※ちなみに、First Penguinとは、英語圏では、勇気を持って新しいことにチャレンジする人のことを指すそうです。僕も前にこんなことを書きました。
人間は規制を嫌う。オープン・ソース化の今だからこそ、柔軟性のあるサービスが求められている。ユーザーの創造性を活かさなければならない。ユーザーに、サービスをハイ・ジャックさせるイメージ。完全体をリリースするよりも、問題点を察知し、改善していくプロセスの方が人々には認められやすいのではないか。
First Penguin さんは、はてなの50%ルールにも言及されつつ、すべてサービス提供側が完璧な形でリリースするのではなく、「サービスをハイ・ジャックさせる」形でユーザー側が自分の手で、自分の好きなように、サービスをカスタマイズできるサービスや、ユーザーからのフィードバックを経ながら改良されるプロセスをもったサービスについて書いてらっしゃいます。
クリエイト可能であるというユーザビリティ
最近仕事で、団塊ジュニア世代(大体、30歳~33歳くらい)とポスト団塊ジュニア世代(20歳~29歳くらい)の違いについての話を聞いてなるほどと感じたんですけど、団塊ジュニア世代まではまだ残っているブランドに対する信頼みたいなものが、ポスト団塊ジュニア世代になると、もうあまりなくて一般的によいといわれるものより、友人や知人、家族など、自分に身近な人がいいと言っていたものをよいと感じる傾向があるそうです。そして、同時に誰にでもよいものではなくて、自分や家族にとってよいものしかよいと感じない傾向もあるようです。この感覚が、First Penguin さんが書いてらっしゃる、ハイジャック可能なユーザビリティの話に近いものがあるなと感じました。
それからすこし前ですが、Tech Mom from Silicon Valleyで見つけたこんなエントリーとも通じるところがあるな、と。
ある面では日本よりもさらに豊かでモノがあふれているアメリカの若い子たちが、じゃぁ何を面白がっているかというと、何かをクリエイトすることかな、と思う。YouTubeのビデオやブログだけじゃない。昨日のエントリーにあるように、本格的に投稿する人の数はすごく少ないのだが、例えば「アメリカン・アイドル」があれだけ社会現象になるのは、自分たちで投票することでスターをつくりあげるという、一種のクリエーション・プロセスへの参加感があるからだと思う。
クリエイトが可能であるというのが1つユーザビリティの条件に加わるとしたら、なかなかおもしろいなと感じます。
ユーザビリティの3つの品質基準
さて、First Penguin さんも先のエントリーで紹介されていますが、ユーザビリティとは特定のユーザーが特定の状況で特定の製品を利用する際の以下の3つの度合いであるとISO9241-11では定義されています。- Effectiveness(効果)
- Effeciency(効率)
- Satisfaction(満足)
先日、Webマーケティングビジネススクールの特別講座「『誰のためのWebデザイン?』 マーケティングを顧客志向にする人間中心設計プロセスとペルソナ/シナリオ法」でお話させていただいた中では、上の3つのユーザビリティの品質基準問題を下記のようなマトリクスで整理してみました。

お話させていただいたのは、見た目や形(いわゆるデザイン)は気に入ってるけど、使いにくい商品(例えば、僕がいま使っているモトローラRAZRという携帯電話とか、すぐ壊れるけど愛着がもてるクルマとか)が一方にあり、もう一方では普段使っていて何の不便も感じないが、かといって何の魅力(満足)も感じないごくごく普通の何の変哲もないホッチキスやハサミ、ダブルクリップなどの文房具などがあります。
その2つが左下と右上に位置している。その一方で、デザインもわるいし、使い勝手も悪いというどうしようもない商品(効果問題)があるわけです。
もちろん、実際には3つの問題はこれほどきれいなマトリクスにおさまるものではありません。満足度は決してデザインのよさだけからもたらされるものでもないでしょうから。
ユーザビリティは複雑な課題である
で、僕はてっきり効率問題や満足度問題は度合いがあるけど、効果問題ってのは使えるか使えないかの二者択一的な問題かなとごくごく最近まで思っていたんですが、いま読んでるノーマンの『エモーショナル・デザイン―微笑を誘うモノたちのために』にこんなことが書かれていて、なるほどと思ったんです。ユーザビリティは複雑な課題である。要求したことを果たし、理解できる製品でも、使えないこともある。ギターやバイオリンは与えられたタスクを果たすし(音楽を奏でる)、理解するのもたやすいが、使うのは非常に難しい。(中略)楽器が他のものと比べて使いこなし難いのを許容させているのは、他に代わるものがないのと、使いこなせればそれだけのことがあるからである。ドナルド・A・ノーマン『エモーショナル・デザイン―微笑を誘うモノたちのために』
楽器を使いこなすのには何年もかけて練習する必要があります。さらにそうしたとしても所詮、素人であればそんなにうまくはならなかったりします。でも、練習することで、すくなくとも楽器のユーザビリティにおける効果の度合いはだんだんと上がっていく。効果問題は0か1のデジタルかと思っていましたが、どうやらそれは勘違いだったようです。
それが最初に引用したFirst Penguin さんの「サービスのハイ・ジャック」にも通じているのだろうなと感じるわけです。はてなの50%ルールに代表されるようなβ版では、最初はユーザビリティにおける効果の度合い(使える-使えない)は、それこそ中途半端な位置にあるのかもしれない。
しかし、その中途半端にこそ、楽器を練習してうまくなったり、サービスを自分好みにカスタマイズできること、パーソナライズできること、クリエイトできることからくる喜び(満足度)が芽生えるのかもしれないなと思います。
ユーザビリティは複雑な課題である。
まさにそのとおり。
それは規則を嫌ったり、面倒な仕事、手間のかかる作業を逆に楽しく感じたりすることもある気ままな人間の関係を扱うものだからなんでしょう。
でも、そういう一筋縄ではいかないところがあるからこそ、ユーザビリティっておもしろいなと思います。
そう。人を理解しようという分野だから、僕にはそれがおもしろく感じるんだろうなと思います。
関連エントリー
- ユーザビリティ考(2007年GW版)
- 人間中心のデザイン:僕がこれからやろうとしていること
- 人を賢くする道具―ソフト・テクノロジーの心理学/ドナルド・A・ノーマン
- 「物」ではなく「リアリティー」を、「形」ではなく「アフォーダンス」をデザインする
- 組織というシステムも使い勝手が悪いと使ってもらえない
- ユーザビリティという言葉の適用範囲は? Web? インタラクティブシステム全般?
この記事へのコメント
スカラ座
少し異なる観点ですが、「仕事は楽しいかね?」で言及されている、
「人は、変化は大嫌いだが、試してみることは大好きなんだ」という言葉の
「人」を「ユーザ」にたまたま置き換えてみるととてもしっくりと納得できました。
私の単なる新たな気づきという点ですが、とても有意義なエントリーでした。
tanahashi