以下、すべて長町三生『感性工学―感性をデザインに活かすテクノロジー』より引用。
感性工学とは、「人間がもっている願望としてのイメージや感性を、物理的なデザイン要素に翻訳し、具体的に設計する技術」のことをいう。
長町は、物質文明の次に必ず心の満足を求める情緒時代が到来すると予測を立て、1970年に情緒工学(Emotion Technology)を創設して研究に打ち込み、1988年の第10回国際人間工学会(シドニー)で、情緒工学の名称を感性工学(Kansei Engineering)に改めて、17年間の研究を発表して世界から好評を得た。
古い話であるが、心理学者のオスグッドは1958年に、このような対になった形容詞群で人間がもつ感情の意味空間を測定できることを証明し、その評価尺度を意味微分法(SD尺度)と名づけた。SD尺度は、現在でもマーケティング調査などでよく使用される方法である。
言葉を収集する作業の第一歩は、どんな感性の世界を対象とするかを決定することである。
可能である限り数百個の形容詞を収集する。筆者たちは通常、600個から800個のイメージ形容詞を集めるように心がけている。あわせて『感性とデザイン』も読んでますが、感性工学ってなんかすごくマーケティング寄りなのが気になります。いまちょっとしたマーケティング嫌いなので。
あと感性なので仕方がないことですが、人間の意識にあがったものばかり(たとえ、それがあいまいなものであれ)を対象にしてデザインをうんぬんいうのは、すこし違和感が・・・。
これまで食わず嫌いかと思ってましたが、どうも食べてもそんなに好きになれそうになさそう。
でも、ここまで行くとちょっと面白くなります。
今日ではむしろデザインの文脈性(コンテクスト)や関係性がより重要になってきている。すなわち、コンセプトのあいまいな商品は魅力がなく、ましてやコンセプトが表現できていないデザインは感動を生むこともない。同時に押し付けのコンセプトや顧客ニーズから離れた独りよがりのコンセプトも市場では淘汰されてきている。
感性を分析できたとしても、それをデザインと結びつけることにはむずかしさがあると思っています。初期の感性工学的な要素還元的で分析的なアプローチでは科学がはまった還元主義のわなを避けられないと思うので。
その点、こうした言葉には逆に好感がもてます。
マーケティングにおけるユーザーの価値観を求める定量的解析を、デザインにおける造形の評価と結びつけることは依然として難しい。
そもそもデザインとは分析的な手法ではなく、統合的な手法だと思っています。感性工学が分析的なアプローチにとどまるなら、ちょっと先がないなと思いますけど、そうでないところもありそうなのはちょっと期待できそう。
もうちょっと勉強してみます。
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