ユーザー中心のデザインは「みんなで手を動かしながら考え」なきゃ進まない

人びとの生活をより豊かなものにするために、ユーザーの行動やそれにともなう経験にフォーカスして一連の作業を行う、ユーザー中心のデザインでは、これまでのモノを中心に考えるデザインや、モノをつくることそのものを重視した制作の考え方とはまったく異なる方法論、作業へのアプローチが必要なんだなと、最近あらためて感じています。

「創造的な仕事」に求められる7つの作法」で、以下の7つの項目を、「創造的な仕事」に求められる作法として提示しましたが、この作法はそのままユーザー中心のデザインを行うデザインチームのメンバー全員が身につけておくべき作法なのだといえると思います。

  1. ひとりで考えない
  2. 手を動かしアウトプットする
  3. 議事録を書く
  4. 計画を立てて行動する
  5. リズムをつくる=習慣化する
  6. 本を読む
  7. 何度も検証しコンセプトを壊す

特に「ひとりで考えない」こと、「手を動かしアウトプットする」ことの重要なこと。そのことがユーザー中心のデザインを知れば知るほど骨身にしみてわかってきます。

みんなで手を動かしながら考える

ユーザー中心のデザインの進め方の基本は、「みんなで手を動かしながら考える」ことができる場をどのように演出し、そのためのタイムマネジメントをいかにうまく行えるかということだと思います。

そのための「計画を立てて行動する」ですし「リズムをつくる=習慣化する」です。
また、メンバーが呼吸をあわせて、おなじものを見ながら作業ができるように「議事録を書く」スキルをみんながもっていて、ワークショップの際には、ひとりが記録係を担当し、大きなモニターやプロジェクターに映してみんなに見える形で議事録を書くのも大切です。

何より「みんなで手を動かしながら考える」ためには、ワークショップを行う際には、参加者ひとりひとりに作業分担を行っておくことです。議事録を書く記録係、場をモデレートする司会者、具体的にその場で作業を行う人、行った作業にヌケ・モレがないかをチェックする人、など。アジェンダを用意するのではなく、場の目的とそれぞれの役割分担と責任を決めることが重要です。

  • ユーザー行動調査の結果をもとに、ワークモデル分析を行うためのセッションで。
  • ワークモデル分析後の構造化されたユーザー行動データを元に、KJ法をつかってユーザー情報を統合する作業を行う際に。
  • KJ法から得られたペルソナの骨格を具体的なユーザー像がイメージできるペルソナに仕上げるときにも。
  • できたペルソナとモノとのシーンごとのインタラクションをシナリオやプロトタイプでデザインするときに。

すべてのデザイン作業は、メンバーによる協働作業で進めていかないと、ユーザーの行動やそれにともなう経験といった目に見えないあいまいなもの、さらにそれでいて複雑に絡みあった構造を有しているやっかいなもののデザインを進めていくことはできないのではないか、と。

ひとりひとりの変革、組織の変革

それにはこれまでの仕事の進め方、仕事に対する取り組む姿勢を、まっさらなところから見直すくらいの覚悟が必要なのではないかと思い始めています。これはとてつもなく大変なことですが、進めていかなきゃいけないと思います。

ひとりひとりの意識改革、組織の仕事に対する考え方、それにともなう組織デザイン、あるいは、仕事の物理的環境やシステムの変更など。変えていかなくてはいけない面が多々あります。
そして、さらには社会全体のデザインに対するイメージ、そして、デザインと人びとの生活との関係についても、変革が必要なんだろうな、と。

ちょっと考えただけでも大変さがわかります。
でも、これはなかなか楽しそうな大変さだな、と。
やっぱり自分たちの仕事は自分たちでつくっていかないと、ね。

   

関連エントリー

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック