苦労してる原因の1つは、今回の調査がインタビュー調査のみだったから。
行動データのない場合のシナリオ作成はむずかしい
行動を含むシナリオが元の調査データにないと、そこから人とモノとのインタラクションを描くのは結構苦労します。行動データがない場合に正確に行動を描こうとすれば、追加調査を行うか、その余裕がなければ手持ちのデータからなんとか行動を推測するしかありません。
で、矢野さんは推測しながら行動を描く道を選んだんですけど、ここで自分がペルソナを描く目的は、人とモノとのインタラクションをデザインすることだと明確に理解していないと、どうペルソナのストーリーを組み立てていいかわからなくなります。
でも、そういう場合にこそ、むしろデザインする面白さがあるともいえます。
ユーザーの思いや目的、現状から、ユーザーが取りうる行動を想像して、それをシナリオの形で描いていく。いまないものを自分の創造力をつかって形にしていく作業はとても面白いものです。
もちろん、元となる行動データがあるに越したことはないのですけど、いつでも行動データが入手できるとは限らないので、そういう場合でもその他のユーザーに関する調査データからペルソナ/シナリオを作成できるようになるのも必要だと思います。
調査データに基づきながらも、ユーザーとモノとのインタラクションのストーリーを描く際には創造性も必要となる。まさにペルソナ/シナリオ法がサイエンスとアートによるデザイン手法だといわれる所以です。
ユーザーと組織の要求事項の明示
ISO13407:人間中心設計プロセスでは、2番目のプロセスに「ユーザーと組織の要求事項の明示」という段階がありますが、ペルソナはまさにここで用いるデザイン・ツールです。したがって、ペルソナでは単にユーザー側の要求を描けばいいのではなく、組織がデザインにより形作ろうとしているモノの側の要求も描くことも必要です。
そして、ユーザー側の要求と組織の側の要求が交互に組み合わされ、やりとりされる過程のインタラクションをデザインするのがペルソナ/シナリオ法を用いる意味合いとなります。
ペルソナをつくる際には、調査で得られた結果から各ユーザーの重要な行動要素を抽出し、KJ法(親和図法)を用いてカテゴリー別に統合していきます。
(詳しくは「ペルソナ/シナリオ法をいかにデザインに活用するか」参照。)
このデータのセグメントから適切なラベルを抽出し、デザインしようとしている製品/Webにあったラベルを見出して、そこからストーリー形式のインタラクション・デザインに落とし込んでいくのですけど、ここでユーザー側とモノの側に交互に視線を移しながら、シナリオを描き上げていくのがペルソナの醍醐味です。
ストーリーの上でユーザーとモノとがはじめてのインタラクションを行うのです。
ここにこそ、ペルソナを使ったデザインのおもしろさがあるのだと思います。
というわけで引き続き矢野さん、がんばってください。
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