ユーザーテストで作り手の思いこみ=デザインを破壊する

デザインとは作り手の思いです。

ユーザーテストはその思いこみを壊すところに価値をもつデザイン手法です。

自分たちの仮説=デザインを、ユーザーがまったく想定外の使い方をするのに驚き、本当に必要な形を発見する。自分たちだけの思いからユーザーと自分たちとの共通の思いにするために必要なデザインの輪郭を発見するための手法がユーザーテストです。

ユーザーとデザイナーのコミュニケーション・ギャップを埋める

ただ、自分たちが作ったものをユーザーが実際に使うところをみたことのない人には、なかなかものの形と人々の行動の軌跡とのあいだの大きなギャップを実感することができません
自分たちがある程度時間をかけて考え抜いて作ったものであればあるほど、実際のユーザーにテストしてもらう意味はなんとなく理解しつつも、デザインとユーザー行動のあいだのギャップをどうしても小さく見積もってしまい、コストや時間をかけてまでユーザーテストをやる意味があるのかと疑問をもちます。

しかし相手のことを考えただけで、相手に何かを伝えられたら、世の中でこんなにありとあらゆる誤解やいざこざは発生していないはずです。考えてもわからないから日々大小さまざまなコミュニケーション・ギャップが世の中では生まれている。考えてわかるのであれば、僕らはこんなにコミュニケーションや人間関係に悩まされることはないはずです。

考えても実際相手にぶつけてみなければ、本当の相手の反応はわかりません。多くのコミュニケーションは相手と長い時間を共有するなかで最初はぎこちなくすれちがいがちだった相手とのやりとりがだんだんと噛み合うようなり、しいてはあうんの呼吸で通じあうようになったりするものです。

デザイン・プロセスにおいてユーザーテストを行う意味はまさにそうした日常のコミュニケーションにおけるギャップの解消とおなじ意味をもちます。それまで互いに隔離されていたユーザーとデザイナーがユーザーテストを通じてコミュニケーションをとるのです。

ユーザーの行動とデザインの関係に無自覚な人でも驚くことができる

それにしても、ユーザーの行動とデザインの関係に無自覚な人が多いと感じます。ユーザーの行動に対してあいまいな思いこみを抱いているから、その前提に立つと、作ったデザインにはあまり大きな問題はないように思えるのでしょう。

しかし、自分たちが前提としているユーザーの行動が自分たちの思いこみとは大きく異なっているのだとは誰も考えません
よいものに触れた経験、おいしさに歓喜するようなものを食べた経験、感動するような景色を目の当たりにした経験をもたなかったり、それを忘れてしまっていたりする人ほど、自分たちの体とものが本当にマッチした際にどんな喜びがもたらされるかに気づかず、そのため、行動とものとのギャップを甘くみてしまう傾向があるのだと思います。

ただ、そんな人でも実際のユーザーテストで自分たちが作ったデザインをユーザーが実際に使うシーンを眼の前にすると、そのあまりのギャップに驚きを隠すことはできません。
むしろ、普段からユーザーのことを考えていればいるほど、実際のユーザーテストで眼の前で展開されるギャップを前にした際の驚きは大きくなります。

ユーザーテストで本当に必要なものの形を発見する

だから、僕なんかは何度ユーザーテストでユーザーの行動を眼にしてもその度に新しい驚きを発見します。自分がデザインに込めたユーザー行動に関する仮説がただの思いこみにすぎなかったことを発見します。もちろん、その発見は本当に必要なものの形の発見でもある。

そうやってテストを繰り返すことでものの形はユーザーの行動の軌跡をなぞるようになり、ユーザーとデザイナーの呼吸は徐々にシンクロしはじめるのです。
そして、そのとき、形に関する迷いは消え、あるべくしてあるものの輪郭がそこに立ち現れるのです。

それはオーダーメイド・スーツの仕立て屋が、顧客の身体にあったスーツをつくる際、顧客の身体にメジャーをあて、その度ごとに異なる人間の身体というものに驚きを感じるとともに、単なる繰り返しではない、また新しいスーツをつくれるのだという喜びを感じるのとおなじではないでしょうか。

ユーザーの好み、期待、喜びを知る

ユーザーテストは作り手の思いこみ=デザインを壊すための手法です。ただ、その破壊は決して作り手の気持ちを萎えさせるものではないはずです。その破壊に喜びを感じられる人こそが本当の意味でのデザイナーなのではないかと思います。

あなたがもしユーザーテストを単なるユーザビリティの向上のための手法だと考えているのなら残念です。

だって、それは本当はユーザーの好みを知り、ユーザーの期待を知り、ユーザーの喜びを知るための手法でもあるのですから。

P.S.
とはいえ、ユーザーテストの実施後のプロトコル作成~分析だけは本当に大変。これならユーザー調査の結果を行動シナリオに書き起こすほうがはるかにラクです。
今週もそのせいでヘトヘト。やっと週末だぁ、という感じです。
この作業がもうちょっとラクになれば、もっとユーザーテストをやってやろうという気になるのですがw

まぁ、それだけ人の発話より行動のほうが断然早く、豊穣な情報を隠しているということ。
そりゃ、ふつうの目で見てたらとてもじゃないけど、人の行動なんて追いきれません。普段の目で見落としてるのは当然なわけです。

 

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