今回、本を書くにあたっては、いろんな書籍を参考にさせていただきました。
今日から数回に分けてそれらの本を「『ペルソナ作って、それからどうするの?』といっしょに読みたい参考文献」と題して紹介していこうと思います。
デザイン関連本
本書ではいきなりウェブのデザインを語ることはしていません。その前にそもそもデザインとは何かを考えることからはじめています。「第1章 デザインの問題を特定する」では、多くのデザイナーやデザインを考える先人の書籍を参考に「デザインって何なのでしか?」という問題の整理をスタート地点に置きました。
ところでデザインって何なのでしょうか? 本書では、デザインとは単に見た目のスタイリングのみを指す言葉としては扱いません。一般的にはデザインというと見た目のスタイリングを想像される方が多いのかもしれませんが、本来、デザインにはもうすこし広い意味があると思っています。「第1章 デザインの問題を特定する」より
「デザインって何なのでしょうか?」を考えるにあたっては、日本人の思考と海外の人のデザインに関する考え方をそれぞれ参照しています。
まず、日本人のデザインに関する考えに関しては、これらの本を参照しています。
- なぜデザインなのか。/原研哉、阿部雅世 [書評]
- 伝統の逆襲―日本の技が世界ブランドになる日/奥山清行 [書評]
- デザインの輪郭/深澤直人 [書評]
- デザインの生態学/後藤武、佐々木正人、深澤直人 [書評]
- 普通のデザイン/内田繁 [書評]
- 茶室とインテリア/内田繁 [書評]
- 玩物草子―スプーンから薪ストーブまで、心地良いデザインに囲まれた暮らし/柏木博 [書評]
- 近代デザイン史/柏木博 [書評]
- 自分の仕事をつくる/西村佳哲 [書評]
そもそも本書のテーマの1つである「人びとの暮らしからウェブデザインを考える」は、原研哉さんと阿部雅世さんの対談集『なぜデザインなのか。』から来ています。その点では西村佳哲さんの『自分の仕事をつくる』にも、ものを作ることとものを使うことの矛盾をいかにして解消するかということを考えさせられました。
もう1つのテーマである「日本型デザインの方法論」に関しても、奥山清行さんや内田繁さんの言説に負うところが大きい。深澤直人さんのアフォーダンスやデザインの輪郭という考え方、あるいはファウンド・オブジェクトという方法も非常に参考になっています。
本書のテーマである「人びとの生活、暮らしという視点からWebのデザインを探る」という意味では、インテリアデザイナーの内田繁さんが著書『普通のデザイン』のなかで述べている「日常生活の動作は、デザインにとってもっとも重要です」という言葉が興味深いところです。
「日常生活を送るために繰り返されるさまざまな基本的動作を観察し、研究することで、人と向き合ったデザインを生み出すことができるでしょう。」
このように述べる内田さんの言葉は、プロダクトデザイナーの深澤直人さんが、後藤武さんや佐々木正人さんとの共著『デザインの生態学―新しいデザインの教科書』での対談のなかで「動きの中にしかデザインはない」と言っていることとも重なってきます。「第1章 デザインの問題を特定する」より
また、柏木博さんには近代デザイン史の変遷がいかに伝統的なものづくりを駆逐していったかを理解するにあたり、参考になっています。
海外の書籍では、以下のような本を参照しています。
- システムの科学/ハーバート・A・サイモン [書評]
- モノからモノが生まれる/ブルーノ・ムナーリ [書評]
- ファンタジア/ブルーノ・ムナーリ [書評]
- 発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法/トム・ケリー [書評]
- イノベーションの達人!―発想する会社をつくる10の人材/トム・ケリー [書評]
- 失敗学―デザイン工学のパラドクス/ヘンリー・ペトロスキー [書評]
- 本棚の歴史/ヘンリー・ペトロスキー [書評]
ハーバート・A・サイモンの『システムの科学』は、自然物についての科学である自然科学に対して、デザインを人工物についての科学と捉えたうえで、デザインとはいったいどういう行為であり、何を考えて行えばよいのかということを考えるうえで非常に参考になりました。また、ブルーノ・ムナーリに関してはデザインとは方法さえわかれば誰にでもできるものという考え方に非常に勇気づけられましたし、ムナーリが提示したデザインプロセスも今回、日本型ユーザー中心のデザイン・プロセスを作成するにあたり大いに参照しています。創造性という言葉に関してもムナーリの考え方は非常に参考になっています。
デザインの力が認識できたとしても、デザインの方法を知らなければその力を発揮することはできません。ただ、どういうわけか、デザインの方法はこれまでデザイナーの頭のなかだけにしかない特殊な力のように思われてきたふしがあります。それは創造性、クリエイティビティという言葉に関しても同様です。創造性は一部の人間が生まれつきもっている特殊な力であるかのように考えられています。創造性という言葉がひらめきやアイデアと同等のものとして扱われ、妄想や思い付きとの線引きもはっきりしません。先にも紹介したイタリアの美術教育者であるブルーノ・ムナーリは数多くある著書の1つ『ファンタジア』のなかで、創造性と、思いつきや妄想も含むファンタジアなどに関して次のような整理をしています。「第1章 デザインの問題を特定する」より
サイモンとムナーリの本は、本書を通じて参照する回数が最も多くなっているのではないかと思います。
IDEOのトム・ケリーの本に関しては言うまでもないでしょう。人々の生活の観察からはじめ、プロトタイピングでデザインをブラッシュアップしていく方法論は本書でも当然ながら取り入れています。また、ヘンリー・ペトロスキーのデザインは成功からではなく失敗から学ぶものという考え方はプロトタイピングにも通じますし、それを単に1つのモノのデザインに際してだけではなく、1つのモノが積み上げてきた歴史というスパンで見る視点も、大いに参考になりました。
先のムナーリに話を戻せば、『モノからモノが生まれる』のなかで企画としてのデザインは「そのやり方を知っていれば簡単なことである」とも述べていて、問題の定義から解決にいたるプロセスを10の構成要素に分解して紹介しています。そのムナーリの企画=デザインの方法は、「デザイン創造の過程に何が含まれ」ているかを「明瞭に理解しなければならなくなった」と問題を提起したハーバート・A・サイモンへの1つの回答だとも言えるでしょう。「第1章 デザインの問題を特定する」より
さて、次回は、ユーザー中心のデザインや人間中心設計に関する参考文献を紹介しようと思います。
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