システムのデザイン段階で登場するゴムのユーザーは、
- 幅広いユーザーを定義してしまったり
- ユーザー定義があいまいだったり
することから生まれる、デザインチームの都合に合わせてくれる伸縮自在の便利なユーザーのことを指します。
もちろん、ここで「便利」といっているのはデザインに関わる人にとって都合がよいという意味です。実際には、そういう過程でデザインされたものは結局誰にとっても使い勝手が悪く、ユーザーにとってはこの上なく不便な状況をもたらす、最悪のユーザー像だったりします。
なぜゴムのユーザーは生まれるのか
「ユーザー」について話し合う場合、話し合いに参加するメンバーがそれぞれ別の「ユーザー」像を描いてしまう恐れは常にあります。それぞれは特定のユーザー像を思い浮かべていても、メンバー間で話し合われる総体としての「ユーザー」はそれぞれが思い浮かべたユーザー像がまざりあったまま、伸縮自在性をもつゴムのユーザーとなるわけです。ゴムのユーザーの登場を避けるには
そこでペルソナが役に立つ。ペルソナはあいまいな「ユーザー」という言葉と違って、個々の実在する人物から抽出した人物像です。ペルソナを使うことでメンバー間で1つのユーザー像を共有できるようになります。1つの明確なユーザー像を共有できれば、焦点を絞るべきユーザーニーズも明確にできます。
ペルソナは何を変えるべきかを教えてくれる
ペルソナは何を変えるべきかを教えてくれます。ペルソナとその行動シナリオには、製品やWebサイトに対するユーザー(それもゴムのユーザーではなく、ある特定のユーザーであるペルソナ)のゴールやニーズ、期待、問題点が含まれています。それが新しいイノベーションへの道を指し示すヒントになります。万人の好みに合わせようとした製品は、万人にとって不満が残るものになってしまいます。
それよりも最も重要なペルソナをターゲットとして製品をつくるほうが理にかなっていて、しかも結果的には大多数の人に喜ばれる製品がつくれるのです。
ユーザーを特定し、そのユーザーの行動やニーズを特定すること。
これもユーザビリティの基本です。
特定の利用状況において、特定のユーザによって、ある製品が、指定された目標を達成するために用いられる際の、有効性、効率、ユーザの満足度の度合い。
ISO9241-11
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この記事へのコメント
AC
ペルソナについて言及するなら、この根本的な争点を避けることはできないはずですが。
tanahashi
しかし、そもそもユーザーの数だけデザインの種類があった場合、ユーザー自身もそのバリエーションの違いを認識できるかという問題がありますよね。
結局、特定して意味があるのは、ある特定のユーザー行動のパターンであり、ある特定のユーザーのニーズに限定することが有効なのでしょう。
そして、その見出されたパターンの数に対して、実現可能かつユーザー自身が違いを認識できるだけのバリエーションもしくはメインターゲットである主ペルソナを優先した形でデザインを作成するのが現実的だと思います。
というわけで、現実ベースで考えれば、特に論争が必要なことではないかと思いますが、いかがでしょう?