せめて参加者の発言の要点をホワイトボードやプロジェクターにつながったパソコンなりで、みんなに見えるように記録をしていけばいいのですけど、それをしない会議が意外と多いんですね。でも、それだと会議が絶対に非効率になります。
その場で全員に見える形で発言の要点の記録をやらないと、やっぱりいまの文字文化の人には前に別の人が言ったことを忘れてしまったりします。それだと、話がどんどん拡散していくのは避けられません。
目に見える形で書いて整理すれば、簡単にまとまる話ですら、まとまるまでに時間がかかって非効率になります。ましてや、議題がちょっと複雑だったり、いろいろ考えなきゃ答えが出ないようなものだと手に負えない状況にもなります。
長い時間かけて会議をして、個々にはそれなりに良い発言があっても、それらがすべて雲散霧消してしまい、結局、何の結論にもいたらず、この数時間はいったい何だったんだろうという不幸な結果にもなりかねません。これはいけません。その内容がコスト削減のための業務効率化だったりしたら本当に目も当てられませんよ。だったら、この会議からまずどうにかしようよって話です。
会議の記録も情報デザイン
とはいえ、参加者の話を方向づける司会者=モデレーターと、記録係を兼ねるのはよほど他人の話の要点をつかむのがうまい人じゃないとむずかしい。やっぱり司会者と記録係は別々に置いたほうがいいのだろうと思います。で、その記録係もただ参加者の発言をそのまま記録してればいいってわけじゃないんですよね。前に「判断力は情報デザイン力、物語化の能力」ってエントリーを書きましたが、会議の記録もまた情報デザイン的性質をもってるんだと考えます。いかに参加者の発言をカテゴライズ、階層構造化して、発言間の関係性・構造をわかりやすく可視化するかという力が求められます。記録者の情報デザイン力如何では、会議が創造的な場となるかどうかも決まってくると思います。
図を描くことで、一歩上の記録を
ところで、参加者の発言の要点を箇条書きのような形で記録するのは最低限のことです。もう一歩先を行くなら、記録しながら個々の話の内容を分類・整理しながら、絵を描いていくことができればもっとよいと思います。絵っていってもイラストみたいなものじゃなくて、図でいいんです。発言間の見えない関係性を図で可視化できれば、口頭だけでは気づかなかったものが見えてきて、図上の関係性の軸から最初は想像もしなかったエリアに新しいものが見えてくることだってあります。
極端な場合、ホワイトボードに描いた図上で、問題の解決法がデザインできちゃう場合だってありますよ。デザインできちゃうというと言いすぎかもしれないけど、ベースとなるラフデザインは本当にできちゃいます。そこまでいければ会議というよりワークショップですね。協働作業の場です。
互いに図で話す打ち合わせ
と、ここまで書きながら思い出したけど、転職前って2、3人の少人数での打ち合わせだとそれぞれがA4の裏紙もっていて、おたがい相手の話や自分の考えをそれぞれ図にしてメモったりしてましたね。相手に何か自分の考えを伝えるときも口で全部言うんじゃなくてササっと図にして「こうじゃない?」とか訊いたりしてました。
あの打ち合わせ形式は効率的だったし、話がブレないのでアイデアを深いところまで落とし込めてましたね。扱ってたものが平面だっただけに、粘土とかダンボールを使ってやるフォームブレストにまでは発展しなかったのですが、それでも絵をたがいに描いて見せあうことで、言葉だけの打ち合わせよりもずいぶんと具体的で有益な話ができていたと思います。
また、あのスタイルの打ち合わせができるようにならないとダメだなって思いました。やっぱりみんなで手を動かしながら考えるという図と言葉の両方をつかった思考法・会議法を徹底していく必要がありますね。
そうしないと意見もネガティブで無駄なものばかりになっちゃうってこともあります。文字や図にしちゃえば、それほどネガティブなものって出てこないですから。
それには絵で考えられる思考力をまわりの人にも身につけてもらわないといけませんね。
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この記事へのコメント
アサノ
私も、学生が「相談があるんですけど。」と言ってくると、必ず「紙と鉛筆持って来い。」と言います。
まさに、議論を視覚化していかないと、曖昧な話って一向にらちがあかないですよね。
tanahashi
なので、承認遅れてすみません。
最近、視覚でコミュニケーションする方法を鍛えるワークショップってありかなって思ってます。
ペルソナの行動をマンガで表現しようとかでもいいんですけど、それだとハードル高すぎなので、写真をいろいろ撮って集めたものから物語をつくるとかというのはありかな、と。
自分も含めてなんですけど、視覚で直接考える能力を鍛えることが大切なんじゃないかなと思いはじめてます。
ちょっと話はそれましたが。