これは面白い。面白いし、自分でもすごく腑に落ちることがズバズバっと話されていて気持ちがいいんです。
例えば、最近書いた「速度を速めるとゆっくりできる」をはじめ、常々このブログではアウトプットの速さ、アウトプットを恐れないようにということを書いてきましたが、原さんが高円寺のクロッキー教室に通って、裸の女の人を描いていた体験からのこんな話は僕がいつも書いていることにぴったりと符合します。
何が面白かったかというと、「ドローイング」ということの意味がわかった。要するに、頭の中にあるイメージを外に出す、感じたことを外に出すということを、抵抗なくスムーズにできるのがドローイングでありスケッチなんです。「自分でしでかしてしまうこと」に対して、平気になれること。クロッキーをやっていると、いちいち恥ずかしいなんて思っていられない。とにかく頭の中にあることや見たことを瞬間的に外に出してしまうことが大事なんです。原研哉/阿部雅世『なぜデザインなのか。』
原さんは「ドローイングというのは、イメージを頭の内と外で自在に融通させるトレーニング」であるとも言っていて、
これをやらないと、もうコンセプトもへったくれもないんです。原研哉/阿部雅世『なぜデザインなのか。』
と言い切ってるところが痛快です。
殻に閉じこもって内側にイメージをずーっと溜めている、それが普通の人
原さんがクロッキーの訓練をはじめたのは美大を卒業して会社に入って働き始めてから数年経った20代後半だったそうです。もちろん、美大でデッサンの訓練は積んでいて「フォルムを見る目の訓練」「ちゃんと精密にものを見て、再現する技術」はそこそこにあったと言っています。それでも「それだけじゃアイディアをぱっと表出できない」と原さんは言います。
心の内と外側の世界は、案外簡単には行き来できないんです。殻に閉じこもって、自分の内側にイメージというものをずーっと溜めている、それが普通の人なんです。原研哉/阿部雅世『なぜデザインなのか。』
対談者の阿部さんはこの話を聞いて「技術だけではなく、外に出せないと意味がないと」と応じていますが、まさに「外に出せないと意味がない」と思います。それもスピーディーに出せないといけない瞬間が仕事をしていればいくらでもあります。
他人と話をしているときに自分の考えをぱっと言葉でも絵でも示すことができなければ、どんなに素晴らしいことを考えていても伝わりません。僕も実際、仕事をしていて他人が自分の考えをうまくぱっと表出できない場面に出くわしていらっとさせられることがよくあります。
そういうのって本当に訓練を重ねない限り、なおらないと思うんですよね。
心の内と外側の世界は簡単には行き来できるようにするためには訓練が必要
心の内と外側の世界は簡単には行き来できない。それが普通の人だから。だとすれば、普通でない状態、簡単には行き来できない「心の内と外側の世界」を瞬間的につなげられる回路をもった状態にするには、なにがしかの訓練によってそれを身体に叩き込むしかありません。
それができるようになるためには原さんのクロッキーの訓練のように、「自分でしでかしてしまうこと」に対して平気になれる訓練が必要だということには僕も強く同意します。
アウトプットの速さを阻害する恐れや恥ずかしさを克服するためには、恥ずかしいなどと言ってられない状況に自分を置くことで「とにかく頭の中にあることや見たことを瞬間的に外に出してしまう」ことを繰り返し自分の身体を慣れさせることが必要なんだと思います。
そして、原さんがいうように、この訓練をやらないと「コンセプトもへったくれもないんです」。
またしても、繰り返しましょう。
間違えを恐れるあまり思考のアウトプット速度を遅くしていませんか?
ときには、「自分でしでかしてしまうこと」に対して平気になれるスピード感も大事ですよ。
もちろん、それは自分の発言に無責任になれということではありません。
『なぜデザインなのか。』
まだ読み始めたばかりですけど、かなりワクワクする本です。
また読み終わったら感想を書くことにします。
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