UCDは経営陣のサポートなしに社内で実施することはできない

日本においてはどうなんでしょうか?

かつては、企業が製品発売直前に1回限りの総括的評価を採用するのが一般的だったが、現在では、ますます多くの企業が、ユーザビリティとはユーザ中心設計モデルを採用することだと認識するようになってきている。そういう企業は、ユーザ中心設計が、市場での製品の成功に欠かせないことを理解している。
キャロル・M・バーナム『実践ユーザビリティテスティング』

この「かつて」が日本においてもかつてであり、ここで言われる「現在では」は日本の現在とどれほど重なっているのでしょう?
主観的な認識では、どうも日本の現在は、いまだ「かつて」の段階にある気がしています。もちろん、一部の企業を除いてですけど。

ソフトウェア製品の成功を予測する10の要因

キャロル・M・バーナムの『実践ユーザビリティテスティング 「利用品質」を忘れていませんか』には、Standish Groupによる「ソフトウェア製品の成功を予測する要因」として、以下の10項目が挙げられています。

  1. ユーザーの参加
  2. 経営陣のサポート
  3. 要件の明白な表現
  4. 的確な計画
  5. 現実的な予測
  6. 小型プロジェクトの積み重ね
  7. 有能なスタッフ
  8. 所有者意識
  9. 明白な展望と目的
  10. 勤勉で熱心なスタッフ

これらの項目に対して、バーナムは、

これらの成功要因のほとんどすべては、ユーザ中心設計が製品開発に適用される時に生じるが、上位の3つの要因は、ユーザ中心設計の基本である。
キャロル・M・バーナム『実践ユーザビリティテスティング』

と述べています。また、「UCDは経営陣のサポートなしに社内で実施することはできない」とも書いています。

UCDは経営陣のサポートなしに社内で実施することはできない

確かにそのとおりで、その理由はUCDがこれまでの働き方の変更を要請するものだからです。「コラボレーションにおける"仮設の場"の活用」や「人間中心のイノベーションのヒント」で書いているとおり、コラボレーションによる創造性重視の働き方が必要になってきます。

分析的であるより実践的で、流れ作業的でなく共同作業的です。そして生産性よりも創造性を重視し、ベストプラクティスのような成功から学ぶのではなく、大量のプロトタイピングにより失敗から学ぶことが重視されます。そして、顧客の声を聞くのではなく、ユーザーの行動を観察することが求められます。

ですが、各スタッフが自身の働き方を変えるにあたっては、組織で働く限り、経営陣のサポートがあるとないとではスムーズさにおいてまったく異なるはずです。

その意味で経営陣が「ユーザ中心設計が、市場での製品の成功に欠かせないことを理解している」かどうかは大きな違いを生みます。UCDとユーザビリティの違いを経営陣が理解できていなければ、これからは「市場での製品の成功」もままならなくなってくる日もそう遠くはないはずです。

果たして、日本のものづくりの現場に「ユーザ中心設計」が浸透していく日はいつ訪れるのでしょうか?



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