アンフォーカスグループ調査で隠れた知を発見する

はい。1001件目のエントリーです。
ですが、ユーザー調査漬けの日々の疲れがたまっているせいか、やたらと眠いのでできるだけ簡潔に(にがて)。

共通パターンと特異点

普段行っているコンテキスチュアル・インクワアリーによるユーザー調査では、調査目的に応じたターゲットユーザーにフォーカスするため、事前に対象条件をきちんと設計した上で調査対象者のリクルーティングを行います。
つまり、できるだけバラつきがでないよう調査対象者を集めるわけです。

これは調査対象者の行動観察およびインタビューから共通のパターンを発見することが主目的であるからです。

しかし、実際の調査ではまれに共通パターンとはまた違った価値をもつ特異点をもつユーザー(の行動)に出くわすことがあって、それがまた有意義な発見をもたらす場合もあります。他の人が知らない方法でうまく情報検索や情報整理を行っていたりする場合もその1つで、その方法をうまいこと一般の人にも教えてあげて、かつ簡単にできるようにしてあげられれば、かなり便利じゃないかって思えたりすることがあったりします。

アンフォーカスグループ調査

いまは偶然、そういう人にときたま出くわすだけです(つまり、セレンディピティなわけ)。しかし、このセレンディピティな出会いの意図的に高める調査方法もあるだろうと思っています。
以前に「非フォーカス・グループ」というエントリーで紹介したものがそれです。
「非フォーカス・グループ」という言葉は、IDEOのトム・ケリーが『イノベーションの達人!―発想する会社をつくる10の人材』のなかで紹介している方法です。

私たちは非フォーカス・グループを使う。開発しようとしている製品やサービスに異様に熱中している人びとを招くのだ。非フォーカス・グループは、革新的なデザインのテーマやコンセプトに関するひらめきを与えてくれる。デザイナーやプロジェクト担当者の仕事に人間的な側面での基盤を与えてくれる。おまけに、どんなものが人を心から興奮させ、かりたてるかを表情や身振りで具体的に示してもくれる。

フォーカスグループが似たような人々の行動から共通のパターンを浮かび上がらせることを目的とする調査だとすれば、非フォーカス・グループは最初から意味のある特異点をまったく異なる特異性をもった人々の行動から抽出しようというものだと思います。

このような「アンフォーカスグループ調査」と呼べるような調査法を行うことで、隠れた知を表面化させ編集行為をはさむことで意図的に集合知を生み出すことが可能になるだろうと思っています。

アンフォーカスグループ調査の実施とメリット

「アンフォーカスグループ調査」といってもフォーカス・グループ調査のようにグループ・インタビュー形式で行ったのでは、集合知の形成に必要とされる「多様性」「分散性」「独立性」が担保できなくなります。グループ・インタビューの利点である「対象者の相互作用」や「個別インタビューより短期間で可能」という点を捨ててでも、「多様性」「分散性」「独立性」を重視しないと意味はないと思っています。

それゆえ、アンフォーカスグループ調査はきっと以下のような目的で実施しメリットを享受するというものになるのではないかと思っています。

アンフォーカスグループ調査の目的
巷に埋もれた特異点的傾向のある知を発掘。調査によって得た知の一般化の方法をデザインすることでイノベーションにつなげる。
アンフォーカスグループ調査の実施
ある製品やサービスカテゴリーに特異な情熱をもつ人々を対象に、個別にコンテキスチュアル・インクワイアリー法やフィールドワーク的な現地調査により、対象者の行動観察およびインタビューを行い、製品・サービスに対する特異な行動、インタラクションを発見する。
アンフォーカスグループ調査のメリット
多くの人が気づかずにいる問題の解決法や、製品やサービスの考えもつかない便利な使い方を、ユーザーを通じて発見し、それを製品やサービス開発・リデザインに活かすことができる。

基本的に実査の方法そのものは普段やってるコンテキスチュアル・インクワイアリーを対象を違えて行えばいいので、調査の実施自体は問題じゃないだろうなと思っています。
それよりも問題はそういう意味のある知を隠し持った調査対象者自体を見つけてくることになるでしょうね。それには通常のモニター会社を通じたリクルーティングという方法ではダメで、より個人レベルのネットワークを活用していかないとダメだろうなと。
はやいところ、一度実施してみたいなと思っているところです。

 

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