2008年05月25日

はてなクラブという試みについて

はてなクラブがやろうとしているのは「ユーザビリティ」なんでしょうか。ここには「サービスの品質向上」と書いてあるので、ここを読む限りはやり方として問題はないと思いますが。

ユーザビリティテストのモニター組織とリクルーティング

aratako0さんもこう書いていますが、特に「ユーザビリティテスト」としての考えの甘さは、あの文面にはないと思います。

先日、はてなクラブの募集が開始されました(僕も申し込みました)。既にいろんな人たちがブクマコメントなどで突っ込んでいるのですが、ユーザビリティテストの考え方がちょっと甘いかなと思います。

そう思うのは、はてなクラブはまずテストの被験者を集めるためのモニター会員組織であると感じられること、テスト時には再度、被験者のスクリーニングが行われるのではないかと思えるからです。

これなら、aratako0さんのいう「重要なのはテスターのリクルーティング」も満たせると思います。そもそもモニター会員組織の母体にある程度、いろんな人がいないとスクリーニングしても、必要な被験者を見つけることはむずかしいですから。
母体は大きい方がスクリーニングで対象者を見つけるのには向いています。リサーチ会社でもモニター会員組織はできるだけ多くの人を集めようとします。そのほうがどんな条件でスクリーングをかけた場合でも対象者が見つかる可能性が高くなるからです。
ですのでモニター会員組織がさまざまなユーザー層をあいまいな形で取り込んでしまうことと、リクルート条件を明確に絞り込むこととは別です。ユーザビリティテストの被験者を実際にリクルートする際に適切なスクリーナで対象者を絞り込む作業は別途行うことなのですから。

その意味で、はてなクラブが「家族や友達も誘って」とするのは正しい姿勢だと思います。

インタビューについて

それから、インタビューに関して。これは、最初に書いたように、そもそもはてなクラブがやろうとしているのは、ユーザビリティの向上だけではなく、「サービスの品質向上」なのだということと関係しています。

ニールセンは、ユーティリティとユーザビリティを分けて捉え、それをユースフルネスという上位概念でまとめてますが、「サービスの品質向上」というのは、このユースフルネスのほうが近いのではないかと思います。まぁ、これはISO9241-11の定義をビッグ・ユーザビリティと捉えると割と近い考え方にも思えますが、ただ、ビジネス的観点からいくと「サービスの品質向上」という話とユーザビリティをイコールに考えるのはちょっと難しいだろうなとは思います。

ところでインタビューなんですが、もちろんコンテキストインタビューという方法はあります。でも、だからといって通常のインタビューが意味がないという話ではありません。

また、id:jkondoの日記ではインタビューをすることによって実態調査を行っているとありますが、この方法も最善かと言われるとちょっと疑問です。インタビューはインタビューされる人が自分で言語化できることしか答えられないので、言語化できない自分のニーズを伝えることができないのです。

最善ではないにせよ、経営者自らがこうしてインタビューを行うのは「善」ではないでしょうか。少なくとも、インタビューを行うことで、自分たちがこれまで想定していなかった使い方をしているユーザーがいろいろといそうだという目安になります。そこがスタートです。そのことをまず自分自身が知ることが何より大事だと僕は思います。

それにコンテキストインタビューなら、言語化できないニーズを把握できるかといえばそうでもありません。もちろん、現時点で最善の方法の1つではあるので、できる限り、コンテキストインタビューやフィールドワークの手法を使ったほうがいいでしょう。それによってユーザーの行動とそのコンテキストはかなり理解できます。ただし、「かなり理解できる」場合でも、それは全体(そんなものあるのか?)からすればそれでもごく一部です。

まず、コンテキストインタビューだけではユーザーの思考過程や思考のクセというものはわかりません。ネット・サービスだとこのへんがわからないとツライ部分もあります。その際は評価グリッド法などを同時に用いることも必要でしょう。

あとビジネス的な視点で、サービス品質向上をうたうとなれば、ターゲットユーザー層をどう考えるかという点と絡めて、行動調査や評価グリッド法などの調査から見えてきたユーザーセグメントの各層が実際に世の中にどの程度の比率で存在するかを把握するための定量調査も必要になってくる場合もあるでしょう。

実践することから学べばいいと思う

こうやって考えると、いろいろやらなきゃいけないことは増えてくると思うんです。でもね、大事なことは、はてなが実際にユーザーが実際にどんな風にサービスを使うのかを調べようとしたり、開発中のサービスをユーザビリティテストにかけようとしたりする方向に、実際に歩みだしたことじゃないでしょうか?
そりゃ、ベストな方法なんて考えれば、いくらでも出てきます。でも、最初の一歩すら踏み出してない会社、踏み出すことすら「意味がない」と否定する会社に比べれば、かなりまともだと僕は感じました。

それにユーザー中心デザインにしても、実践してみないとわからない部分が当然あります。はてなが自分たちでテストなりインタビューなりを実践してみることで、徐々に最適な方向に進むということもあるのではないかと感じました。
それに実際のところは具体的な実践のなかの失敗からしか学べないと僕は思います。ユーザーの体験を追体験することからデザインをはじめようとするのですから、まず何よりは自分たちが体験しないことにははじまりません。そこにはてなが積極的に踏み出そうとするのですから、お手並み拝見という感じで応援するくらいでいいんじゃないでしょうか。

IDEOのデザインプロセス、再び。」で書いたのとおなじことかもしれませんが、理解・観察からはじまるユーザー中心のデザインがごくごく当たり前のデザインプロセスとして浸透していくのはよいことだと思いますし。はてながその先陣を切って進もうとしているのなら僕は応援したいですね。

  

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posted by HIROKI tanahashi at 12:23| Comment(0) | TrackBack(0) | Web | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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