「ペルソナとISO13407:人間中心設計プロセスの関係に関するまとめ」では、ペルソナというツールはマーケティングツールというよりデザインツールですよ、と書きました。
今日はたぶん、こう書かなきゃいけません。
ペルソナはデザイナーのためのツールですよ、と。
誰のためのデザイン?
しつこいようですけど、もう一度書きますよ。ペルソナっていうのは「誰のために何をデザインするかを明示する手法」です。
誰がデザインされたものを何のために使うのか? どんな場所でどんな風に使うのか? その人はどんなものを好み、どんな使い心地のものを好むのか? 目的達成のためにその人は何を必要としていて、どの順番で情報が提供されることを望んでいるのか? そういうことがわかればデザインする上でヒントになりますよね。そういう情報を提供するのがペルソナです。これをデザイナーが使わない手はないと思います。
「誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論/ドナルド・A・ノーマン」では、「ユーザー中心のデザイン」はオーダーメイドの時代のように、ものをつくる前に、それを買って使う人のことを知ることだと書きました。しかし、本来は「ユーザー中心のデザイン」なんてことを言わなくても使う人のことを知った上でデザインすることなんてむしろ当たり前のことなんじゃないかと思います。
誰のためのデザインなのかを知る上でペルソナというツールは、デザイナーにとっては非常にありがたいツールであるはずです。ペルソナはこれからデザインしようというものをどのように使うのかを教えてくれ、何が好みで何が必要か、逆に何をわずらわしく思い、何を必要としないかも教えてくれます。デザイナーはペルソナと対話をすることで、いくらでもデザインのヒントをもらえるはずなのです。
ペルソナとの対話
ただ、デザイナーが積極的に話しかけない限り、ペルソナのほうからは多くを語ることはありません。質問を投げかければ適切な答えを返してくれるペルソナも、質問されなければ何を答えていいかわかりません。デザイナーのほうが興味をもたなければペルソナは心も開いてくれません。このあたりを勘違いされてるデザイナーさんがいるんじゃないでしょうか?
ペルソナと話をすべきなのは自分じゃなくて、ほかの誰かがペルソナからデザイン要求を聞きだしてきてくれて、自分はそのとおりにつくればいいんだと思い違いをされてはいませんか?
だったら、ペルソナなんかつくる必要ありません。デザインツールであるペルソナを実際にデザインするデザイナーが自分で使おうとしなかったり、ペルソナとの関係をつくりあげようという気がないのなら、ペルソナなんかつくる必要はありません。
ペルソナをつくるのも使うのもデザイナーの大事な仕事
本来ならペルソナを使うのもつくるのも僕はデザイナーの仕事だと思っています。だって、最初にペルソナを使ったアラン・クーパーだってデザイナーですから。もちろん、デザイナーひとりにまかせるのは大変だからリサーチやそれに必要な調査対象者のリクルーティングになれた僕らのような人間がお手伝いはする。でも、それはあくまでお手伝い、サポートです。
ペルソナのことをよく理解して、それを具体的にデザインに落とし込める唯一の人はデザイナーです。そのデザイナーがペルソナに関心を示さないのであれば、ペルソナなんかつくる意味はない。だって、それがデザインに反映されることはないのですから。そんなものは誰のためのデザインでもないわけです。
ペルソナを使ってユーザーのことがわかればいいわけではありません。
ユーザーのことがわかった上でそれを具体的なデザインに落とし込めなければ意味はありません。
そして、その意味のある仕事ができるのはデザイナーだけです。そのことは忘れてはいけないことだと思います。
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