つまり、デザインという定義自体が、いまだに日本においては、スタイリングと直結したところで止まっているのである。本来のデザインは、もっと大所高所の見地にある。(中略)単なるスタイリングを超えた、包括的な意味が「デザイン」にはあるのだ。すなわち設計や、コンセプトの立案、あるいは「ものづくり」全体の枠づくりのことであり、身近な言葉では「ディレクション」ないしは「プロデュース」と同義と言っていい。
しかし、これがいまいち浸透しないし、理解されてません。
書店などにいけば、本のデザインやグラフィック・デザインの本は数多く出ていますが、プロダクト系のデザインに関する本はあまりありません。
ましてや、デザインを設計やコンセプト・メイキング、ものづくりのフレームワークづくりという視点できちんと捉えたものは数少ないように思います。
売り物になるデザインの知識
なんでこうなんだろう?って考えたときに思い浮かぶのが、日本のプロダクト・デザインの現場の特殊性です。つまり、企業のインハウスのデザイン部門が決まった商品カテゴリーのデザインを担当していて、かつ、そこでのデザイン作業がほとんど外には見えないという。いまでこそ深沢直人さんをはじめ外部のプロダクト・デザイナーの仕事もすこしづつでも増えてきて、プロダクトがどのようにデザインされるのかという情報にも触れられるようになってきています。
しかし、そうした情報はごく一部であり、建築やエディトリアル・デザイン、グラフィック・デザイン、さらにはWebのデザインなどに比べても、非常に少ないように思います。
こうした建築やWebなどの分野のデザイン関係の情報がWeb上や書籍という形で充実しているのは、それらのデザインに関する知識が売り物になるからです。つまり、これらの分野のデザイナーは企業をクライアントとし、デザインのスキルそのものを売ることができるのです。デザインが売り物になり、デザイナーが職業として成立するならば、その技術を紹介する書籍や情報も売り物になります。
しかし、企業内デザイナーとなるとデザインそのものは売れません。売れないものの情報をあえて外に出す必要は企業にとってもデザイナーにとってもないでしょう。
マーケティングの本は山ほどあるのに、プロダクトデザインって少ないよね
ただし、本当にデザインが売り物にならないかというと、まったくそうではなくて多くの人が商品をデザインで選んでいます。デザインが見た目だけのものでないという意味では、それこそデザインでしか選んでないといってもいいくらいです。そのくらい重要なものであるにも関わらず、マーケティング関連の本は山ほど出ているのに対し、プロダクト・デザインの本は数えるほどしか出版されていないというのは異常でさえあります。
売り物である商品をつくるのであって、かつ、そのものづくりの全体フレームワークを担っているがデザインだとしたら、ほとんどマーケティングそのものと変わりないのに、この差は異常。
そんなことになってしまった背景として、マーケティングをやってる人間と比べても、プロダクト以外のデザインに関わる人と比べても、プロダクトのデザインをやってる人があまりに寡黙すぎるということがあるのではないかと考えます。もちろん、性格的に寡黙ということではなくて、ブログを書いたり、外から取材を受けたりということが少ないという意味でです。
プロダクトデザインやってる人にももっと語ってほしいよね
デザインを売るためにはやっぱりデザインを語ることが必要ではないかと思います。売るというのは、本当に市場において売るという意味でもあり、企業内のほかの部門に対してデザイン部門の価値を買ってもらう(認めてもらう)という意味でもあります。それには自分たちの考えを伝えていかなくてはいけないはずです。企業内に対しても市場に対しても。じゃないと、これからもデザインってスタイリングのことだと思う人がいなくならない気がします。
だからこそ「プロダクトデザインやってる人にももっと語ってほしいよね」と強く思うわけです。
いまや、ブログがあるんだから、語るのは簡単でしょ、と思うし。
それに外化のプロセスを日々まわしてないと、本当の意味でデザイン・スキルを鍛えることなんてできないと思いますし。
Web系のデザイナーや開発者はそれこそみんな、いろいろと語ってくれてますよ。それに比べると明らかに努力、勤勉さが欠けてるんじゃないでしょうか?
ぜひぜひ、プロダクトデザイン系のおもしろいブログが増えることを期待しています。
P.S.
[あとで買う] おっ、意外とプロダクトデザインに関する本もあるね↓
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