情緒と行動のモデリング

昨日、とあるところで講演をさせていただく機会があって、そのなかでもコンテキスチュアル・インクワイアリーなどの観察法によるユーザー調査から得たデータを行動モデリングして、ペルソナ/シナリオに落とし込む過程をお話させてもらいました。

そこで「モデリングって、行動のフロー化のことですか?」っていう質問がありました。
そこでの僕の答えは「いいえ」でした。

行動のモデリング

確かにユーザーの行動を中心に観察し、ペルソナ/シナリオ法を使ってデザインへの落とし込みを行う場合、どちらかというと行動のフローを考える場合が多いのは確かだと思います。

インタラクション・デザインという面では、行動の大きいところから、より小さな要素まで、ユーザーとデザインするモノとのインタラクションを構造化していき細部をつめていくことになると思います。

それはフロー図のような設計図として描く場合もそうですし、実際にプロトタイプづくりという形でモノの形を具体的にデザインしていく過程においてもそうでしょう。

デザインは動きの中にしかない、という所以です。

情緒のモデリング

でも、もう一方のモデリングとして、情緒のモデリングという、さらにややこしいこともやっていかないといけないと思っています。
なので、さっきの質問の答えは「いいえ」だったわけです。

情緒のモデリングの結果は、最終的にこんな絵になります。



左側のデザイン対象がもつ要素群とユーザーの情緒面でのニーズの要素をつなぐ関係性を構造化していくわけです。

ラダリング法

これをつくる上では、ユーザー調査のインタビューの時点でラダリング法を使っていくのがよさそうだなと思っています。

たとえば、ある携帯電話のデザインを見せて、被験者に情緒的な評価をしてもらいます。被験者が「個性的だし使いやすそう」と答えたとします。そしたら、個性的なのはどうしてですかと聞き、「薄くて名刺入れみたいだから」と被験者が答えたら、さらに名刺入れみたいに見えるのは薄い以外に理由はありますかと問います。被験者が「艶消しの素材感と縁取りされたようなデザインだから」と答えたら、今度はもう一方の「使いやすそう」の理由に関しても同じように質問を繰り返していくのです。

そうすることで被験者の感じた情緒的な要素とデザイン要素の関係性が構造化されてくるわけです。こうしたインタビューをひとりひとりに行っていき、最終的に複数の被験者のデータを統合していくという流れで情緒面のモデリングができるかなと考えています。
どちらかというと、これまでは同じことをブログに書かれた情報などを集めて、人力データマイニングみたいなことをして、先の図などを作っていたわけで、それも引き続き有効かなとは思っています。

このあたりはラダリング法を使うにしても行動のモデリング以上に、個人差が出てきて判断がむずかしい面もあると思いますので、まだまだ研究が必要なところかなと思っています。
定性情報をいかに定量化していくかという面もそうですし、いかにユーザーの情緒を引き出すインタビューを行うかという面でも。
でも、エモーショナル・デザインということを考えると、このあたりのデザインの仮説創造の手法も身につけておかないといけないなと思っているわけです。

こういう面でもデザインって本当に実践的で、アートでありサイエンスなんだなって感じます。

 

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