デザイン(人工物の科学)のカリキュラムの7つの項目

ハーバート・A・サイモンによる『システムの科学(The Science of the Artificial)(第3版)』に、以下のような「デザイン(人工物の科学)のカリキュラム」がまとめられています。

  • 1.評価理論:効用理論、統計的決定理論
  • 2.計算方法
    • a.リニア・プログラミング、制御理論、ダイナミック・プログラミングなどの最適代替案選択のアルゴリズム
    • b.満足代替案選択のためのアルゴリズムと発見方法(ヒューリスティック)
  • 3.デザインの形式論理:命令論理と叙述論理
  • 4.発見的探索:要素分解と目的-手段分析
  • 5.探索のための資源配分
  • 6.構造の理論およびデザイン組織化の理論:階層システム
  • 7.デザイン問題の表現

この7項目のうち、1~3が「デザインの評価」のための項目であり、4~7が「代替案の探索」のための項目とされています。著者のハーバート・A・サイモンはこれらの取り扱いは「プラグマティックでまた経験的である」といい、「デザイン(人工物の科学)のカリキュラム」が単に体系的で形式的な知識体系としてのカリキュラムではないことを示唆しています。

人工物の科学

著者が定めた本書でのテーマは次のように要約されるでしょう。

自然科学は、自然の物体と現象についての知識の体系である。それでは、人工的な物体と現象に関する知識の体系である「人工」科学("artificial science")というものは、はたしてありえないだろうか。
ハーバート・A・サイモン『システムの科学(第3版)』

と。

この本で著者が扱う人工物、すなわちデザインの対象としては、経済システム、企業組織、人間心理、精緻な工学デザイン、社会計画などが含まれます。
こうした対象の計画、設計にかかわる人だけでなく、

技術教育に関する専門的な1分野としてのみならず、すべての教養人の中心的な学問の1つとして、人間の固有の研究領域はデザインの科学にほかならない、とわれわれは大まかに結論することができる
ハーバート・A・サイモン『システムの科学(第3版)』

という視点で、「すべての教養人」に共通する研究領域として位置づけているのが、先の「デザイン(人工物の科学)のカリキュラム」となります。

人間の思考過程、判断、意思決定、選択、創造などの過程がテーマ

自然科学と人工物の科学が異なる点は、後者には人の意思や思考の結果が含まれるという点でしょう。
あらゆる人工物は多かれ少なかれ設計者、作成者の意思や思考の結果に基づき生み出されます。

それゆえに、人工物の科学のテーマは次のようなものになりえます。

多数の文化にまたがる新しくて自由な知的交流の真の主題は、われわれ自身の思考過程であり、またわれわれの判断、意思決定、選択および創造などの過程である。
ハーバート・A・サイモン『システムの科学(第3版)』

先のカリキュラムでも「4.発見的探索:要素分解と目的-手段分析」という項目がありましたが、人工物はある目的の達成のためにデザインされ、それをどう達成するかの手段がデザイン過程においては分析・実行されます。いまある形とは異なる代替案がデザイン過程においては発見的に探索されます。
その代替案の発見の過程においては、とうぜん、人間の思考過程、判断、意思決定、選択、創造などの過程がデザインを考える上でのテーマとして関わってくるはずです。

与えられた代替案からさ意的な、あるいは満足できる選択を行うための合理的な評価理論も必要で、「1.評価理論:効用理論、統計的決定理論」のような項目もカリキュラムには含まれています。

創造活動が行われている間にどんなことが起こっているか

こうした「デザイン(人工物の科学)のカリキュラム」はまだまだ未完成だといってよいのでしょう。数日前「これからはデザインの時代|デザインの時代はこれから」というエントリーも書きましたが、まさに「デザインの時代はこれから」だと思います。

ものづくり、人工物を生み出しているという意味で、僕たち誰もがデザイナーです。

そう考えたうえで、

デザイナーとしてわれわれは、あるいはデザイン過程のデザイナーとしてわれわれは、デザイン創造の過程に何が含まれ、また創造活動が行われている間にどんなことが起こっているかということについて、かつてないほど明瞭に理解しなければならなくなった
ハーバート・A・サイモン『システムの科学(第3版)』

と意識することが必要なんじゃないかと思います。

このブログでは以前からデザインのプロセス、創造のプロセスについて考えてきていますが、それを考えるためには論理的、形式的に考えるだけでなく、「プラグマティックでまた経験的」に身体を使って考えていかなくていけないのでしょう。
なぜなら人工物の科学であるデザインにおいては、人間それ自体の「思考過程」「判断、意思決定、選択および創造などの過程」が影響を与える大きな要素として含まれているのですから。

「デザイン(人工物の科学)のカリキュラム」の7つの項目は、僕らが身体を使った実践的な行為において学び、そして、研究を積み重ねていかなくてはいけないものなのでしょう。

 

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この記事へのコメント

  • GAKU

    そうですね。
    あと、もし付け加えるとすれば、
    子供への無償の愛情ですね。

    限りない想像力は、時間がかかるかもしれないけれど、
    そこから生まれます。


    .
    2007年10月01日 13:11

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