わかりやすく話すだけではちょっと足りないと思う5つの理由

相手に応じて言葉やたとえを選びつつ、わかりやすく話してあげようとする心がけは大事です。いっしょに仕事をしていく同僚やお客さんとのあいだでは、相手がわかるように話す配慮が必要で、やっぱりそれがコラボレーションを行っていくための必須条件の1つだと思います。

でも、残念ながら「わかりやすく話す」だけではちょっと足りない部分があったりもします。

1.ホワイトボードや紙に書いたり、実物やプロトタイプを見せたり

口に出す言葉だけでは足りないと思う理由の1つ目。どんなにわかりやすく話しても、目の前に見せられたものにはかなわないと思うからです。

その意味では単に話すだけより、ホワイトボードや紙を使って文字にもしてみたほうがより伝わりやすくなるし、話が進んでもそこに文字が記録として残っているので、口で「さっきのあれ」とかいうより、書かれた文字を指差し「これ」といえば、「えっ、どれ?」とか話がややこしくならずに済みます。言葉じゃなく絵や図で表現してもいいでしょう。

さらによいのは実物を見せること。実物がなければサンプルやプロトタイプでもいいと思います。特に言葉だけじゃどうしてもわかりにくいものの場合は、できるだけモノを見せたほうが話が早いはずです。

2.わかりやすくても退屈だったり話が長かったり

理由の2つ目は、いくら話がわかりやすくても、その話がつまらなかったり、やたらと長かったりすると、最後のほうは相手も聞き飽きてきて、わかりやすさとは無関係に伝わらなくなります。

なので、わかりやすさだけじゃなく話を面白くする工夫や、どうしても話が長くならざるを得ない場合は、最初に何を話すかを要約して見せたり、途中でいま全部のどのくらいまで終わったかを常に伝えるようにするとかも必要だと思います。

それから、そもそも長い話はどうしても飽きてしまうし、疲れるので、最初から話をする時間はきちんと区切っておいて、話が終わらなくても時間が来たら終わりにするようにすることも大事かも。もちろん、それには話が終わっても、また続きをする機会をつくるとか、それぞれ途中まででもそれなりに考えてアクションを起こすとかのフォローの仕組みをもっておく必要があるのは言うまでもないことですけど。

3.いっしょの時間を過ごし、同じリズムを刻んで

3つ目の理由は、他人とのコラボレーションを進める場合には、どうしたって直接仕事の中身に関わること以外にも、生活のリズムをあわせたり、たがいの考えが何も言わなくてもわかるような阿吽の呼吸みたいなものをすこしずつでも作り上げていかないとなかなかうまくいかないと思うからです。

それには昼でも夜でもいっしょにご飯を食べに行くとかもそうですし、仕事以外の話をしあうとかも大事なのは昔から言われていること。
あとやはり仕事の上でも最近しきりに書いているような、ブレインストーミングやワークショップという手法を用いて、体験的に作業やコミュニケーションを共有しあいながら課題をこなしていくことも大事だと思います。

それぞれデスクワークばっかりしている人が突然集まって話をしたら、どんなに話し方をわかりやすくしても、基盤となる共通知識がなかったり、体験を共有していなかったりするために、なかなか話題の共有ができないのは仕方がないことだと思います。

そもそものコンテキストを共有するには、ある程度、同じ仕事に関わる人がいっしょの時間を過ごし、同じリズムを刻むことで、体験的な知を共有することが不可欠だと思います。

4.情熱や信念、意思はありますか

4つ目は、そのわかりやすく話してくださってる話に、あなたは情熱や信念、強い意思をもっていますか、という点です。

これはコンペのプレゼンテーションの場合などは特に重要。提案している内容の背景に、情熱や信念、強い意思を感じさせるものがなければ、なかなか選んではもらえません。特に相手が上のほうの役職の方であればあるほど、細かい内容よりも情熱や意思で判断するケースが多いように感じます。

そして、これはたぶん、プレゼンテーションのようなかしこまった場でなくても同じことです。部下が上司に報告する際、逆に上司が部下に何かを指示する際、あるいは、同僚同士で仕事をたのんだりたのまれたりする際でも、自分が口にしている内容を本気でやろうとしているのか、あるいは、やってほしいと思っているかの意思をもっていなければ、相手もそれなりにしか聞いてはくれないでしょう。つまり、適当に聞いちゃう場合もあるってことです。

5.安心

理由の最後は、やっぱり安心感じゃないでしょうか。いっしょに仕事をしていくにあたって、この人はいったいいつまでこの仕事に携わってくれるのか、と相手を不安にさせたら、どんなにわかりやすい話をしたってダメでしょ。

極端な話、ここまでの4つがすべていまひとつクリアしきれてなくても、最後まで仕事につきあってくれそうだという安心感だけは人一倍感じさせられれば、それでOKだったりする場合もあります。

わかりやすく話すことを単なるレトリックの問題にしないために

いずれにしても「わかりやすく話す」というのは、ここに挙げた5つの配慮と同時に行われていなければ、単に表面的なレトリックの問題になってしまいます。

何より仕事の上で「わかりやすく話す」ことが必要なのは、目の前の課題をコラボレーションにより創造的に解決していくためだと考えると、問題は「相手に伝わる」というだけでなく「相手とともに働ける」場をつくることになるはずですから。

普段、忙しく仕事をしているとどうしてもここに挙げたすべてをクリアしていくのはなかなかむずかしいですけど、このあたりをふつうにできるようになってくると仕事の進め方もスムーズになってくるのだろうなと思います。

 

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