デザインの方法:ブルーノ・ムナーリの12のプロセスの考察(d.創造力)

4回目です。「デザインの方法:ブルーノ・ムナーリの12のプロセスの考察」と題したシリーズも今回で4本目のエントリーになります。
タイトルが長いので更新されてないように見えますが、ちゃんと更新されていますw

さて、4回目のテーマは「創造力」。ムナーリの12のプロセスにこれが含まれているのを見たとき、正直、ちょっと困りました。創造力ってデザイン全体に関わるものなんじゃないの?

ムナーリさん自身が『ファンタジア』のなかでこう書いてますよね。

創造力とは、発明と同様ファンタジアを、いやむしろファンタジアと発明の両方を多角的な方法で活用するものである。デザインは企画設計する手段であり、創造力はデザインの分野で活用される。デザインはファンタジアのごとく自由で、発明のごとく精密であるにも関わらず、ひとつの問題のあらゆる側面をも内包する手段である。つまりファンタジアのイメージ部分、発明の機能部分だけではなく、心理的、社会的、経済的、人間的側面をも含みもつものである。

そうだよね。だとしたら、ここまで進めてきたデザインのプロセスの一部にも創造力がはいっているってのはどういうこと?

この時点で、私たちは企画設計を始めるために充分な材料を手にしたことになるだろう。しかし、すべてを解決するアイデアをすぐに採用しようとする人は、集めた材料を検討しない。つまり、その種のアイデア探しは、よりクリエイティブな実行方法に置き換えられるのである。
この直観的なアイデアに取って代わるのが、まさしく創造力である。
ブルーノ・ムナーリ『モノからモノが生まれる』

なるほど。集めた材料を検討して活かす力が創造力にはあるが、ただの直観的なアイデアにはその力がないというわけですか。

アイデアとは、空想にもつながり、技術面、素材面、あるいは経済面から、実現不可能な解決策も提出しうる。他方、創造力は、データや下位問題の分析から得られた問題の限界内にとどまる。
ブルーノ・ムナーリ『モノからモノが生まれる』

そう。アイデアと違って創造力は聡明なわけ。右脳と左脳、ファンタジアと発明のバランスを上手にとりながら「これまでなかった新しいもの」を生みだす力が創造力にはあるというわけです。

では、その創造力をつかってこの段階ではなにをやるの?

6.創造力

先にムナーリさんも言っていたように、ここでの創造力の使い道は、データや下位問題の分析から得られた材料をうまく用いて、総合的な解決案を探ることです。
前回の「デザインの方法:ブルーノ・ムナーリの12のプロセスの考察(c.問題の研究のためのデータ収集、分析)」の最後に、

多くの下位問題はそれぞれ独立して存在しているというよりも構成要素自体がほかの要素と絡みあう形で問題を構成している場合がほとんどです。なかには矛盾や対立の関係にある下位問題どうしもあるでしょう。そうした関係性をもつ複数の問題を解決するためには、個々の下位問題に解決案を用意しただけでは全体の解決にはつながらないのは当然のことです。こうした問題を解くためには「創造力を発揮して、下位問題の解決案を調整する」作業を行うしかありません。

と書きました。

これまで収集した個別のデータや下位問題の分析から得られた解決案はそのままではすんなり統合された解決をもたらしてくれるわけではありません。個別では良さげに感じられる解決案も、総合的にみると「それ全部、採用したらいったいいくらかかんねん」となったり、「ちょっと待てや。こんなんそのまま組み合わせたら複雑すぎて誰もようつかえんで」となったり、「そもそもこっちのデザインとあっちのデザイン、矛盾しとるやん」となったりするはずです。
つまり、本当にむずかしく創造力が必要なのは、バラバラで互いに矛盾しあったり複雑に絡みあったりしているデータや分析結果の集合を適切な形で整理するための答えを見出すための統合的な視点での企画法です。

利用者像を明確するペルソナを創造する
デザイン問題を統合的に解決に導くためには核となる視点が必要です。その視点を確立する方法の1つがペルソナ法です。ペルソナ法では実際のものを利用するユーザーの視点を、ペルソナという架空の人物像を創造することで確立します。ペルソナの視点を軸に複合的なデザイン問題を複雑にならないようシンプルに整理することが可能になります。デザインとはものと人とのインタラクションを計画することであるはずです。それにはまず利用者像を明確にするためのペルソナをこれまで集めたデータや分析結果をもとに創造的に生み出すことからはじめることが肝要だと思います。
行動シナリオを描いて新しいユーザー経験を創造する
ペルソナ/シナリオ法を使う最大の利点は、デザインのコンセプトをペルソナ行動シナリオというユーザともののインタラクションの流れを物語風のシナリオとして描き出すことで、単なる機能要求一覧のような要求の背景がわからない素っ気ないリスト形式とは異なる、どこでどの機能が何の目的で利用されるのかが活き活きとした形で示すことができるようになる点です。ペルソナ行動シナリオは、どんな人が、どんな場所で、どんな目的で、ものをどんな風に使うのかを描いていきます。
シナリオを描く際のポイントはいかにユーザの利用経験を豊かなもの、価値あるものとして描くことができるかです。ペルソナを使って描く行動シナリオはこの点でまさにユーザエクスペリエンス・デザインに最適なツールなのです。デザインチームが最も創造力を発揮しなければいけないのが、このペルソナの経験を具体的にイメージしながら、自分たちがデザインするものとユーザのインタラクションを明示するこのペルソナ行動シナリオを描く段階だといえるのではないかと思います。
このシナリオは文章だけである必要はなく、イラストを交えたり絵コンテ風に描いたりすることもできます。場合によってはシミュレーション映像を作成してみたりするのもよいでしょう。実際に世界的に有名なデザインファームであるIDEOではデザインする製品の予告編という形でユーザが製品を使用する場面のシミュレーション映像を制作することもあるそうです。
とにかくデザインチーム全員が創造力を発揮しあい、ユーザの経験をシナリオに描き出すことでデザインに総合的な見地での答えを出していくのです。
創造的なブレインストーミングで具体的なデザインアイデアを数多く出す
ペルソナ行動シナリオができたらそこに描かれた価値ある経験を生みだすものの具体的なデザインアイデアを考える番です。これにはブレインストーミングの手法を用いるのがよいと思います。
ブレインストーミングでは「量を追求する」「大胆なアイデアを歓迎する」「批判をしない」「視覚的に表現する」「独断的にならない」「話題は一度に一つ」といったルールを守りながら、時間を決めてその時間内にどれだけアイデアを出せるかにポイントをおいて進めるとうまくいきます。アイデアをまとめるのはブレインストーミングが終わったあとの作業です。とにかくどうまとめるかは後回しにして、ブレインストーミングの時間中はどれだけの数のアイデアが出せるかを数えながらやったほうがいいでしょう。
ここでアイデアを出せない人はデザインチームとしては失格です。たまにブレストだっていうのにおとなしく黙って座ってる人がいますけど、いったいブレインストーミングって作業の場を何だと思ってるんですかね?

と、ここまでで何をデザインにより生み出さなければいけないか、その要求は明確になりました。今度はそれが本当に実現可能かをものの側から検証しなくてはいけません。素材や技術に関するデータの収集、分析を行うのです。それについてはまた次回に。

デザインの方法:ブルーノ・ムナーリの12のプロセスの考察


   

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