道具のカタチとリクワイアメントエンジニアリング

道具のカタチを考える上ではこんな変数=制約があるのかなと考えてみました。



  • 道具のカタチは「(利用者が道具を使う)目的」に制約を受ける
  • 道具のカタチはまた「目的」の具体的な「対象」に制約をうける(例:はさみは紙を切る、衣料用洗剤は衣服の汚れを落とす、etc.)
  • 道具のカタチを実現するためには道具の素材の制約がある
  • 道具のカタチはすでにその道具がたどってきた「歴史」や現在の「社会/経済」の制約を受けている
  • 道具のカタチは利用者の「利用行動」に制約を与える、そのため、「利用行動」の経験を良好なものにするためには道具のカタチの最適化が求められる
  • 「利用行動」は利用者の「個人史」に制約を受ける(リテラシー、年齢、etc.)
  • また「利用行動」は「社会/経済」の制約を受ける(「箸は右手、茶碗は左手」、水不足なので水を大切に使いましょう、etc.)
  • 「目的」には「背景」がある
  • さらに「利用行動」はそもそも生物進化のなかでいまの身体のデザインに進化した人間の身体のデザインの制約を受ける

こんだけ変数があると大変です。
これらが道具のカタチを進化させるための淘汰圧として働きます。
そして適応性のないデザインの道具は生き残れません。
なので道具を生き残らせるためには、これだけ多くの変数を組み合わせながら、デザインをしなくちゃなりません。

力の関係のネット

でも、デザインってずっとそういうことをやってきたんだなって思います。それは計算によって各変数の変化の結果を探るやり方ではないよね。こんだけ組み合わせがあると、計算じゃどうにもならないと思います。

空気を伝わる圧力、
くもの巣のように張り巡らされた力の関係のネットが見えるんです。

このデザインは、この部分できらわれるということがわかるんです。

残念ながら僕にはそんな風にすーっと力の関係が見えることはありません。
でも、「すーっと」じゃなければ僕もそれが見える方法論とそのスキルをもってます。

それが人間中心のデザインでいうところのリクワイアメント・エンジニアリングという活動です。

リクワイアメント・エンジニアリング

ISO13407:"Human-centred design processes for interactive systems"(インタラクティブシステムの人間中心設計プロセス)では、プロセスをまわすための活動の3つの大きな区分として以下が定義されています。

  • リクワイアメントエンジニアリング(RE)活動:ユーザーの利用状況の分析、ユーザー要求仕様の立案などを行なう活動
  • ユーザビリティーエンジニアリング(UE)活動:ユーザー要求仕様をベースにユーザビリティーを配慮したプロトタイプを開発する活動
  • ユーザビリティーアセスメント(UA)活動:ユーザビリティー評価基準を作成しユーザー要求に沿っているかを評価する活動

Contextual Inquiryなどを中心にユーザーの利用状況や潜在的なニーズを把握したり、ペルソナ/シナリオ法を用いてユーザー要求仕様の立案したりするのが、人間中心デザインでのリクワイアメントエンジニアリング活動になります。

ユーザビリティテストの実施により、ユーザビリティーアセスメント活動も行いますが、どちらかというと僕自身はマーケティング畑の出身ということもあり、リクワイアメントエンジニアリング活動に重点を置いています。

結局、僕は空間に輪郭を描いている。

僕は空間に輪郭を描くところまではいきません。でも、リクワイアメントエンジニアリング(RE)活動を行うことで空間に浮かぶ輪郭くらいは発見することができます。その輪郭は主にユーザーの行動の痕跡です。

ユーザーの行動の痕跡を追うことで道具のカタチが浮かび上がってきます。
また、道具の歴史や社会/経済的環境における道具の位置(例えば競合製品との関係も含まれます)がわかるとそのカタチはより明確になってきます。

そうやって道具のカタチの淘汰圧となる制約条件を見つけていく。それがいま僕にはとても面白い。
まだまだ学ばなきゃいけないこと、身につけなきゃいけないタスクは山ほどありますが、ようやくやりたかったことができはじめているなという感触はあります。

  

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