そこで「頭の中にあることを瞬間的に出せる訓練をしないとコンセプトもへったくれもない」から「普通にできることのレベルをあげるための練習」にいたる一連のエントリーに「同感!」というコメントをいただいているのですが、僕が興味をもったのは、実はそこで引用されている「手を動かす前に、考えろ」っていうエントリーの内容。
さらには、いきなり手を動かすのは最悪だ。
デザイナなら、いきなりIllustratorをいじりだす。プランナなら、いきなりPowerPointをいじりだす。プログラマなら、いきなりプログラムを書き始める。いずれも最悪だ。
これは一見、僕がここまで書いてきたことと矛盾するようにも見えますが、実はここで書かれていることは僕の考えとまったく矛盾しません。
「「考える」方法を学ぶ」や「普通にできることのレベルをあげるための練習」で書いたとおり、僕がいう「アウトプット」は最終形のアウトプットではなく、自身の思考ツールとして役立てるためのアウトプット、落書きのようなものです。もやもや頭のなかだけで考えてるなら、思いついた単語を紙に書き出したり、イメージの断片を描いたり、楽器で音を出してみるとかそういうものです。
ZEROBASE BLOGさんも「一見、逆のこと(矛盾)を書いていますが、なにごともバランスが大事ってことで」と書いていますが、まさにそのとおりで別に逆のことではないと思います。
それにね、方法なんていくつもあってもいいのだし、組み合わせてもいい。いや、1つのやり方に固執してそれで「スピードがでない」だとか「できない」だとかとのたまわって、自己弁護するよりよっぽど積極的に他人のやり方を試してみるくらいがちょうどいいわけです。
その手の自己弁護には「できない言い訳はいいから、進めるべきところを進めてよ」って思います。やる前から「できない」って言ったり、他人の意見を自分と違うからという理由だけではねつけるよりは、いろんなやり方を試してみればいいじゃんって思います。だって、固執するのは損だと思うから。
いろいろ「考える」テーマはある
で、僕が「そうそう」って思ったのは以下の文章。考えることが難しい、つらい、苦しい、と言っている人の多くは、まず目標(GOAL)を明確にしないで考えていることが多い。
私に言わせると、なぜそんなことが可能なのか分からない。不可能に決まっている。論理的に言って。
「何を考えるべきか」を明確にせずに考える、というのは、明らかに矛盾している。
それって、一体、何について考えているんだ?
どんなに深く考えているつもりでも、考える方向性が間違っていれば意味がない。
まったくおっしゃるとおり。もう何度も書いてますが、「考える」ってのは何もいきなり答えを出す作業を指す言葉じゃないわけです。
企画設計=デザインには学べば覚えられるやり方があるなんてエントリーも書いていますが、「考える」は僕にとって、デザインという言葉や企画設計という言葉とそんなに違いはありません。
「問題は何か」を考えることもあれば、「問題をどう解決するか」を考えることもあるし、「解決案を具体的にどう実現するか」と考える場合もあるでしょう。どの「考える」ももやもやしたところから何かを創造的に生み出す必要があるし、それぞれに中間段階のアウトプットと最終的なアウトプットというものがあってよいでしょう。
「考える」プロセスを考える
実は日常的には意外とざっくり「考える」と一言で括ってしまっている行為にだって、本当はきちんと整理してみれば、いろんなテーマの「考える」があると思うんです。それを一言で「考える」と言ってしまって納得していること自体に問題があるのかもしれません。ようするにね、本当はきちんと整理すれば「考える」って行為にもやっぱり学べば覚えられるやり方があると思うんです。それに大事なことは「考える」テーマなんていくつもあるってことを忘れないことじゃないかな。最終形だけがテーマじゃなくて、むしろ、「考える」やり方にはプロセスがあって、そのプロセスの段階ごとに「考える」べきテーマがあるのだということを忘れてはいけないと思います。
問題は何かを「考える」ことと、どう解決するかを「考える」こと
僕がシリーズ化して書いている途中の「デザインの方法:ブルーノ・ムナーリの12のプロセスの考察」というエントリー群に則していうならデザイン・計画を行うプロセスには12もの「考える」テーマがあるわけです。上の引用中の「何を考えるべきか」を明確にするっていうのは、12のプロセスでいえば「問題の定義」や「問題の構成要素の明示」の段階といってもいいでしょう。
問題を捉えたなら一般的にはコンセプトを決めたりする段階がある。12のプロセスでいえば「創造力」の部分にあたるでしょうか。「問題の定義」から「創造力」までを含めて、構想の段階といってもよいかもしれません。そして、このそれぞれの段階に「考える」があり、当然、それぞれの段階で「考える」べきテーマは異なります。構想している段階だけを「考える」だなんて思ってたら大間違いです。
すくなくとも、問題は何かを「考える」ことと、どう解決するかを「考える」こととは分けて捉えておいたほうがよいかなと思います。
そして、その両方に僕のいう「アウトプット」を行いながら「考える」ということは可能だし、その方法は馴れると効率化につながるはずだと僕は思っています。
うまく「考える」ために必要な4つの要素
もしかすると「考える」のが苦手な人は、「考える」やり方を知らないためにそのプロセスを1つ1つ順を追って、「考える」ための素材を集め、それを整理することで、構想を練り、そこから次のプロセスへ移るための解決を見出すという基本的な流れをごちゃまぜにしてしまっているために、うまく考えられないってこともあるのかなと思います。そういう意味では、うまく「考える」ために必要な要素を挙げるとしたらこんな感じになるでしょうか。
- 素材(語彙、蓄積された身体能力、経験)
- 考える方法とそのプロセス
- 好奇心あるいは聞く耳
最後の「好奇心あるいは聞く耳」は、素材集めにもとうぜん役立ちますし、他人の話に耳を傾け自分の思い込みを壊すという意味で「考える」ことには欠かせないはずです。
あと、このリストにもう1つ追加するなら、
- 意欲あるいは魂
ですかね。
あっ、最後のこれが一番大事かもね。
関連エントリー
- 頭の中にあることを瞬間的に出せる訓練をしないとコンセプトもへったくれもない
- 語彙が少ないと仕事の能率もわるい?
- 好奇心とは独創的な問いを発見する情熱である
- ボキャブラリが少なければ他にどんなすごい技術を身につけても仕事はできないのかもしれない
- Fw:本当に考えたの?(それは「考えた」と言わない。)
- 仕事のOS:語学力は反復とか記憶以前に感受性
- 「考える」方法を学ぶ
- 普通にできることのレベルをあげるための練習
- 企画設計=デザインには学べば覚えられるやり方がある
- デザインの方法:ブルーノ・ムナーリの12のプロセスの考察(a.概要)
- モノからモノが生まれる/ブルーノ・ムナーリ
- ファンタジア/ブルーノ・ムナーリ
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