ホームページを作る人のネタ帳さんでは、職種に対して職能を分解しているが、全部できる人なんていないから。
ただWeb屋が他のIT職種の中でも広範囲なスキルを求められるのは事実だ。
Web屋が他より広範囲なスキルを求められるなんてウソでしょ。
それって単にWebに閉じた人たちの妄想なんじゃないでしょうかって僕は思います。
他の分野のこと想像して言ってる?
確かに、Webをつくるのにどんだけの作業が必要かを想像しない人に、作業量と見合わない予算と期間を提示されて「これでやってよ」っていわれることは多いはずだし、仕事のプロセスや職能の分化がきちんと行われていない業界だから、ひとりに求められるスキルの量が多いって感じられることはあると思います。だからって、Web屋の仕事に求められるスキルがほかより多いかどうかってのはあやしいんじゃないでしょうか?
それって単に隣の芝生が青く見えてるだけだったりするし、そもそも何をもって「求められるスキルの量が多い」かといってる根拠にはだいぶあやしいところがあると思っています。
そのあたりをツラツラと。
まず、ちょっと想像してみたって、車や家をつくるのにくらべれば、Webをつくるのに必要なスキルなんてたかがしれてるんじゃないかって思います。だって、量を別にすれば、がんばればなんとか1人でできちゃうってこともあるんじゃないでしょうか、Webの場合。
いや、車や家なんかを持ち出すまでもなく、「他のIT職種」と比較しても実は特別に多いなんてことはないだろうって直感的に思います。業務システムなんかを開発してる人が業務を理解するためのスキルってかなり幅広くないといけないと感じますしね。
車や家づくりに関わる仕事だって最初はいまのような明確分業はできていなかったはず。それこそ最初は車や家づくりでも「がんばればなんとか1人でできちゃう」って時代があったはずです。そこにはWeb業界との歴史の厚さの差があり、その歴史をWeb業界にいる人たちが自分たちでつくていかなくてはいけないんだと思います。
自分たちが何つくってるのかを考える
そういう他の分野のことを考えずに、Web屋が自分たちに必要なスキルは他より多いと思ってるんだとしたら、それは作業量と見合わない予算と期間を提示して「これでやってよ」っていってる人たちとおなじです。しかも、そうなっちゃう原因はきちんと職能分化や作業プロセスの定義ができていない自分たちの業界にもあるんだし。それにWebなんて若い業界は他の業界に学ぶことは多いはずだし、そのあたりはちゃんと視野にいれてみたほうがいいはずです。建築施工現場のプロジェクト管理なんて、話を聞くとスゲーって感動しますしね。というかね、Web屋さんって「自分たちが何つくってるのか」ってもっとちゃんと考える時期なんじゃないのかな? って最近すごく考えるんです。
コーポレートサイトつくってますとか、 ECサイトつくってますとかじゃ、実はなんだからわからない。それって本みたいな読みものなの、雑誌みたいにペラペラめくってひまつぶすものなの、それともほかの何か何かの道具なのという意味で。それ使って何の意味があるの?ってところがまだあいまいなところがある。ベネフィットとウォンツの関係がもやーっとしてる場合が多いと感じます。
そういう意味でWebに関わる人たちも、そろそろ自分たちが何をつくっているのかをもうちょっと別のレベルで整理してみたほうがいい時期なんじゃないでしょうかって思うんです。
いや、他人事じゃなくてですけど。
何つくってるのかわからないのに「求められるスキル」ってどうなんでしょう?
そのあたりが「求められるスキル」云々の話とも関連して混乱をもたらしているのだと思います。コーポレートサイトとか、プロモーションサイトとかって括りで、自分たちが何をつくっているかを理解してるつもりだったらどうかしてるんですよ。じゃあ、そのコーポレートサイトって何よ? プロモーションサイトって? って聞かれたらなんて答えますか。そもそもWebサイトって何よ?って聞かれたどうします。
それは思考のための道具なの? 人を賢くする道具なの? それとも、もっと他のなにか?
自分たちが何をつくっているのかもまともに答えられないし、かつ、その答えを真剣に探そうともしていないで、「求められるスキルが多い」なんて言ったってリアリティがありません。
「求められる」っていったい何に求められてるの? 何を行うかが定義できていないのに「求められる」も何もないでしょう。
「今日は夜カレーだから買い物してきて」といわれれば材料を買ってくることは簡単ですが「晩御飯つくるから買い物してきて」だと困ってしまいます。「何をつくるのか」「何をする仕事なのか」を定義しないと必要なスキルはどれか?という話もどうプロセスを設計しどう分業するかという話は堂々巡りしてしまいます。
その方向で考えていっても何が必要かということの答えなど見つかりません。だって、問題のほうがきちんと定義されてないんですから。
もっとリアリティを
それって車をつくってる人たちが、自分たちは機械をつくってる、機械をつくるのに必要なスキルはなんて言ってるのと同じレベルでしょ。もちろん、そんなおしゃべりにはリアリティはなくて、実際にそんな会話は成立していないはずです。にもかかわらず、Webではそれが当たり前に起きてしまっている。Webをつくるのにどんだけの作業が必要かを想像しない人が無理を言われてるかもしれませんが、その無理を聞いてるほうも自分たちが実際に何をつくるために作業をしているのかわかっていないんじゃないかと思うし、それがそもそもの問題ではないかと感じます。Webって何なのか? 自分たちは何をつくっているのか? つくるのか? という根本的なところから考えていかない限り、本当に「求められるスキル」とは何かも定義できないし、職能の分化もプロセスの設計も進まないんじゃないでしょうか?
とにかく、いまのWeb業界にはその意味でのリアリティが欠けているんだと思います。
自分たちが何をつくり、そのためにはどんな仕事の仕方をし、どんなことを考えていかなくてはいけないのかというリアリティが。
問題を定義するほうのリアリティが欠け、それに手をつけようとしない一方で、解決策であるスキルや技術はどんどん増えてしまっています。その問題の側と解決の側のアンバランスがどうもよろしくない状態をつくってしまっているんじゃないか、と。
本来を考えることが現状を打破する
ここはそろそろ問題の側にも手をつけていかないといけないんだろうなと思います。そのあたりをきちんと言葉や現実のビジネスの成果として立ち上げていかなければ、仕事もそれに携わってくれる人材も今後増えてはいかないでしょう。現在だとか内側にこもった議論も時には必要ですけど、本来的だったり外側に向けた議論も同時にしていかないと仕事も将来の人材も確保できませんから。結局はそれが自分たちの立ち位置をよりつらくしてしまいかねませんしね。
特にこういう議論が成り立つくらいまでには業界自体が成長してきたということでもあるのですから、ここは踏ん張ってもう1歩先に踏み出すための議論も大事ではないか、と。その先のヴィジョンこそが現状を打開する道筋をつけてくれるんだろうと思いますし。
いずれにしても現在いる人が先に来るかもしれない人たちに対して、その先を見せてあげよう、その先をつくっていこうという意志もなく、ただ近視眼的に自分たちの現状を嘆いているだけでは道はそこで閉ざされてしまうんじゃないか、と。
まぁ、それでも普段、ブラウザでよく見ているなんだかわからないものがWebっていうくらいのリアリティはできてきた感じはするので、それほど悲観する話ではないですけど、今後を考えると早めに手をうっておいたほうがいいのは間違いないんでしょうね。
P.S.
なんだかこのエントリーの説明の仕方だと誤解される方もいらっしゃるようなので、もうすこし僕の意図を明確にした「Web業界の人だからこそ、Web屋はこれから何つくるんですか?と言っています」というエントリーを書きました。何言ってるかわからんと感じた方はあわせて読んでいただけると幸いです。
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この記事へのコメント
ふぃん
確かに今の世の中、特に日本では技術偏重ではあると私も感じてます。java、SAPなどなど。javaができるのにオブジェクト指向を知らないエンジニアがいかに多いか。
本来、オブジェクト指向を理解すればするほど、javaを使いたくなくなるものです。それにイベントドリブンなオブジェクト指向は単なる開発の領域にかかわらず、プロジェクト運営(人材の管理とか)にも活かせるすばらしい考えだと思うんですけどね。私はそうしています。
日本では、webを含めたシステムがなんか特別なものだと思われているのかもしれないですね、あくまで仮定ですけどね。ただ、受注開発文化なのは確かですから。
ただのツールだと思ってくれる人は、経営者かマーケッターくらいかなって思うこともあります。ただ最近、少しずつ変わってきてるかなとも感じていますけど。
temperantia
これは比較する「他」にもよりますけど、少なくとも、Web制作のことを中途半端に理解している人達が思っている以上に、いろいろなことが求められるのは事実だと思いますよ。1人でやるとするなら。
例えば、ソフトウェアプログラミングというのは、それだけで一つの職種として成立していますが、Webではオンラインツールとして、それに近いようなことを求められる案件も存在します。
例えば、コーポレートサイトというと、印刷された会社案内をオンライン化して、より多くの人々に自分の会社の存在や考え方をアピールするのに使用されますが、この「印刷された会社案内」の制作というのは当然、DTPのデザインという一つの職種として存在していたものです。
例えば、写真が必要であれば撮影する事も求められる。これは当然、本来はフォトグラファーの仕事ですが、いろいろな都合によりWeb制作者が撮らざるを得ないことがある。そして、撮った写真を「商品」にするためにレタッチが必要となる。これは本来、レタッチ屋の仕事です。
その他にも、BGMや効果音を作ったり、ムービー編集を求められたり、コピーを書く必要があったり、本来それぞれに専門家がいるような作業を、Webサイトひとつ仕上げる為に必要となる。
つまり、Webというもののポテンシャルが異常に高い為、様々な用途にどんどん利用される事で、そのポテンシャルが影響する幅の増幅に合わせて、Web制作者に求められることがどんどん膨らんでしまっている事実があると思います。
これらを全てを出来る人はいないでしょうから、今後はもっと分業化が進むでしょう。
分業化が進むという事は「広範囲なスキル」が求められている証だと思います。
そもそも「Webサイトって何なの?」っていう質問自体、Web制作者の思考レベルに追いついていないクエスチョンだと思いますよ。もう、そんな時期はとっくに過ぎています。
hiroki
Web制作者の思考レベルに追いつく必要なんてないでしょう。
「Webサイトって何なの?」という問いは利用者の思考レベル追いつくためのものですから。
その発想自体を「閉じてる」と表現しているつもりですが、伝わってなかったらごめんなさい。
ken
残念ながらこれがWEB屋の考えですよ。というか営業文句のひとつ。僕も元々WEB屋なので、確かに一人でこなすことを考えると、習得しなければいけない知識や行わなければいけない作業はたくさんあると思います。
でもそれらはあくまでサービスの一つであって、業務として明確な線引きがされていないだけです。明確な線引きができない→一つ一つのサービスが確立されていない→業界自体の定義さえ、まだあいまいな状態。
分担作業が確立されている業界と比べて云々言うのは違うきがするなぁ。
WEBに関連する人
hiroki
ご指摘感謝します。
tripleclown
私もWEBデザイナーという人種?が、
あまりスキな方ではないので。
ただし、こういった内容を書くのなら、
サイト名などは伏せて書いたらどうでしょうか。
なにかを読んで、賛同したり、批判したりするのは自由です。
でも、特定の誰かを不愉快にさせる記事や内容になるのなら、
まず自分からマナーを守っていくのがスジだと思いますよ。
せっかく良い内容でも、説得力が消えてしまいますからね。
hiroki
特定の誰かについて書いているつもりはまったくありませんでしたが、引用中にあるサイト名をそのまま出してしまったことで不愉快な思いをさせる結果になったようです。
その点、配慮が欠けていました。
ご指摘ありがとうございます。
sledr
通りすがり
「デザイン」に対価を払ってもらってるのか
「制作品」に対価を払ってもらってるのか
ハッキリしてないってだけの事ではないでしょうかね。
「ウェブ」デザイナ なんてものはそもそも存在してないんです。
sada
ただWebプログラマの場合、ある程度の高スキル者は一人で仕事を完結できてしまう事も事実です。
それはWebという特質というかITという特質を十分に生かせる職種であるからだと私は思います。