関係だけではなく「競合他社とのギャップ」も考慮する必要があるし、「市場動向」もきっちりと見据える必要があるでしょう。そうした現状把握のうえで、あるべき姿を描き、現状とあるべき姿のギャップをいかにして埋めるかという視点で、Webサイトにおけるコミュニケーションをデザインする。

こういった問題をまず解決するほうがよっぽど企業サイトをデザインする上では重要でしょう。こうしたビジネス戦略とWebでのコミュニケーションをつなげる・リンクさせる工程を経ずに、既存のコンテンツをただ整理するだけだったり、仮想のユーザー動線を描いてそれでエセUCDをやったつもりになっても仕方がない。ましてやビジネスの問題をほったらかしてユーザー中心のデザインでWebサイトをデザインしようなんてアプローチを選択するのはどうかしてると思います。

Webコミュニケーションのデザインの方法を知ることの大切さ

考えてもみてください。ビジネスのしくみやコミュニケーションがまともにデザインされていない企業の魅力が外部に通じるわけはありませんよね。であれば、そういう企業のサイトにそもそもユーザーなんていないはずです。ユーザーがいないのにユーザー中心デザインなんて成り立ちません。その場合、UCDなんて考える前に、まずはまともに企業のコミュニケーションそのものをデザインしなおしてユーザーを創造することからはじめないとだめでしょう。UCDのアプローチを使うのはそのあとで十分間に合います。

たぶん、UCDっていうのはこれからしばらくちょっとしたブームにはなるでしょう。
でも、ブームとしてUCDにのっかってみても意味はないし、不適切な場面でUCDを使えば、本来効果がでる場面があるUCDも「なんだ役に立たない」と思われ、疲弊するだけです。当たり前ですけど、どんな方法論も適材適所で使わないとその効果が得られません。やたらと、なんでもUCDのアプローチで解決できるなんてことはぜひ考えないでいただければと思います。

繰り返しますが、企業サイトのデザインにおいては、企業戦略・マーケティング戦略とリンクした形で、いかにWebでのコミュニケーション戦略をデザインするかということのほうがはるかに大事です。そして、企業サイトのデザインの上流工程に関わる人は、いきなりWebサイトの具体的なデザインをはじめる前に、まず、企業戦略・マーケティング戦略をWebコミュニケーション戦略に落とし込む方法を知っていなければいけないと思います。企業サイトのデザインに関わる方ならUCDなんか学ぶより、シックスシグマやバランススコアカードの考え方について学んだほうがいいと思います。あとは基本的なマーケティングの考え方でしょうか(Webマーケティングとか広告の話じゃなくて、もっと基本的なマーケティング)。

その1つが先に図で示した3C分析とシックスシグマの手法を使った方法です。この方法にはだいぶお世話になりました。
いまでこそUCDに関する話題が多いこのブログですが、最初のころはむしろ3C分析やシックスシグマの手法を用いたビジネスの側からのWebデザインの方法を紹介したエントリーも書いています。興味のある方は「3C分析」「シックスシグマ」「SIPOC」「バランススコアカード」「戦略マップ」「特性要因図」「アウトプット要求」などのキーワードを使って、Googleでこのサイト内をキーワード検索してみてください。もしかすると参考になるエントリーが見つかるかもしれません。

もっと詳しいことを手っ取り早く知りたい方は、こちらを参照ください。

   

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この記事へのコメント

  • ブランド太郎

    エントリー拝見しました。共感します。

    「ユーザー中心デザインの方法なんて知らなくてもいいから、こういうビジネス視点でのコミュニケーション戦略のデザインの方法を知ってなければまったくダメでしょって思います。」

    という内容が言葉を変え、形を変えて出てきてて、ここが今のWebデザインの課題だよなと感じました。

    デザインの前にコミュニケーション設計、
    さらにビジネス戦略・マーケ戦略を理解して
    取り組むのはすばらしいのですが、こういう
    意欲的人材やロールモデルがとても少なかったり、場がまだまだないのも現実。

    それでも、私の一巡論ではないですが、徐々にデザインに飽き足らない、ビジネス課題とデザインの高い両立を狙うメンバーも出てきていると思います。

    また業界のレベルを引き上げるかのような提言期待してます。
    2008年06月08日 16:37

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