「ユーザビリティのルールは前提にすぎない」でもすこし書きましたが、インタラクション・デザインを考える上では、人同士の対話ややりとりを参考に、動きの中でのデザインを考えることが大事だなと思っています。
仮説検証型と仮説創造型のアプローチ
最近、客先でもよくお話させてもらっているのが「これまでのデザインはモノ中心のデザイン。モノの問題点を見つけて、ここが悪いですね、直しましょうというやり方。でも、それだと改善はできますけど、イノベーションは生まれませんよね」という話。そうではなく、もう1つのアプローチとして「人間中心のデザインでは、人間の普段行っている行動をデザインの基点として、その動きのどこを変えてあげると人々の経験が向上するか、それを変えるにはどういうモノ、どういう形が必要かというところからデザインをしていく方法ですよ」とお話させてもらっています。
前者がどちらかといえば仮説検証型のアプローチだとすると、後者は仮説創造型のアプローチだったりもします。
まぁ、いずれも方向性は違えど「失敗のなかに成功がある」(from 『失敗学―デザイン工学のパラドクス』)という点ではデザイン的なアプローチで、実は僕自身は両方好きなんですけどね。
ということが前提にあって「人間は人とのほうが対話しやすい」という話。
人間は人とのほうが対話しやすい?
まあ、人それぞれいろいろなので、すべての人がそうだとは言いませんが、多くの人はWebやパソコンと対話するよりは、人同士のほうが会話のキャッチボールはしやすいんじゃないか、と。それから企業のような法人相手より、ふつうの個人のほうが親近感もあって話しやすいのではないかと思います。
もちろん、個人相手でも話しにくい相手というのはいて、そういう人と話すよりはパソコンや会社、ぬいぐるみに話しかけるほうがよっぽど気が楽ってことはままあるでしょうけど。
ここがひとつ、ユーザビリティだったり、Webコミュニケーションを考えるポイントだと思うです。
人への親しみ、人の匂い
できるだけインタラクションを人と人との対話に近づけること、人間同士のコミュニケーションに近い形を用意すること。できれば経験価値が重視される場面では実際の人同士のコミュニケーションに変換すること。Webで提供される情報でも誰が書いたかわからないものよりは、誰が書いたか明確なもののほうが親近感はわきやすいと思います。法人格で書かれた事務的なものよりは、人の匂いのするほうがとっつきやすい。たくさんの情報入力が必要なWebの申し込みフォームでも、一般的なHTMLフォームだとコンバージョンが5~10%程度しかないものが、PIP(person in presentation)を使うと20%くらいのコンバージョンになったりするのも、単にFLASHだからわかりやすいというだけでなく、このあたりが関係していると考えていいでしょう。
また、ブログなどを用いて、個人名義で書かれたものが連続性をもって発信され続けていれば、名無しの法人名義で発信される情報より親しみがわきやすく、個人のスター性も発揮されやすかったりします。何より個人ベースで発信されたもののほうが口語ベースだからということもあってか、同じ内容であればわかりやすさもあります。
しかも単に、そうしたコミュニケーションは、その個人への親しみにつながるだけじゃなく、それが書かれた場としてのWebや個人が所属する会社への信頼につながることも期待できます。
コミュニケーション、デザイン
人への親しみが他に勝るひとつの理由はやっぱり生まれたときからのやりとりの量が圧倒的に多いからなんでしょうか。人それぞれ人とのコミュニケーションが苦手な人もいれば得意な人もいて個人差はあると思います。それでもコンピュータや組織とやりとりするよりは個人相手のやりとりのほうがふつうにできるという場合のほうが多いでしょう。
まあ、プロトコルに互換性があることとそのプロトコルを使ってやりとりする内容に相互互換性があることは別ですから、人同士の場合も互いに話はできる分、話しにくさが生じてしまうということも多々ありますけど。
まぁ、Webコミュニケーションを人同士のやりとりに近い形で落とす込むのはわりと簡単だと思います。それこそ単純に個人を立てればいいんです。そして、ちゃんとその個人が自分の言葉で発言しさえすれば。
でも、それを何かしら形のあるもの、あるいは、システムに落とし込もうとするちょっと工夫が必要。その工夫が「人間の普段行っている行動をデザインの基点としたデザインのアプローチ」、つまり、人間中心設計の手法をうまく取り入れながら、デザインチームがそれぞれどんなインタラクションを、すでにある人々の行動のなかに新しく埋め込んでいくかというアプローチになるんだと思うんですね。
人間中心デザインのアプローチの課題
このあたりの話はいろんなところで話していても反応が大きく2つに分かれます。なぜ分かれるのかはまだ自分でも説明しきれる理由にちゃんと思い当たってないのですが、ただ、頭だけで考えちゃう人やそもそも他人に対する興味がない人はわりと拒否感を示しちゃうのかなと感じています。
まぁ、他人に興味のない人、頭だけで考えて行動がともなわない人は、別に人間中心のアプローチを採用するかどうかの以前に、結果を出すのがむずかしいのかなとも思いますけど。
最初の仮説はどうなったかって?
それは今後も人間中心デザインのアプローチを進めていく上での懸賞課題だと思っています。
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