きっかけは先日、ある方にその質問を投げかけられたからです。
お茶をしながら。
そのときは明確な答えとしての言葉が自分のなかに見つからなかったし、自分のことよりもヘンにまわりに気を使ってしまったこともあり、答えが見出せませんでした。
でも、まわりに気を使って自分のやりたいことを答えられないなんて、「情熱をもつこと、表現すること」というエントリーで言ってたことと違うので、自分のなかでとても気持ち悪かった。
めずらしく個人的なことを書いてみましたが、周囲への気配りや調整も大事ですが、それ以上に自分自身の情熱を失わないこと、そして、それを表現することは他の人にとっても大事なことだと思ったので、エントリーとしてたててみました。
「自分自身の情熱を失わないこと、そして、それを表現すること」。
ずっと気持ち悪かったのですが、結局、そうするしかないと。今はそう思います。
人間中心のデザイン
結局、いま、僕がやりたいのは何か?それは、人間中心のデザイン、です。
仕事としていうなら、人間中心の思考にもとづくデザイン・コンサルティングです。
さらにクライアントに提供する価値は何かという点でいうなら「イノベーション」のサポートなのでしょう。
ここ何ヶ月かの間、ずっと考えていたのは、モノをデザインすること、特にテクノロジーや科学をベースにした工業製品、科学技術応用製品ののデザインから、そもそもの人間という生物がもつ性質、人間が行っている生活や思考、そして、趣味や嗜好性にあわせてモノをデザインするということへの視点の転換です。
"モノづくり"という視点からはじめるのではなく、人間が何かの欲望や必要性に駆られて行う一連の行動プロセス全体をサポートする"アーティファクト(人工物)群をデザインする"という発想に変える必要があるなということです。
モノではなく、人間の行動プロセス全体をデザインする
ようするに、僕がいま感じているのは、現在のデザインはユーザビリティやアクセシビリティをどうこう言ったところで、あくまでモノのほうからしか発想していないということです。そこではテクノロジーの限界がデザインの限界になってしまっています。
例えば、人間中心設計と同じような意味で用いられるユーザー中心デザインという言葉さえ、モノを使うユーザーとして、人間を限定してしまっていて結局はモノ中心のデザインになってしまっているのだなと最近は感じるようになりました。
しかし、それはおかしいと思うのです。
もちろん、実現する際にテクノロジーが限界になることはあっても、解決手段はなにもテクノロジーだけではないはずです。いや、もっというと解決手段のすべてがモノである必要さえありません。
デザインすべきはモノではなく、人間があるゴールに到達するプロセスの全体であるべきだと思います。すくなくともテクノロジー中心のデザインではなく、人間中心のデザインであるのなら。
僕がやりたいし、やるべきだと考えているのは、世の中をすこしずつでもテクノロジー中心のデザインから人間中心のデザインへとシフトさせていくための活動です。具体的な仕事としては、実際の人間中心のデザインを支援するコンサルティング活動なのだと考えています。
具体的なサービス手法は、ここ最近取り組んでいるアレらですから、やることそのものは現在の延長線上にあるものとすこしも変わらないという気がしています。
でも、見せ方が大きく違う。そして、おそらく対象もWebのみではなくなるのだろうな、と。
参照元はルネサンス
そこでイメージしているのは、中世からルネサンスにおける神の視点から人間の視点への移行です。同じように、テクノロジーや科学の視点から、論理や確実性、エンジニアリング的な発想のみだけでなく、物語、不確実性、デザイン思考を取り込んだ人間中心の視点へ移行する必要があるのだと思っています。
それはたぶん、10年、20年のスパンではなく、もっと長いスパンでの社会変化に対応するためのあり方であると予測しています。
捨てるべきもの:マーケティング
先ほど、やる内容は現在の延長線上にあっても見せ方は大きく違うだろうと書きました。その見せ方の違いとして、1ついまの僕から捨て去るべきは「マーケティング」という言葉なのだろうなと感じています。
自分がいまからやろうとしている「人間中心のデザイン」が「マーケティング」と関係がないなどとは僕自身はまったく思っていません。その意味でやる内容はこれまでの延長線上にあるものと考えています。
しかし、一方で世の中にひろく受け止められている「マーケティング」という言葉の印象は、僕がイメージしているそれとはどんどんかけ離れていっている。そして、かけ離れていくそれは僕がやりたいこととはすこしもかぶらない。
実はそれが最近の1つの悩みの種だったわけでもありますが、昨夜、ようやくその言葉にこだわるより、自分が本当にやりたいと思っている「人間中心のデザイン」というものに情熱を傾けたほうがよいだろうと決心しました。
とはいえ
もちろん、自分が決心したからといって、すぐに何かがガラッと変わるわけではありません。「マーケティングを捨てる」ということ1つとっても簡単ではないはずです。
それでも、「周囲への気配りや調整も大事ですが、それ以上に自分自身の情熱を失わないこと、そして、それを表現すること」は大事なことだと思っています。
自分自身にとってはもちろん、周囲にとっても結局はプラスになるはずだと個人的には思っています。
とはいえ、それは僕自身のわがままからはじめることなので、根気強く話して協力してもらえるよう調整をしていく必要があるのだと思いますが。
と、まずは自分を鼓舞するための、ブログでの宣言でした。
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