富士通キッズ キッズコンテンツ作成ハンドブック:http://jp.fujitsu.com/about/kids/handbook/
まず、思ったのは「んっ、なんだ? このペルソナ」ってことです。
みても、何のためにペルソナをつくったのかわからなかったわけです。
いったい、これをどう使うんだろ?って。
で、最初は出来がよくないのかなとか勘ぐったりしました。
でも、そうじゃないんですよ。
他人がみてわかるペルソナのほうがおかしい
自分が関わっていないデザインのためのペルソナをみてもわからないのがとうぜんなんです。だって、ペルソナに描かれるのはデザインのヒントとなるユーザーの傾向なんですから。
人にはとうぜん多様な側面、傾向があるわけですけど、それを適当に思いつくまま挙げても仕方ないわけで、自分たちのデザインの課題を解決するために、架空のユーザーであるペルソナに質問して答えてもらうために、ペルソナをつくるんですから、とうぜん、その答えもしくはそのヒントがそこには描かれていないといけません。
これから、つくろうとしているデザインとの関係をペルソナが示唆していなかったら、そのペルソナはダメなわけです。
逆にいえば、その意味で何をつくろうか、何をデザインしようかを知らない人が、ペルソナをみて、何をつくろうとしているか、何をデザインしようとしているかがわかったら、その人はかなり勘がいい人です(今回僕は本当にどんなものかなとさらっとみただけなので、これはどんなデザイン課題を解決するペルソナなのかなというところまでは頭を使いませんでした)。
だから、他人がペルソナをみて、それがよくわからなかったとしてもペルソナには何の問題もないわけです。
ペルソナはテンプレートがつくれない
実際、僕らがペルソナづくりで苦労するのも、ペルソナをテンプレート化することができないという点です。なにをデザインするかによって、ペルソナで描くべき内容はまったく違うからです。デザインがもつ課題について答えてくれるのがペルソナの役目ですから、もともとのデザインの課題が異なればペルソナに描かれる内容が異なるのがとうぜんなんです。
そのため、ペルソナを完全にテンプレート化することはできず、せいぜい、必ずユーザーの特徴を示すキャッチコピーを入れる、ユーザーの最終的なゴールは示す、名前のほかに覚えやすい愛称をつけるとかと、あとはWebのデザインのためにつくることが多いので、インターネット利用の傾向などくらいしか項目を決めることができないんです。
肝心の部分は「必ずデザインのヒントになる要素を入れる」という風にしか決められない。でも、そんなこといわれても、よほど、こういうやり方に慣れてないと「デザインのヒントになる要素」ってなんだよって思うのが普通なんですよね。
だから、なかなかペルソナをつくれる人を育てるのってむずかしいんです。
まぁ、そのあたりを補う意味で、僕らは必ずペルソナをつくった際には、これからデザインするものをペルソナがつかうシーンを描いたペルソナ行動シナリオもいっしょに作成するようにしています。

実際に行動の物語を書くことで、デザインするものとペルソナのインタラクションを考え、デザイン課題の回答をペルソナに語らせてしまうんですよね。
もちろん、その際には富士通さんのペルソナにも掲載されていたような、ペルソナの元となったデータを詳細に分析しながら、シーンごとのインタラクションをデザインしていくわけです。
他社のペルソナはまったく参考にならない
と、ちょっと脇道にしれましたが、そういう意味で今回は、ペルソナってほんと他の会社がつくったのをみても何の参考にもならないもんなんだなって思いました。ペルソナの事例とかありますかってよく聞かれますけど、これじゃあ、もしペルソナをみせたとしても何にも伝わらないなって思いました。そのペルソナをつくった、そもそものデザイン課題を同時に伝えてあげないと、ペルソナだけをみせてもよくわかないのは当たり前なんですよね。
他社のペルソナだけみてもまったく参考にならない。それが今回の富士通さんのペルソナをみて勉強になりました。考えてみればとうぜんなんですけど、そんなこと考えもしなかったので今日まで気づきませんでした。
もし、あれをみて「へー、ペルソナってこういうもんなんだ」って感じた人がいたら、その感覚はたぶん間違ってます。
ペルソナってあくまでそれとデザインの課題がセットになってはじめて意味をもつものという意味では、ペルソナの側だけみてデザインの課題を知らないまま納得してしまうのは、たぶんペルソナが理解できてないんですよ。
あるいは、企画設計=デザインとは何かの理解が不足しているか。
いやー、それにしてもデザインって奥が深いなってあらためて感じました。これだけいろいろ自分が知らないことがたくさんあるんだってわかると、おもしろくてしかたがないですね。
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