学生さんによるユーザビリティ・テストの風景を見せていただいたり、先日、ゼミの学生さんたちが参加された日本デザイン学界でのプレゼンもしていただき、とてもおもしろかったです。
ユーザビリティはおもしろい
さっきも書きましたが、浅野先生がおっしゃるにはゼミの学生さんたちは最初、ユーザーテストなどをめんどくさいと思うらしいのですが、実際にやっていくうちにどんどんおもしろく感じるようになり、誰に強制されるわけでも遅くまで学校に残って作業をしたり、土日にも学校にきていろいろやったりするようになるそうです。その感覚は僕にもとてもよくわかって、実際、ユーザビリティとかユーザーエクスペリエンスなどを考える際に、一番おもしろいのはユーザーに向き合うときです。
やればやるほど、ユーザーのこと知らないでいったいどうやってデザインするんだろう?って気になってきます。ただ、これも浅野先生と意見が一致したのですが、こればっかりは実際にやってみないとその面白さが伝わらない、その効果がわからないものであるのも確か。
実際にユーザー調査とかユーザー評価を行わないでデザインする人が堂々と「使いやすさを考えました」っていうのって不思議ですよねというところでも浅野先生と意見が一致したり。なかなかおもしろい時間をすごせました。
ユーザビリティの核にあるのはユーザーのことをどれだけ考えられるか
浅野先生と話して一番感じたのは、さすがに10年やってらっしゃるだけあって、ユーザビリティ、ユーザー評価法のことが身体に経験として染み付いてらっしゃるなということです。学校ではもちろん、ユーザーテスト法だとか、ペルソナ法だとかといった手法を教えていて、それを実際の企業からの依頼で実践の場で使ってらっしゃるのですが、お話していて強く感じたのは、ユーザビリティの核にあるのはそういったスキル、ツールそのものではなく、結局、ユーザーのことをどれだけ考えられるか、ユーザーを目の前にした際にどれだけユーザーと自分たちがデザインしようとしているもののインタラクションを感じとれるかということなのだという点をしっかりブレずに押さえてらっしゃる点です。
だからこそ、学生さんたちにもいろんな場での経験を与えようとされていて、人の動きや考え方というものが場によって大きく変化するということをとても重視されているのだなと感じました。
この実践と経験の積み重ねがちゃんと方法論に結びついている点が僕なんかからするととてのうらやましくて、もっとがんばって経験を増やそうという気にさせていただき、とても感謝です。
ユーザビリティの拡がり
もう1つお話していておもしろかったのは、これからのユーザビリティの拡がり、可能性についてです。1つには、今後ますます小型のディスプレイをもった製品が増えてきて、WebやPC上のソフトウェア同様に、ユーザビリティ、ユーザーエクスペリエンスが製品価値を左右するであろう点。そうそう。Webだけじゃないんですよ。これは僕もずっと感じている点です。少なくともブラウザの中だけじゃない。
もちろん、デジカメや携帯電話をはじめとして小型のディスプレイを内蔵している製品はこれまでもありました。ただ、それが小型ではあっても大型化する傾向がでてきて、これまでよりもすこしデザインの自由度が上がってきている。その際、大きさの制約で遊びがもてなかったUIも遊びを取り入れられるようになってきます。
そんな風に自由度が高まれば制約の中で「使いやすさ」だけを考慮すればよかったデザインから、よりユーザーの経験価値を高めてそれ自体が製品価値につながるようなデザインが要求されるようになります。その際、機能を階層構造化してドリルダウンさせていればよかった機能重視のデザインは、よりユーザーの情緒面を考慮したデザインが求められるようになります。その際、人間中心のデザイン手法をベースにしたエクスぺリンス・デザインができるかどうかがデザインする側の価値にもつながってきます。
もう1点は、やはり巨大なマーケットである中国の存在。いまはまだユーザビリティがどうこうという段階ではないらしいのですが、とうぜん、韓国がユーザビリティを気にするようになったように、数年すればユーザビリティが求められるようになります。その際、中国という巨大なマーケットをどう捉えるかは1つポイントでしょう。
ありがとうございました
などなど、とても楽しい話をいろいろ聞かせてもらいました。浅野先生、ゼミの学生さんたち、今日はありがとうございました!
企業の方と話すのももちろんためになりますが、こういった学校で情報デザインやユーザビリティのことを学生とともに学んでいらっしゃる先生とお話しするのは非常に勉強になります。
ぜひ機会があれば別の学校の先生ともお話できる機会がもてればと感じました。
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