『ペルソナ作って、それからどうするの?』といっしょに読みたい参考文献:2.認知科学・UCD編

『ペルソナ作って、それからどうするの?』の第1章では、「デザインって何なのでしか?」という問題の整理をスタート地点にして、「ウェブの制作とデザイン」、「創造性とデザインの方法」、「ユーザーの行動とデザイン」、「ウェブサイトをデザインする際の境界線問題」と話を進め、現在のウェブデザインの問題点と課題を整理・指摘しています。

それを受けた第2章は「ペルソナ/シナリオ法とウェブデザイン」と題して、<「誰のためのデザインなのか?」という疑問に対して「誰のどんな問題を解決するのか」を明示するデザイン手法がペルソナ/シナリオ法>を紹介するとともに、「ユーザビリティとペルソナ」、「ユーザーエクスペリエンスとペルソナ」、「ペルソナを用いてインタラクション・デザインを考える」など、ペルソナ/シナリオ法を用いることで、ユーザビリティの問題やユーザー・エクスペリエンスのデザインをいかに解決できるかを考察しています。

ここではペルソナ/シナリオ法がどのような形でユーザビリティの向上に貢献しうるかという点を考察しようと思います。ただ、その考察をはじめる前に、まずユーザビリティとは何かを検討する必要があるでしょう。ユーザビリティはさまざまな形で解釈されており、理解の混乱もみられるからです。そのため、現在、どのような解釈がなされているかをざっと一望した後、本書でユーザビリティをどう扱うかをあらためて定義することにします。
「第2章 ペルソナ/シナリオ法とウェブデザイン」より


さて、「『ペルソナ作って、それからどうするの?』といっしょに読みたい参考文献:1.デザイン編」では広義のデザイン関連書籍を紹介しましたので、今回は、第2章で参照することが多かった認知科学、ユーザー中心のデザイン、人間中心設計に関する参考文献を紹介していきましょう。

ドナルド・A・ノーマン

ユーザー中心のデザイン、人間中心設計について考える上ではやっぱり欠かせないのが、ドナルド・A・ノーマンの著書でしょう。本書でも以下の3冊を参照しています。

  • 誰のためのデザイン? [書評]
  • 人を賢くする道具―ソフト・テクノロジーの心理学 [書評]
  • エモーショナル・デザイン―微笑を誘うモノたちのために [書評]

『誰のためのデザイン?』で提唱された「ユーザー中心デザインの7つの原則」や「行為遂行の7段階理論」、『エモーショナル・デザイン』の「本能的デザイン」「行動的デザイン」「内省的デザイン」の3つの分類をはじめ、認知科学者の視点からみたユーザビリティやユーザー・エクスペリエンスに関する考え方は大いに参照させてもらっています。

あるものをはじめて見て触れるユーザーにとって、それはまったくの未知のものであるかもしれません。ユーザーにそれを使ってみようという意欲があれば、ユーザーは自分の過去の経験に照らし合わせてそれで何ができそうかを想像するでしょう。そこで浮かんだものの用途のイメージを、ドナルド・A・ノーマンはユーザーの「メンタルモデル」と呼んでいます。もちろん、実際のものがもつシステムのモデルとユーザーのメンタルモデルが一致しなければユーザーはそれをうまく使いこなすことができないでしょう。
「第3章 ユーザー中心のデザインの方法」より


  

認知科学、アフォーダンス

認知科学やアフォーダンスに関する書籍は、ノーマン以外にも以下のような本を参照しました。

  • ソフトウェアの達人たち―認知科学からのアプローチ/テリー・ウィノグラード [書評]
  • 認知科学への招待―心の研究のおもしろさに迫る/大津由紀雄、波多野誼余夫 [書評]
  • 「わかる」とはどういうことか/山鳥重 [書評]
  • わかったつもり 読解力がつかない本当の原因/西林克彦 [書評]
  • アフォーダンス―新しい認知の理論/佐々木正人 [関連エントリー]
  • 包まれるヒト―〈環境〉の存在論/佐々木正人 [書評]

あまり知られていない本なのが不思議ですが、テリー・ウィノグラードによる『ソフトウェアの達人たち―認知科学からのアプローチ』は、様々な視点からソフトウェア・デザインへのアプローチが試みられており、ウェブのデザインを考える上でも見逃せない一冊だと思います。

『「わかる」とはどういうことか』という本のなかで山鳥重さんは、「わかる」ための土台としての記憶についても非常に興味深い話をしてくれています。それは一言に記憶といっても、人間の記憶には大きく分けて3つの種類の記憶があるということです。まずは1つ目の区別としては個体の記憶と種としての記憶というものがあります。僕たちは記憶というとどうしても個体である自分たち自身の記憶について想像してしまいますが、実は個々人がそれぞれもっている記憶の前に、主としての人間としての記憶があるのです。
「第3章 ユーザー中心のデザインの方法」より

山鳥重さんの『「わかる」とはどういうことか』、西林克彦さんの『わかったつもり 読解力がつかない本当の原因』は、「わかるとはどういうことなのか?」を考える上で参考になりました。ウェブのユーザビリティを確保するための1つの条件として、まず、それが何をするためのものか、どう操作するのか、いまどういう状態なのかをユーザーが「わかる」必要があります。その「わかる」というのはいったい何なのかを考える上では『認知科学への招待―心の研究のおもしろさに迫る』ともに役に立ちました。
それから、アフォーダンスに関しては詳しく述べませんが、「1.デザイン編」で紹介した『デザインの生態学』とともに佐々木正人さんの著作は外せません。インタラクションとは何かを考える上では、アフォーダンスという考えは無視できないものだと思います。

   
 

ユーザー中心デザイン、人間中心設計

ユーザー中心デザイン、人間中心設計は本書の核となる方法なんですけど、実はあんまり参考にした本はありませんでした。まぁ、あまり参考になる本が日本語では出ていないなというのがこの本を書いたきっかけでもあるんですが。そのなかで参考にしたのが以下の3冊。

  • ペルソナ戦略―マーケティング、製品開発、デザインを顧客志向にする/ジョン・S・プルーイット [書評]
  • ユーザビリティエンジニアリング―ユーザ調査とユーザビリティ評価実践テクニック/樽本徹也
  • ペーパープロトタイピング 最適なユーザインタフェースを効率よくデザインする/Carolyn Snyder

『ペルソナ戦略』に関しては言うまでもないですね。これは読んでください。
ユーザー中心デザインを考える上で一番参考になったのは『ユーザビリティエンジニアリング』ですね。といっても、これは本以上に、樽本さん自身にいろいろ教えていただいて、お世話になったわけですが。
あと自分では『ペーパープロトタイピング』に関しては、もっとデザインに取り入れたほうがいいなと思っています。理由は本書のほうで述べていますので、ぜひ読んでください。

   

さて、次回の参考文献の紹介は「日本のものづくり、日本の伝統文化」に関する書籍を紹介します。

関連エントリー

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック