- まずは目の前の状況を整理する
- 自分の立場を考える
- 関係者が誰なのかを把握する
- 目の前には見えていない情報を集める
- 集めた情報を整理して、何が根本的な問題であり、それに紐づくサブ的問題にはどんなものがあるかを階層化して、問題の構造をみえるようにする
- しかるべき判断あるいは問題解決のプラン作成を行う
- 判断もしくはプランを実行する
- 問題が解決されたか、あるいは解決されそうかを確認する
- ダメならどこに障害が残っているのかを確認し、プランを修正しそれを実行する
勘がいい人ならこのリストを見て気づいたかもしれませんが、ようするに、何をやればいいといっているかといえば、"情報デザインをすればいい"といっています。
問題の発見~解決なんですから、それはデザインであり、日々の仕事のなかで判断が必要とされるような問題であれば、その問題を明確にし解決するための一連の作業は情報デザインと呼んでいいのではないかと思います。
つまり、日常における複雑な判断というのは基本的には、情報デザインの方法が身についていればそれほど苦労せずにできるはずだと思います(その意味で、情報デザインは誰もが身につけておいてよいスキルだと思いますが、それはまた別の機会に)。
1.まずは目の前の状況を整理する
問題の解決はみなさん、わりと得意なんですけど、とにかく多くの人が問題を発見したり、目の前の問題を整理することが苦手です。よく書いているように、デザインを行う-つまり問題を発見し解決する-ためには、何がわかっていないかを自分で理解することが大事なんですけど、それがうまくできないんですね。
調査という現状把握のためのデータ集めが苦手だし、集めたデータを整理して構造化するという分析作業が苦手です。だから、判断することができないし、企画がたてられない。
うーん、と唸ってても解決策は見つからないんですよ。だって、まだ解決すべき問題が明確に整理できていないんですから。腕組みしてうんうん唸ってても仕方ないので、まずは見えている部分をリストアップしてみることです。紙に箇条書きにして、関係ありそうなもの同士を矢印で結んでみたりするんです(もちろん、紙じゃなくてもいい)。そうすれば、逆に何がわかっていないかが見えてくる。そういう具体的な作業をやらずに頭のなかだけで考えようとするからダメなんですね。
2.自分の立場を考える
同時に考えるべきは、自分はその問題に対して、どんな立場にあるかです。これはもともとの役職との関係で考えるべきだし、問題の内容とてらしあわせて考えるべきです。自分が積極的に問題発見~解決に取り組むべき問題か、それとも、自分以外の適切な人間にその役割に担ってもらえるようサポートするべき立場なのか、です。
自分でも他人でも、問題解決をリードすべき人間が決まれば、その人を主語にした問題解決の方法を考えられるようになります。誰が、という主語がないとなかなか問題って具体的に考えることができないはずです。だからこそ、情報デザインなんです。
3.関係者が誰なのかを把握する
もうひとつ最初にやるべきことは、直接的な対象者、間接的な利害関係者が誰かを明確にすることです。先に主語が決まったんだとしたら、ここでは目的語を決めることになります。
あるいは、問題そのものを明示するためには、ここでの関係者自身を主語として描く問題もあるはずです。
- その問題で困っているのは誰か
- 誰が問題に対してどのような見方をしているか
- 誰が問題をどのように解決しようとしているか
- 問題の解決をしないと困るのは誰か
- 問題はいま登場していない人物、あるいは、組織にどのような影響を及ぼすか
といったところでしょうか。
4.目の前には見えていない情報を集める
たぶん、ここまで考えれば、ある程度、わからないことリストがたまっているはずです。わからないことがほかのわかっていることとどのような関係にあり、それがわからないと問題を解くのにどのような影響があるかもなんとなくイメージできているはずです。そう。ここでようやく本来的な意味での調査の段階です。つまり、調査をはじめるにあたっては以下の情報が必要なのです。
- わからないことが何かリスト化されている
- わからないことは問題全体においてどのような意味をもっていると考えられるか
- 調査で知りたいことがわからなかった場合、どのような影響があるのか
- 問題の対象者となっているのは誰か
- 誰が問題発見~問題解決を行うのか、つまり、誰が調査の必要性をもっているのか
わかります? 調査ってこういうことです。問題を明確にし、それを解くためのヒントを得るためのものです。
問題の輪郭や核心部分がなんとなくでもみえているか、仮説をもった状態じゃなきゃ、調査なんてできないわけです。
あっ、調査といっても、かならずしも大規模に、お金をかけてやることばかりが調査じゃないですよ。まわりの人に聞いたり、Webで必要な情報を集めるのだって立派な調査です。
問題の規模とその解決までの期間などを考慮して、適切な規模の調査をすればいいんです。
5.集めた情報を整理して、何が根本的な問題であり、それに紐づくサブ的問題にはどんなものがあるかを階層化して、問題の構造をみえるようにする
調査が終わったら、まあ、だいたい必要な情報は集まったはずです。いや、たとえ、ほしいと思っていた情報が集まらなくても、まずはここで分析を行うべきです。すべての情報が集まるなんてことはないし、すべての情報が集まらなきゃ判断できないなんて、ただのヘタレです。
手持ちの情報で判断するしかないときもあると覚悟すべきです。
そして、ここでは手持ちの情報を整理してみるんです。情報同士の関係性を整理し、階層化してみるのです。
- 階層化した問題はどのような問題なのか
- どの問題をどのように解けば、問題の全体はどうなるのか。
- どの問題とどの問題が矛盾しあう関係になっているか
- 全体の問題解決のためにキーとなる問題は何か
- 解決のむずかしい問題はどれで、それが解決できない場合の影響度はどれくらいか
このように問題の全体像と構造がみえてくると、もうほとんど判断や問題解決のプランは見えてきているのではないでしょうか。
6.しかるべき判断あるいは問題解決のプラン作成を行う
問題の構造がみえれば、ほとんどの場合、その時点で判断できますし、プランもみえているはずです。よほど優柔不断だったり、問題の構造が複雑すぎたりしない限りは、すぐに見えている解決策を実行すればいいと思います。
ただ、解決策は見えても、その解決策を実行に移すためのスキルや知識が必要な場合もあるでしょう。その場合は、それに必要な技術の調査や技術をもった人のアサインなんかが必要になるかもしれません。
それとも、まだ迷いますか?
7.判断もしくはプランを実行する
とはいえ、ここまできたら実行あるのみです。いや、もちろん「判断」のなかには、対象の問題に対しては「何もしない」という判断もあるでしょう。
その場合でも判断どおりに「何もしない」ということを実行することになります。
実行しなさいw
8.問題が解決されたか、あるいは解決されそうかを確認する
実行しないとわからないこともあります。よく問題の定義や調査・分析が苦手な人がおなじことをいう場合がありますが、それとはまったく意味が違います。その人たちの場合は、実行しなくてもわかることまで「実行しないとわからないこと」に含んでしまっています。ただ、怠惰で、勉強不足なだけですね。
そうではなく、本当に「実行しないとわからないこと」はあります。
これが最後に残った「わからないことリスト」です。
そして、その場合、実行は問題解決であると同時に、仮説検証のための調査の意味合いももちます。
実行しながらうまくいっているかどうか(仮説どおりに問題が解決されそうか)を検証したり、実行時間が短いものならば実行後すぐに検証したりすることが必要でしょう。
9.ダメならどこに障害が残っているのかを確認し、プランを修正しそれを実行する
で、ダメならどこがダメかわかるはずです。だって、仮説があるはずですから。その仮説とのギャップをはかればいいんです。ここでそれができないのは、わかることまで「実行しないとわからないこと」に入れてしまってる例の怠惰な連中がほとんどじゃないでしょうか。
もちろん、なかには「実行してなおわからない」こともありますが、そんな問題に手をつけること自体がまれだと思います。
で、ダメなポイントがどこで、それがどうダメだったかわかれば、プランを修正してもう一度やり直せばいいんです。
あとはまぁ、その繰り返しですよ。
判断は情報デザインの一種
さて、どうでしょう?これで目の前にあるよくわからない問題をどうすればいいか、なんとなくはイメージできましたでしょうか。
ブルーノ・ムナーリがいっているように、<企画するのは、そのやり方を知っていれば簡単>です。
企画するのは、そのやり方を知っていれば簡単なことである。
問題の解決に至るための方法を知っていれば、どんなことも容易となる。生活のなかで出くわす問題にはきりがない。解決の方法を知らないために難しくみえる単純な問題もあれば、解決不能と思われる問題もある。
判断や企画というのが情報デザインの一種だと理解していれば、本当は判断に困ることなどないはずです。
方法を知りながら困るとすれば、あとは優柔不断さや怠惰さなどの気持ちの問題です。
まぁ、そればっかりはこのブログで処方箋を出すことはできませんね。
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