会社が楽しいとか、いっしょに仕事をしている仲間が楽しいとかではありません。
やっている仕事そのものを楽しいと感じられることが大事だと思うんです。
なぜ大事だと思っているかといえば、楽しい仕事をやっているのとそうでない仕事をやっているのとでは創造性が極端に違うからです。
さらにいえば、その楽しい仕事の楽しさを外部に対しても広げ、楽しさを共有できる人数が増えたらさらに創造性は増します。
クリエイティブな仕事だから楽しいのか? あるいは、楽しい仕事だからクリエイティビティが増すのか? どちらが先かはわかりません。ただ、クリエイティビティと仕事の楽しさには強い相関関係があると僕は感じています。
楽しい仕事をするための8つの条件
では、どうしたら仕事そのものに楽しさを見出し、楽しんで仕事をできるようになるのでしょう?それには努力によって最低限満たしておかなくてはいけない条件があると思っています。
それが以下のつの項目です。
- 自分というものを確立する
- 自分の気持ちに正直になってとにかく興味のある仕事に注力できるようにする
- ひとりきりでやる仕事は可能な限り短時間で済ませる/済むようにする
- 共同作業の場を増やし、その場では自分も積極的に言動を行うようにする
- 相手の考え、他人の考えに興味を示し、常に自分の考えをブラッシュアップする
- とにかく実践的であること。身体やモノを使って表現し、考えていることを形にする
- 批判はしない。問題は楽しむためのチャンスの発見と捉えること
- 楽しむための基礎知識を貪欲に勉強することで常に獲得すること
中には個人が努力すべき項目もあれば、周囲と協力しながら満たすべき項目、組織的な変革が必要な項目も含まれます。
すべての項目は満たされるべきだと思いますが、各項目が満たされる程度に関してはいくらか許容範囲があるように思います。逆にいえば、すべての項目は完全に満たされるといったことがない項目であるともいえます。
その意味でもこれらは常に努力を行い続ける必要があるものだとも考えます。
- 1.自分というものを確立する
- 何かを楽しむためには自分自身の立場やあり方を、自分の内部で、そして、外部からの評価として確立することが大事です。楽しい仕事をするためには楽しむための能力が必要であり、かつ楽しむための環境が必要です。自分の内部で自分を確立するのは能力を高めるため、外部からの評価は環境を手に入れるためです。そして、言うまでもなく内部と外部での自己の確立は別々のものではなく相互に関係したものです。
- 2.自分の気持ちに正直になってとにかく興味のある仕事に注力できるようにする
- 自己を確立するためにはまず確立しようとする場に自分を浸すことができなくてはなりません。そのためには自分が何をやりたいのか、やろうとしていることが外部に評価されるには誰にどのようにプレゼンテーションすべきかを、現時点および将来にむけて考え、それをとにかく実行できるようにすることが大事です。自分で信じられないようなものを他人が信じてくれる可能性は低いと思います。そして他人の信頼がなくては仕事ではいえないでしょう。まずは自分自身が信じる仕事に注力できるようにすることです。
- 3.ひとりきりでやる仕事は可能な限り短時間で済ませる/済むようにする
- ひとりでやる仕事も楽しいですが、実は大勢でやればもっと楽しい仕事はあります。それは単にワイワイガヤガヤとやるのが楽しいということではなくて、大勢の頭を使ったほうが創造性をアップできる場合があるからです。大勢で仕事をする条件は、大勢で仕事ができる時間をもつことです。そのためには、ひとりきりでやる仕事は可能な限り短時間で済ませる、済むようにすることです。
- 4.共同作業の場を増やし、その場では自分も積極的に言動を行うようにする
- 大勢で仕事をすることが創造性に結びつくためのひとつの条件は、共同作業の場に集まったメンバーが誰一人として傍観者にならないということです。全員で同じゴールに向かってボールをまわし、ドリブルに頼らずパスをつなぐのです。そして、自分はディフェンダーなどと決め込まずチャンスがあればゴール前まで上がってシュートが打てるような意識を全員がもつことが大事です。そして、リーダー・マネージャーはいかにそうした場の形成を促し、メンバー個々の仕事を尊重できるかがポイントになると思います。
- 5.相手の考え、他人の考えに興味を示し、常に自分の考えをブラッシュアップする
- 価値の想像のためには、変化を歓迎する姿勢が大事です。そして、変化の一番の対象は自分自身の考えです。大切にすべきは自分自身の想いですが、それは常に同じ形であるよう守ってあげるということではありません。変化のないものは腐敗します。そうではなく、常に自分の考えを変化が促進される状態に保ってあげること。それには他人の考えに興味を示すことです。また、自分の考えを積極的に外部化し、他人の評価を得られる状態にすることも大事です。そうすることで常に自分の考えを変化の波にさらし、考えそのものをブラッシュアップしていくのです。
- 6.とにかく実践的であること。身体やモノを使って表現し、考えていることを形にする
- 何かを壊すことより何かをつくりあげるほうが基本的には楽しいのではないでしょうか。壊すためにはじっとしていて文句を言うだけでもいいのですが、つくりあげるためには身体を動かし、モノをつかって表現する実践的な活動が必要になります。身体もモノも必ずしも自分の思う通りには動いてはくれません。しかし、そのぎこちない実践のなかにこそ、理想と現実をつなぐための実践的なアイデアを発見することができるのだと思います。つくりながら考えること。プロトタイプ志向が必要なんだと思います。
- 7.批判はしない。問題は楽しむためのチャンスの発見と捉えること
- 批判をするのは簡単です。良い点を見つけるのより悪い点を見つけるのは簡単です。でも、現状の批判などしてもしょうがないのです。そのアプローチではなにも生み出せません。問題を見つけても批判をするのではなく、それが良くなった際の形を想像するのです。それを発見したら楽しむチャンスが増えたと思い、すぐに具体的な解決方法を見つけるためのデザインプロセスの実行に移るのです。
- 8.楽しむための基礎知識を貪欲に勉強することで常に獲得すること
- 仕事を楽しむためには、様々な基礎知識が必要です。楽しい仕事は人に頼まれる仕事ではなく、自分から生み出していく仕事だからです。自分自身で仕事を生み出し、かつ、それを実際に仕事として行っていくためには、いくら知識があっても足りないはずです。その不足に気づける感度、そして、すぐにその不足を補うための勉強を行える身軽さが仕事を楽しくする上では必要な能力だと思います。
ここに挙げている8つの項目は、一言で言えば、これまでのワークスタイルのベースにあった批判的思考から、ワークスタイルのベースをデザイン思考に変換していきましょうということです。
「楽しんで仕事ができる人」を育てる
僕は自分の仕事を楽しもうとしている人に共感を覚えます。もちろん、仕事ですから成果を生み出さないといけません。
しかし、成果を生み出すためならつらいこと、つまらないことでも引き受けるという発想では、成果そのものも決して効率的には生み出されないと思っています。
ぼんやりと何をやっているかもわからないような仕事からは成果は決して生まれません。また、そういう人の数が多いだけ、その組織からはせいぜい計算可能な成果以下の数字しか生まれてはこないでしょう。
それでは仕事そのものがつまらないと思います。
楽しんで仕事をやってる人のほうが成果を生み出す確率は高いのではないでしょうか?
で、あれば、組織のマネジメントとしては「いかに楽しんで仕事をやってる人の数を増やすか」は大事な経営課題になるのではないでしょうか。
この考えが正しいとして、それを具体的に考えている経営者ってどれくらいいるのかな?なんてことも思ったりします。
それはいいとして、最近、人を育てるというのは、1つにはこうした「楽しんで仕事ができる人」にさせてあげるということであり、そのための具体的な育て方というのが必要になってきているのだろうなと思っています。
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この記事へのコメント
miya
たまご
私自身仕事を楽しんでいると思っていますが、「すぐにその不足を補うための勉強を行える身軽さが必要」というご指摘には、その通りと思うだけに、実践できていないことに反省です。。
tanahashi
コメントありがとうございます。
僕自身、こう書いてはいますが、やっぱり実践できているかというと、むずかしいところも多いです。
その意味では、自分の心がけの意味でも書いてみたというところですね。
でも、本当に仕事は楽しんでやれるようにしようというのは強く思います。
ooolong
(知識と勉強の)”不足に気づける感度”という表現にとても共感しました.
これは,自分だけでなく人を育てるということにも通じますよね.
「楽しんで仕事ができる人」にさせてあげる中でも特に,「不足に気づける感度」をあげてあげ,勉強と仕事のプラスのスパイラルの心地よさも教えてあげることが大切だなぁと最近よく思います.
こういったことを考えてあげられるマネージャになりたいものです.
上野
僕も自分のホームページで働く姿勢を伝えようとしているんですが、好きな仕事では創造性が違う、全くその通りだと思いました。
僕も色々勉強します。
ブログがんばってくださいね♪