この民藝館は美しい品物だけを列べようとしております。ものの存在価値は美的本質によるものであって、他の要素はこれに比べては二次的なものと考えられます。柳宗悦「日本民藝館の使命」
日本民藝館 監修『日本民藝館手帖』
日本民藝館は、民芸運動の主唱者であった柳宗悦により、1936年(昭和11年)に駒場に創設された、日本各地の焼き物、染織、漆器、木竹工などを集めた美術館です。展示されている品々は、それまでの美術史が正当に評価してこなかった、無名の工人の作になる日用雑器、朝鮮王朝時代の美術工芸品、木喰の仏像などで、柳本人が日本各地を歩き回って蒐集したものです。

日本民藝館:http://www.mingeikan.or.jp/home.html
それではどんな美が最も正しい美であるか。
私達は健康な美、尋常な美の価値を重く見たいのであってかかる美が最も豊かに民藝品に示されていることを指摘したいのであります。柳宗悦「日本民藝館の使命」
日本民藝館 監修『日本民藝館手帖』
日本民藝館は、イギリスのアーツ・アンド・クラフツ運動などとも共鳴した柳らの民芸運動の拠点でした。
美術館らしからぬ温かみのある空間
行ってみて期待どおりでした。目地が漆喰で白く盛り上げられているのが特徴的な、大谷石の高い腰張のある白壁の本館。

なかにはいると、柳が徹底的にこだわったという玄関アプローチの意匠にまず驚かされます。
玄関アプローチは、柳が最も意を注いだ部分といえよう。ここでも床に大谷石が敷き詰められ、玄関から二階へと誘う左右に拡がる大階段は、各展示室の中心を担うものとして、どっしりとした存在感で来館者を迎える。日本民藝館 監修『日本民藝館手帖』
玄関で靴を脱いであがるのですが、床の大理石が足の裏に気持ちいいんですよね。スリッパをはかずにしばらく玄関をうろちょろとあやしい動きをしてしまいました。
それから大階段の手すりの丸みもまた手に心地良いんです。見た目にももちろんいいのですけど、とにかく触感がよいなと思える建物でした。まぁ、美術館なのであんまりあちこち触っちゃいけないんですけど。
また展示品を飾る木製の展示棚そのものがいいんですよ。
展示室にしつらえられた陳列棚類は、朝鮮風を加味した造りである。(中略)館内に置かれている椅子、テーブルなど家具調度類も、生活のなかで実際に使われていたものや柳考案の意匠によるもので、開館当時の面影をそのまま残している。日本民藝館 監修『日本民藝館手帖』
ここ最近、李朝家具がほしいなと思ってたところなので、展示室に置かれた「朝鮮風を加味した造り」の棚を見たり、椅子やテーブルに座ったり触ったりして余計にほしくなりました。
展示品だけじゃなく建物や調度品までよいなと感じる美術館はあまりないので、かなり満足しました。
今回、かつて柳宗悦の自邸だったという西館のほうは見られませんでしたが、公開している日もあるのでタイミングを見てまた来てみたいと思いました。


特別展 琉球の織物
いまは「特別展 琉球の織物」が開催されていて、藍、紅、黄色に染められた絣(注:「かすり」だよ。「餅(もち)」じゃないから)の織物のほか、沖縄の紅型染めや焼物なども展示されています。特別展 琉球の織物:http://www.mingeikan.or.jp/html/exhibitions-events-mingeikan.html
特別展は柳宋理さんが館長時代につくられた新館の大きな展示室に、色とりどりの織物がかけられていて圧巻でした。ひとつひとつ近づいてみるとこれがまた温かみがあっていいんですよね。思わず触れたくなりましたが、当然、「手を触れないでください」って書いてありました。
なんなんでしょうね。建物といい、この手に触れてみたくなる感じは。あんまり美術館に行ってそういう経験したことなかったんですけど。「美しい品物」って触れたくなるのかしら。
すでに亡くなられた金城次郎さんという沖縄本島の壷屋窯で焼き物を焼いていた陶芸家の作品も展示されていたんですが、これがまた柔らかな緑や茶の模様や魚やエビなどの図柄がはいった感じにとても惹かれました。
日本民藝館では、現在の民芸品を販売する売店が併設されているんですが、金城次郎さんの作品に影響されて沖縄のお皿と器を買ってしまいました。手に触れられるものが欲しくなったんですねw


(うーん、それにしても写真って自分が見ているとおりの色が出ませんね。この器の写真もこう見ると実物よりしょぼい)
沖縄の民芸は、日本本当のものとは違った色彩、温もりを感じさせるものでした。
この日本民藝館。かなり気に入ったので、また別の展示の機会に足を運んでみようと思いました。
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