生産的な会議の司会術

今日、あらためて気づいたんですけど、会議の司会って誰でもできるってわけじゃないんですね。
普段は自分で司会役をやってるチームの会議の司会を、たまたま疲れてたので、別のスタッフにふったら、ぜんぜん司会ができないんですよね。あー、そうか、できない人もいるんだとあらためて思ったわけです。

最近、ワークショップだのブレインストーミングだの創造性を重視した集団的なワークスタイルの話題ばかりでしたが、今日はどちらかといえば生産性重視の集団的ワークスタイルのアクティビティである会議について、しかも、会議の司会者に必要なスキルということに絞って考えてみようと思います。

ちなみに会議そのものを生産的にする点に関しては、前に「会議をデザインするのに必要な3つのポイント」や「会議における現在価値と将来価値」「森時彦さん談「会議でもプロセス重視」」というエントリーを書いてますので、こちらもご参考に。

会議の司会者に求められる情報デザイン・スキル

会議の司会者は実は誰でもできるものじゃない。まあ、これは実は考えてみればある意味とうぜんなんだと思います。

会議の司会って結局ライブ感のある情報デザインなんですね。
なので、情報デザインのスキルがないと会議の司会をやろうにもむずかしいわけです。そして、情報デザイン・スキルってのも誰にでもふつうに備わっているスキルではありません。

昨日の「アヤトゥス・カルタ(Ajatus Kartta):フィンランドのマインドマップ」でも書いたとおり、「わかりきったことをいちいち説明する」のが苦手な日本人の多くは、自分の頭のなかにぼんやりとある「わかりきったことをいちいち説明する」ために必要な階層構造化して考えるスキルが備わっていない人が案外多いのではないかという印象を持っています。
階層構造化は情報デザインの基本的な手法の1つだと思いますが、その階層構造化ができないんです。つまり、それは基本的な情報デザイン・スキルに欠けているんですね。

こうした基本的な情報デザイン・スキルに欠けた人だと、やっぱり、さまざまな人の口から出てくる発言を整理しながら、参加者と話の流れを会議のゴールへと導いていくという、会議の情報デザインを司る会議の司会者をまっとうするのはむずかしいのではないでしょうか。

いかに参加者、そして、会議そのものをゴールに導くのか

会議の司会者には、会議の目的に沿って、参加者をゴールへ導いていく使命があるはずです。

そのためには、明示的であれ暗示的であれ、会議に備わっているはずの目的、具体的なゴールの達成のために、そこにたどり着くためのプロセスをその場で提示される情報を素材にしながら組み立てていく必要があります。
司会者は、話題の情報分類、構造化をどうすれば議論がゴールへとたどり着くかを、頭の中とホワイトボードなどに可視的に表現したものを使って組み立てていかなくてはいけません。

これをうまくこなす(つまり単純にアジェンダ通りこなすのではなく)ためには、それなりの情報デザインのスキルがないとむずかしいのだと思います。

この場合の「デザイン」はふだん使っているよりも狭義の意味で、より一般的な視覚化するだとか、具象化する、形にするという意味でのデザインだと考えてもらえれば、と思います。

司会者に求められるのは動的な情報デザイン

しかも、輪をかけて会議の司会をむずかしくしているのが、司会者に求められるのが動的な情報デザインだったりするからです。

活発な会議であればあるほど、次々に新しい情報素材が発言として提示されますし、対立する意見の整理、フォーカスをそらすような発言への対応など、司会者がはじめに考えていた通りには話が進まないことも多いはずです(むしろ、はじめの予想通りにしか進まない会議はあまり実りのない会議だったりするのでは)。

最初にアジェンダが用意され、議論の対象に関する資料なども事前に用意はされていても、結局、司会者が情報デザイン・スキルを駆使してまとめていかなくてはいけないのは、会議中にはじめて提示される個々の意見や疑問だったりします。

つまり、会議の司会者は会議のあらゆる段階において、その場その場のデザインの形を提示して、会議の方向性を明確に参加者に提示しつつ、ゴールへと導いてあげなくてはいけないのです

とにかく可視化すること

会議の司会者が会議の全体の状況を見つつ、それを頭のなかで整理して、適切な質問やまとめなどを口頭で行いつつ、会議の方向づけをしてあげることはもちろん必要です。

しかし、それだけでは参加者にも同時に、司会者が頭に思い浮かべているのとおなじ方向性を共有するのはかなりむずかしいはずです。
ですので、会議の司会者は口頭で方向性をしめすのと同時に、常に現在の話題の構成全体をホワイトボードなどを用いて可視化してあげる工夫が大事だと思います。

もちろん、実際にホワイトボードに記録するのは司会者とは別の記録係でもかまいませんが、情報を構造化してみせてあげるという意味では、司会者自身が記述するほうがよいのではないかと思います。

どう記録するかという点では、まさにこの点が情報デザイン的です。

  • 話題に上がった話の要素を明示する
  • 要素同士をクラスタリングする
  • クラスター同士を関係づける(時系列、影響関係、相互コミュニケーションの関係性など)
  • クラスター相互の優先順位付け、クラスター内要素の優先順位付け

こうした考え方に基づいて、話題を整理してあげることで、会議で何をこれまで話してきたかが参加者にも明確になります。

具体的な構造の表現の仕方としては、


などが会議の内容に応じて利用可能でしょう(ほかにもあると思いますが、いま思い浮かんだのはこんなところ)。

こうした可視化ツールを利用しながら、会議の進捗状況を可視化してあげることで、これまで何を議論したか、と、まだ何を議論できていないかが会議の参加者にも明確になり、ゴールに到達するためのロードマップ上で自分たちがいまどのあたりまで来たかがわかるようにもなります。

こうした可視化のツールの力を借りつつ、次は何を議論するかを司会者が指示していければ、会議はずいぶんと生産的になると思います。

それにはやはり会議の司会者は、基本的な情報デザインのスキルを身につけておくことが必要かなと今日あらためて思ったわけです。

 

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