HCDプロセスにおける上流工程と下流工程の溝

人間中心設計プロセスに欠けているのは具体的なモデリングの手法」でも書いたことですが、デザインプロセスのなかで、調査・分析が主体となる上流工程と視覚化・具体化が主体となる下流工程をうまいこと結びつける具体的で実践的な方法を提示していくことがいまの課題なのかなと思っています。

ユーザー調査などによる調査・分析からペルソナ/シナリオ法を使ったユーザーとモノとのインタラクションの可視化といったところから、よりモノのデザインに近づく視覚化・具体化への落とし込みといったあたりが、いままさに意外といろんな現場で問題になっているんだと思うんです。人間中心設計・ユーザー中心のデザインのプロセスを導入しようとしたのはいいのだけれど、そのあたりがどうもうまくいかない、どうしたらいかないというケースはあるんだろうなと

シナリオから要件に落とし込めなかったり、さらにいえば要件をプロトタイプを使って精査していく作業ができなかったり。そのあたりに具体的なプラクティスがないばかりに、調査・分析が主体となった上流工程と視覚化・具体化が主体となった下流工程に溝ができてしまっている。さらに具体的なプラクティスがないというところに加えて、職能の分業が調査・分析はわかるけど視覚化・具体化についてはわからない、また、その逆もという状況を生んでしまっている。こうなるとたちが悪くて、作業工程の溝に人間関係の溝が絡んできてしまいます。これはやっかい。特に組織が大きくなればなるほど。

上流工程と下流工程の溝を埋めるためにクリアすべき2つの課題

なので、デザインプロセスにおける上流工程と下流工程の溝を埋めるという問題解決には、2つクリアしなきゃいけないことがあるかな、と。

  • 1つは、モデリング技術(使うのはUMLでもなんでもいい)を使った要件定義とラピッドプロトタイピングの技術(ペーパープロトタイピングなど)をもうちょっと明確に使えるレベルにして、かつ両者を結びつける具体的な方法・プラクティスを確立すること
  • もう1つは人材の面で、調査・分析の専門家が視覚化・具体化などの狭義のデザイン・開発について理解を深めたり、その逆にデザイン・開発の専門家が調査・分析について同様に理解を深める、あるいは3つ目の選択肢として両方がわかる中間的な立ち位置の人材(つまりモデリング・プロトタイピングができる人)をつくるなどの人材の育成・教育を進めること

日本におけるHCD、UCDを意味あるものにしていくには、この2つの問題をクリアしていく必要がありそうだなと思っています。

どっちが先にクリアするほうがいいかというより、両方並行して進めていくべき課題だと思っていますが、てっとり早いのは、まず具体的な方法・プラクティスを確立するほうが、もう1つの人材育成を考える際にもやりやすいだろうとは思います。
具体的な方法・プラクティスに関しても完全になった状態で、育成をはじめるというよりもとっかりになる部分だけでもまずはできるといいでしょう。とっかかりがあれば方法・プラクティス自体をプロトタイピング的に評価してブラッシュアップしていくことができますから。

モデリング技術とプロトタイピング技術

で、具体的な方法・プラクティスを確立のほうですけど、

  • モデリング技術に関しては、UMLを情報デザイン・UIデザインに関係者が使うことを想定した説明書や教科書などをつくり、ビジネスモデリングではなく、より一般的な消費者向けプロダクトへの応用をしやすくすること
  • プロトタイピング技術に関しては、ラピッドプロトタイピングの意味-ユーザー調査の状況とペルソナ/シナリオで新しいもの=インタラクションを想定した状況では、すでにユーザーの利用状況に変化があるため仮説検証の場が必要-を実践的に理解してもらうためにも、ペーパープロトタイピングの方法をもう一度見直す必要があるということ

という具体的なレベルの活動・アウトプットが必要になってきているように感じます。
このへんの技術を確立・普及していかないと、事実を知る技術と具体的なものの形を考える技術がつながらなくて、非常にもったいなくもどかしい状況が続くと思うんです。

HCDプロセスとワークスタイルの見直し

それに加えてもう1つ、人材の溝を埋める意味においても、


も実践レベルでは必要なのではないか、と。
それには組織レベルでの権限の委譲や評価基準の見直し・確立なんかも同時に進める必要があるのでしょうけど、結局、こうしたことで得られるメリットとしては、よく言われるような製品の利用品質があがることや生活視点からみてイノベーティブなものが生み出せたりするほか、デザインプロセスそのもののスピードアップとコスト削減も可能になるのかなと予測しています。

と、そんなことも考えつつ、まずはUMLの勉強をしてモデリング技術を一般プロダクト向けに利用可能な状態にできないかと思っています。ユーザー調査~ペルソナ/シナリオ~UMLを使ったモデリング&ペーパープロトタイピングという流れをつくれればよいかな、と。

このあたりクリアするには面白い課題だと思うんですけど、いっしょに取り組んでくれる人いたら、もっと面白くできるような気もしています。昨日書いたこの話(ライフスタイルの提案力をなくしたデザイン)も含めて、微力ながら一歩ずつでも進めていけたらなと思うわけですよ。

我こそはと思う人、ご連絡ください。
なにかいっしょにできる方法を模索していけると幸いです。

※あと活動を支援してくれるスポンサーなんかもいてくださるといいかも。これは欲張りすぎかぁ。

  

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