おたがい手を取り合ってとはいわないまでも、他人といっしょにうまくやれるよう、たがいの役割に責任をもつと同時に、たがいの仕事や存在に敬意をはらうことは大切だと思います(cf.「サッカーチームに学ぶ5つのチームワークの鍵」「未来を切り開く力としてのチームワーク」)。
そういう協働作業をおこなうことで、そこにいない第3者の利益を生み出すことが本来、仕事ってもんじゃないかと思います。その対価に関しては、おまけのようなものじゃないでしょうか、本来は。経済システムは単なるおまけ。仕事にとってはね。おまけという言い方は正しくないので二次的なものといいかえておきましょう。
一方で仕事はworksだと思います。作品ですよ。自己満足のための作品じゃなく、第3者を喜ばせるためのね。でも、どんな作品をつくるにせよ、それであまりに「俺が俺が・・・」と主張しすぎるのはよくない気がします。世阿弥がいうように、そういう主張こそ「秘すれば花」です。
でも、企業の経営者が「俺が俺が・・・はよくない」というとき・・・
でもね、「俺が俺が・・・はよくない」と組織の経営者がいうとき、僕はちょっと矛盾を感じてしまうのです。もちろん、「俺が俺が・・・はよくない」という人ばかりだと、組織内の雰囲気は悪くなります。外部に対しても「俺が俺が・・・」という態度ではなく、どう相手と協働してよいものを生み出していけるかを模索していく必要がある。
それを考えて経営者が「俺が俺が・・・はよくない」と従業員に対していうのはある面では正しいことだし、それを言えない経営者に比べればそれをちゃんと伝えている経営者ははるかにまともです。
ただ、その一方で企業ほど、社会に対して「俺が俺が・・・」って言ってる存在はないんじゃないかとも思うんです。他人を押しのけて「俺が俺が・・・」と主張し、社会をよくすることより、何かを売りつけて対価を得ることのほうに躍起になってる印象はぬぐえません。
もちろん、個人とおなじで持続可能性のためには対価(売上)をあげていくことは必要だし、そんなものは否定する気はありません。ただし、先に書いたように対価は二次的なものです。対価なんだから、まず先に価値提供があってこそ、それに対する対価が得られます。その意味で二次的。
それよりもまずは社会に対して何を提供するの? 自分たちの働きで社会をどう変えていくつもりなの? ってのが先決でしょ。そういうのは大抵企業のミッションに書かれてるはず。
たとえば、「次のモノづくり」というエントリーでも紹介した「ルヴァン」という店で天然酵母をつかったパンづくりをしている甲田幹夫さんの話。
パンは手段であって、気持ちよさだとかやすらぎだとか、平和的なことを売っていく。売っていくというか、パンを通じていろんなつながりを持ちたいというのが、基本にあるのだと思います。
これがミッションです。
でも、たいていの企業はミッションをおなじように掲げていても、そのミッションを遂行するより売上、利益の追求になっちゃってる企業ってすくなくないんじゃないですか?(cf.「自分の暮らしに興味がないんだから、人の暮らしの提案なんか、そりゃできないよなという話」「イメージを形にする力」)
はて、ミッションはどこへ?
極端な話をすればミッションを達成するためならおなじようなミッションを持ってるはずの競合他社と協働してもいいはずなんです。でも、そんなことめったにしませんよね。しのぎを削って業界を活性化していきましょうって場合でも、ミッション遂行のためというより、それぞれの利益確保のためにそう動いてますよね。はてミッションはいったいどこへ?って思いますね。
繰り返しますが、それは企業だからある意味では仕方ないと思っています。なので、ここでの論点はそういう企業を動かしてる経営者が「俺が俺が・・・はよくない」といっても説得力ないってところ。
他人に対して言ってることと自分が進んでやってることのあいだに矛盾があれば、なかなか言われた方も「はい。そうですか」とはなりにくいでしょう。
先に引用した甲田さんの話にはこんな続きもあります。
ごく気軽に始めたんですが、この仕事はそれまでに経験した仕事に比べて、矛盾がなかったんです。小学校の先生をしたり、会社勤めをしたこともありますけど、働いているうちにどこかで矛盾が出てくるんです。僕が売っているものを飲み続けたら、カラダを悪くするだろうなあとか(笑)。
矛盾を抱えながらも「俺が俺が・・・はよくない」と言わなくてはいけないのだから、経営者って大変だなって思います。でも、その自己矛盾した状態をすこしでも解消すべく、企業が本来のミッションを遂行していくために、真剣に社会をどう変えていきたいか?ということを考えられる組織になればいいんじゃないかなと思います。
と、今日はちょっと他人事モードで書いてみました(本心は他人事とは思えないところもあるんだけど、表現としてね)。
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この記事へのコメント
bluse
この部分に神経質になるのはやはり日本人だからであろうか。
少なくとも主張がない人間との共同作業は難しいのではないかと思う。「塩梅」さえわきまえていれば―
tanahashi
だから、最初に「自己主張は必要」→だけど、同時に→「他人の主張もきく必要もある」という論旨ではじめてますが。
どこか、bluseさんの主張に新しい点はありますか?