アジェンダはこんな感じ。
- ペーパープロトタイピングの手法(黒須正明、メディア教育開発センター教授)
- ペーパープロトタイピングの事例(山崎和彦、千葉工業大学教授)
- 参加者との懇親会
懇親会でいろんな方とお知り合いになれたのがよかったですね。
ペーパープロトタイピングのメリット・デメリット
黒須さんがあげていたペーパープロトタイピングのメリット・デメリットは以下のとおり。メリット
- プロトタイプを作成するハードルが低い
- 変更を行いやすく、1人目をテストした後すぐに問題点を修正した上で、次の被験者でテストができる
- 完成度が低いのでユーザーも気軽に意見が言える
デメリット
- 複雑で込み入った機能確認を行うには逆効果
- 画面間でポリシー(トーン&マナー)があいまいになりやすい
- 画面でみるとイメージが異なり変更したくなる
初期の要件定義段階で使用するもので、設計が進んだ段階では、もうすこし作りこんでグラフィックののったプロトタイプでのテストのほうがよいだろうとのことでした。
ここちよい体験のデザイン
黒須さんの話も参考になりましたが、僕は山崎さんの「ここちよい体験=UCD+スマイルデザイン」というスコープでやられている研究内容に共感を感じました。そうしたデザイン手法の研究を学生とともにやられているようですが、デザインプロセスの1つとしてやはりプロトタイピングを用いられているそうです。
ただ、黒須さんのプレゼンテーションにあった評価法としての使い方だけでなく、僕が以前から言っている「つくりながら考える」手法として、また、他者へのアクティング・アウトの手法としても用いられているそうです。
ダーティープロトタイプ発想
とにかく作業をしてみないとわからないわけですよ。頭の中だけでうじうじ考えてるだけじゃダメで、とにかく外部化して自分も、そして他人も評価ができる状態をつくるんです。
外部化すると自分がわかっていたつもりのことも意外とわかっていないことがわかったり、逆に頭のなかでもやもやしてたものがすっきり見えるようになったりするものです。
最初から形にこだわってきれいにつくろうと思う必要なんてないし、そういう考えはむしろデザインする上では障害になると僕は思っています。
先にペーパープロトタイピングのメリットとして「完成度が低いのでユーザーも気軽に意見が言える」ということをあげましたが、そんなのユーザーだけじゃなく、デザイナー自身だって同じです。最初から批判をかわそうと「きれいにつくろうとする」のは、デザインの幅を著しく狭める方向にしか働かないと思います。
だから、とにかくきたない状態、ラフな状態でアウトプットする。きたなければ何度でもやり直そうという気になるものです。
デザインには、ダーティープロトタイプ発想が必要だと僕は思います。
早いうちに何度も間違えろ
それはペルソナやシナリオを使って、人とモノとのインタラクションを描くのだって同じです。できるだけ早い段階で、ラフでもいいのでとにかく形にして、デザイナー自身も、まわり人間にも、そしてユーザーにも評価が可能な状態をつくりだし、ブラッシュアップを重ねていくのがいいのだと思います。
やっぱりIDEOの信条どおり「早いうちに何度も間違えろ」なんだと思います。
「小さなアウトプットの蓄積で完成形を生み出すプラクティス」こそが重要ではないかと。
それがUCD(HCD)に限らず、デザイン思考なのかなと。
関連エントリー
- 失敗学―デザイン工学のパラドクス/ヘンリ・ペトロスキ
- ペルソナ/シナリオ法をいかにデザインに活用するか
- ペルソナを描く目的は人とモノとのインタラクションをデザインすること
- 小さなアウトプットの蓄積で完成形を生み出すための5つのプラクティス
- 失敗するための時間
- ユーザビリティのルールは前提にすぎない
- 間違えを恐れるあまり思考のアウトプット速度を遅くしていませんか?
- リズムを刻む実践的な学習とワークスタイル
この記事へのコメント
アサノ
HCD-Netから案内きてたかな?
最近ペーパープロトタイピングに興味あるので、是非行きたかったです。
残念・・・。
tanahashi
ペーパープロトは評価のツールとしてはもちろん、デザインする側の思考ツールとしても有効だと感じました。
まぁ、紙に書くというのは僕自身はふだんもやってることですけど。