自分自身のあり方、スペックをうまくデザインできなければ、自分がやりたいと思っている仕事だったり、自分でこれは!と思えるような仕事だったりをできるようにはならないと思うからです。
どうしたら数多く抱える仕事を、中途半端にならずに進められるか
「自分をつくる」という意味では、例えば、求められる仕事を限られた時間、リソースの範囲でやりきる能力を高めるというのもその1つでしょう。ここでいう「求められる仕事」というのは単に他人から「与えられた仕事」のことのみを指すのではなく、自分から積極的に何が自分に求められているのかを理解し、積極的に行う仕事も含んでのことです。
この「求められる仕事」の量が増え、複数の仕事を同時にこなさなければならなくなると、そのすべてを中途半端にならないようにし、かつ他の人の仕事に迷惑をかけないよう、うまくコントロールするのはむずかしくなってきます。
とうぜん、より多くのむずかしい仕事を同時に滞りなく行えるようになるには、それなりのテクニックを身につけなくてはいけません。
このテクニックを身につけた自分をつくるということが、「自分をつくる」ことの1つの例だと思うのです。
最近、どうしたら数多く抱える仕事を、中途半端にならずに、かつ、他の人との連携をうまくとりながら進められるのかという相談を受けたので、そのとき考えたことについて書いてみようと思います。
自分の手持ちの仕事を常に把握しておく
僕らのような仕事では、一度に複数のクライアントの仕事を同時に抱えていることはごくごく普通のことです。その上、現状理解、要求開発、企画・要件定義、設計、デザイン評価、実装、テストなどと複数のプロセスにまたがり、かつ、それぞれのプロセスを実行するスキルをもった複数の人材が絡むプロジェクトを実行しているので、求められる仕事を行うにも、スタートとエンドの時間は決まってしまっています。
もちろん、そこで使えるリソースにも制約があります。
そうした状況で複数の案件をつつがなくこなそうとすれば、少なくとも、自分の手持ちの仕事がどれだけあるかとその仕事のスタートとエンドの時期をきちんと把握しておかなくてはいけません。
また、すでに持っている仕事だけでなく、近々、どれだけの仕事が発生しそうかということも予測しておく必要があります。
ただ、これが複数の案件を抱え、忙しくなればなるほど、全体が見えにくくなる。そして、全体が視野に入れられなくなると、そこからこぼれて自分で把握できていないものもでてきてしまいます。
しかし、当然、自分で認識していないものを自分でコントロールすることはできません。とにかく、コントロールするためには自分で認識できる状態にする工夫こそが重要です。
案件ごとのスケジュール管理だけでは足りない
「時間を空間に見立てて仕事を組み立てる(仕事のデザイン2)」でも書きましたが、仕事を進める上では、時間のなかに実施しなくてはいけないタスク群をいかにうまくレイアウトするかという視点をもつことが必要です。「見えないものをデザインするには」で書いたこととも関連しますが、そのままで見えない時間、タスクというものをデザインするには、まず見える形に置き換えてみることが第一歩となります。そのためにスケジュール表というツールがある。
しかし、1つの案件ごとにスケジュールをつくったのでは、他の案件とのスケジュールとの重ねあわせがむずかしく、1つの視覚上でスケジュールのコントロールを行うのはむずかしいままです。
自分がいまどれだけの作業をもっているか、今後どれだけの作業が発生する可能性があるかということを、時間的な配置、空間的な配置を整理しまとめ、自身できちんと把握できるようにしておくためには、案件ごとのスケジュール管理とは別の工夫が必要です。
あらゆるところに終わりを視覚化しておく
僕の場合、とにかく複数の案件のおしりがいつごろ訪れるかを認識しやすくするために、あらゆる日付に終わりのしるしをつけ、何かを行う際に目に付くようにしています。グループウエアのスケジュール表、卓上カレンダー、メモ帳やノート、ポストイットなどに、とにかくある日付に何かがあるということだけでは、すぐに気づく状態にしてあります。ある特定の日付に「何かの終わり」が存在するということさえ認識できれば、頭のなかのリストでそれが何かを考えたりすることができます。その都度、タイムスケジュール用のレイアウトを再考するきっかけになります。時間配置の再考を行えるきっかけさえあれば、いま何を行わなければいけないかをその都度考えることができます。
時間空間内のタスクのレイアウト力
もちろん、前提として次のようなことは頭に入っていなくてはいけません。- 手持ちの案件の全リスト
- 案件ごとに自分が行わなければいけないタスクとサブタスクのリスト
- 1つのタスクおよびサブタスク実行にかかるおおまかな時間
- 1つのタスクおよびサブタスク実行する際に協力を仰いだり、関わりをもったりする必要がある人は誰か、また、その人の能力
- 自分のタスクの次にタスクを実行する人は誰か、その人の能力や性格
- タスクやサブタスクの実行のリスクとなるものは何か
こうしたことがわかっていなければ、たとえスケジュールのおしりに気づくことで自分に与えられた時間のスケール感を把握できたとしても、そこに配置する構成要素の形や大きさ、特徴を理解していなければ、手際よく適切なレイアウトを行うことはできないでしょう。ましてや、そこでグズグズと時間をとられていては元も子もありません。
結局、時間管理というのは単に管理能力ではなく、レイアウト能力であり、いかに時間を空間に見立ててタスクという家具や小物をきれいに配置できるかということなのです。
タスクというものを普段からいかに観察し、その特徴やクセを頭に入れられているかが限られた時間という小部屋のコーディネイト力に関わってくるのでしょう。
タスクも結局はモノなのです。デザインすべき人工物です。
そのモノの1つ1つを見抜く観察眼・眼力を養わないかぎり、それをうまくデザインし、自分でコントロールできるようにはなりません。
「うまく時間管理を行い複数の案件をつつがなくこなせるようになる」ためには、自分を一流の時間空間デザイナーに仕立て上げなくてはいけないのだと思います。
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