「創造的な仕事」に求められる7つの作法

1つ前に「クリエイティブな仕事とは?その方法とは?」なんてエントリーも書きましたが、どうやら世の中では「創造的な仕事」というのが大きく誤解されている印象をもちました。

でも、世の中で考えられているようなイメージは、実際の「創造的な仕事」とは大きくかけ離れていると思います。

それをちょっとでも感じていただくために、「創造的な仕事」に求められる7つの作法をまとめてみたいと思います。

「創造的な仕事」に求められる7つの作法

まぁ、どれだけ世の中でイメージされているものと実際の「創造的な仕事」がかけ離れているかを見ていただくためにも最初に7つの作法をリストアップしておきましょう。

  1. ひとりで考えない
  2. 手を動かしアウトプットする
  3. 議事録を書く
  4. 計画を立てて行動する
  5. リズムをつくる=習慣化する
  6. 本を読む
  7. 何度も検証しコンセプトを壊す

どうですか? このリストって皆さんが思っていた「創造的な仕事」のイメージにあってたでしょうか?
NOという答えの方のほうが多いんじゃないかと思います。

それでは1つ1つ説明していきましょう。

1.ひとりで考えない
クリエイティブな仕事はひとりの孤独な天才の手によって成し遂げられるのだと思っていたら、あなたの頭はそうとう古いです。そんなロマンティックな夢を見たままなら、誰かに頬をつねってもらってとっとと目を覚ましたほうがいい。まぁ、えらそうなことを言ってますが、僕自身、何人かで時間を共有してブレインストーミングやワークショップなどの技法を使って、ものを考えるほうがひとりで考えるよりはるかに効率的に創造的な問題解決が行われやすいと知ってからそんなに時間が経っているわけではありません。それでも、いまではひとりでものを考える非効率さにはうんざりで、その手の仕事はモチベーションが下がります。
もちろん、ブレインストーミングやワークショップに参加するメンバーそれぞれが他人の意見を聞き、自分のアイデアを示せる人じゃないとダメなんですが、そういうメンバーが集まった場ではアイデアが多方面からでてくると同時に、アイデア同士の創発が起こり、ひとりでは決して生まれえないような解決につながることがすくなくありません。
また、ワークショップなどではむしろ専門的な知識をもたない外部の人をいれるとさらに効果的です。専門的な人間ばかりが集まって話したのでは絶対に生まれえない視点からこれまた創発が生まれてイノベーティブな解決が見つかるのです。その意味では、ひとりで考えないというのは、他人を尊重し、他人の考えに耳を傾けられる力だともいえます。それはフィールドワークやコンテキスチュアルインクワイアリーのような観察調査を行う場合にも共通したものだと思います。
2.手を動かしアウトプットする
さてブレインストーミングやワークショップでは単に話をするだけではダメ。口でアイデアを出し合うだけではダメです。絵や図で示したり、身体を使って表現したり、なんならダンボールなどをつかって簡単なプロトタイプをつくって表現したり、具体的に目で見えるものをつくりながら考えたほうがいいと思います。
目に見えるものは話を聞いただけのものよりはるかに想像力を駆り立てます。また、アイデアを出す人もただ口で言うだけでなく、実際に手を動かして考えているものを形にすることで、アイデアの足りないところ、もっとこうしたらいいなと思うところが見つかって、考えをより先のほうにまで進められます。
物理的なものをつくる現場であれば、いろんな素材をその場に並べてそれを手にしながら話をするのもいいでしょう。ペーパープロトタイピングで利用シーンを簡単にシミュレーションしてみるのも効果的です。とにかく頭のなかだけで考えるのではなく手を動かしながら考えるのが創造的な仕事のやり方としては欠かせないと思います。
3.議事録を書く
これまた創造性という言葉とはかけ離れたイメージをもつものかもしれませんが、ブレインストーミングやワークショップの議事録を書くことは創造的な仕事をするうえで非常に大切なことです。
まず議事録を書くというのは実はかなりのスキルを必要とすることです。特にアジェンダのある会議とは違って、ブレインストーミングやワークショップの議事録は、たくさんの人の話を聞いて、その話の構造や話題相互の関係性を理解する力、ディテールと全体の構造を読み取る力がないと、きちんと意味がとおる形にはまとめられないからです。そして、この構造を読み取る力は創造的な仕事をする、創造力を発揮して企画設計を行う際には欠かせない能力です。複雑に絡みあってときには互いに矛盾しあう個々の問題の解決案を構造化して整理し、複合的な解決案を可能な限りシンプルな形に落とし込むことができなければデザインなどできないからです。
また、議事録をきちんと書く自体、あとでブレインストーミングやワークショップの内容を客観的にみることができるようになり、そのことで議論の抜けや飛躍があったかどうかを確認することにもつながります。それによりブレインストーミングやワークショップで生み出された解決案の検証も可能になるという利点があります。議事録といえば、とかく「あとで言った言わないが起きないようにする」というマイナスをなくすためにありがたがられるケースが多いと思いますが、そんなものは議事録の瑣末なメリットでしかないと思います。本当の議事録のメリットはそれが創造的な仕事を支援するという点にあるのです。
4.計画を立てて行動する
またしても、これは創造的な仕事のイメージとはかけ離れたものに感じられるかもしれませんね。でも、計画を立てて行動することくらい、創造的な仕事にとって重要なことはありません。だって、これができてないと定期的にブレインストーミングを行うことも適切な時期にワークショップを行うこともできないですから。
創造的な仕事にとって何より大事なのは、どんな問題を定義し、それを現実として解決することを成し遂げるということです。とうぜん問題の定義にはそれをいつ成し遂げ、どのようなコストやリソースを用いて達成するのかが含まれていなければいけません。その大本の問題定義に基づき、問題も計画も細分化され構造化されます。この計画を構造的に考えることをせずにプロジェクトを進めるなら、それは創造的な仕事とはまったくかけ離れた行き当たりばったりの仕事です。
創造的な仕事というとなにやら自由なイメージをもたれる方が多いのでしょうけど、創造的な仕事が自由なのは、なにも仕事の進め方がそうだというのではありません。むしろ、創造的な仕事において自由であるべきは仕事のやり方ではなく、決まった方法に基づいて行われる発想の自由さなのです。創造的な仕事がほかと比べてことさらラクであったり楽しかったり自由であったりなんてことはない。そんなの大きな誤解です。
5.リズムをつくる=習慣化する
『クリエイティブな習慣』の著者で振付家のトワイラ・サープは「創造性は習慣である。そして最高の創造性は、優れた労働習慣の賜物である」と言っています。そして、さらに、

ルーティンは稲妻が光るように突然わいてくるインスピレーションと同様、おそらくそれ以上に、クリエイティブなプロセスの大きな部分を占める。そしてこのルーティンは誰にでもできることなのである。
トワイラ・サープ『クリエイティブな習慣―右脳を鍛える32のエクササイズ』

とも言っています。
多くの人が誤解しているかもしれませんが、創造性が「これまでになかったものを実現する力」だからといって、それが生まれる基盤自体が独創的だったり破天荒だったりする必要はないんです。これは1つ前の「計画を立てて行動する」ということにもつながる点です。むしろ、創造性はサープが言っているように地道に身につけた習慣のなかから生まれることのほうが多い。例えば、それは毎日、寝る前や朝起きたときにブログを書くとか、毎朝、今日の仕事の計画を立て、仕事終わりに日報を書くだとか、そういう習慣から生まれるのです。生活にリズムがあれば時間をうまく使えるようになり、成果は出しやすくなります。そして個々の成果が創発するなかで創造性は発揮されるのです。ですから習慣化したルーティンなくして創造性は生まれにくいのです。それにメンバーそれぞれがリズムをもってないと、ブレインストーミングの場で顔をあわせても何人かが頭の準備できてないなんてことになり、せっかくの場が台無しになったりもしますし。
6.本を読む
本を読まない人はダメです。昔は本を読むのは苦手な人もいるだろうから、それはそれでいいのではないかと考えていましたが、いまは違います。毎日ちょっとの時間でも本を読んでいろんな考え方に触れるようにしないと、好奇心が刺激されません。疑問に感じる機会が少なくなり、「なぜ?」とか「これはどういうこと?」と疑問や好奇心を感じる力が鍛えられません。
とにかく創造的な仕事をするためには、経験を増やさなくてはどうにもなりません。本を通じて他人の考えに触れるという経験は非常に効率的で手軽です。本ほどポータビリティがあって、かつ自分が普段生活している世界の外の情報に触れられる手段など、なかなかありません。これを効率的に活用しない理由など僕にはとうてい思い当たりません。
7.何度も検証しコンセプトを壊す
創造的な仕事をする上ではどんどん外の視点からの検証を繰り返し、自分たちの思い込みでしかないコンセプトを壊し、修正していくことが大事です。そして、壊すのだから最初からちゃんとしたコンセプトをつくろうなんて力まないことです。むしろ、どんどんプロトタイプをつくったりして、小さなアウトプットを積み上げ、それを検証するという繰り返しのほうが大事です。このあたりは「速度を速めるとゆっくりできる」で書いたアレです。
検証の仕方はプロトタイプを自分たちでいろんな視点で触ってみる方法もありますし、身近な他人に触ってみてもらうという方法もあるでしょう。実際のターゲットユーザーを探してきて、ユーザーテスト法による検証を行うことも有効です。そうした検証にもまれながらコンセプトをヴィヴィッドなものにしていく。そうした反復デザインのなかでこそ、創造的な仕事というのは実現されるのだと思います。

と、まぁ、ここに挙げたのはあくまでお作法。実際に創造的な仕事をするには、「クリエイティブな仕事とは?その方法とは?」でも紹介した方法論も同時に必要になってきます。

そのあたりに関しては、現在、「デザインの方法:ブルーノ・ムナーリの12のプロセスの考察」と題したシリーズも書いてますので、そちらも参照いただければ。

  

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この記事へのコメント

  • さやべえ

    つい最近読了した「イノベーションの神話」をすぐに思い出すエントリーでした。
    2007年12月13日 13:32
  • hiroki

    おもしろそうな本ですね。
    僕も読んでみます。
    2007年12月15日 02:23
  • akiko

    はじめまして。トワイラ・サープの本を翻訳した者です。あの本をさらにクリエイティブに読み、使っていただいているようで嬉しいです。どんな方がどんな風に読まれるのだろうと思っていたので、お邪魔しました。
    2007年12月15日 04:28
  • 上野OLヨウコ

    「クリエイティブ」という言葉の検索から行き当たり、考え方の参考になると思い、ブログにリンクを貼らせていただきました。勝手にすみません。

    「クリエイティブ」とは、ゼロから作り始めるのではなく、今あるものを2つか3つ組み合わせる。という話を聞いたことがあります。

    まさに、突然ひらめいて大当たり!とは間逆のことですね。

    手を抜くわけでも、適当に切り抜けるわけでもない、蓄積してきた事をブレーンストーミングにかけて掘り当てたものこそ「クリエイティブの賜物」ですね。
    2009年11月06日 16:25

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