技術で戦うということの脆弱性

さて久しぶりに「デザイン」以外の話題を。

今ではそのこと自体、疑問をもたれてはいるものの、長い間、日本企業の競争優位性は高い技術力にあるとされていた時代がありました。そうした流れの延長線上での理解からか、昨今、業績のよいGoogleなどに関してもその技術力の高さが成功の要因であるかのように見られることもあります。

しかし、それはおそらく大きな誤解なんだろうと思います。
企業が技術力の高さで優位性をもつなんてことは、ほんの一時的な期間であればありえたとしても、中長期的にみればありえないことであるはずだからです。

そもそも模倣可能な技術

その理由は、技術というものが比較的模倣しやすいものだからで、中でも科学技術、工業技術であれば、なおのことです。

エンジニアリングというのは、あるレベルの確実性をもったルールの集合により、問題を分析的に解決していく手法なのですから、ある企業が一時的に革新的な技術によって成功をおさめたとしても、その技術はある程度の時間をすぎれば他社によって分析的に模倣され、技術は転用可能なものとなります。
そう。特許などに守れていない限りは。

科学の実験は、そもそも誰がやっても同じ結果がでることを前提としています。違う人が同じことをやって別の結果が出てしまうのであれば、それは科学とは呼べないでしょう。
エンジニアリングもまた特定の手法を用いて行うのであれば、その技術を習得したものが行った場合は同じ結果が出なくてはエンジニアリングとさえ呼べないはずです。その技術の習得には一定の時間を要したとしても、時間さえかければ習得が比較的容易であることに変わりはありません。
それが技術やエンジニアリングのそもそもの定義なのですから。

そうだからこそ、科学技術、エンジニアリングが企業の競争優位性を絶対的なものにする要素としては適していないと思うのです。

当たり前ですけど、長期にわたる競争優位性を維持したければ、できるだけ競合他社の模倣がむずかしい(とはいえ、模倣ができないものはない!)ものを自社の競争優位性にする必要があるわけです。
例えば、ブランドの歴史とかは模倣はしにくいものの1つでしょうね。

技術の保持自体は競争優位性とはなりえない

もちろん、そのことは企業にとって高い技術力をもつことが無意味だということを意味しません。そもそも競争相手と同等以上の技術力を維持しなければ市場での競争を勝ち抜いていくことはむずかしいはずです。常に自社の技術力を高めることは企業の学習・成長を考える上では当然のことだと思います。

ただ、ここで問題にしているのは、それは勝つための要素ではなく、負けないための要素であるということを認識する必要があるということです。
どんなに高い技術を有していても、市場環境における競合他社が同等の技術を有している場合や、顧客にとってその技術の保持がなんの価値にも感じられていない場合、それが競争優位性につながることはないということです。

何が競争優位性になるかは戦況によって違う

では、なにが企業にとっての競争優位性となりうるのか?

その問いに確固とした答えなどもちろんありません。
戦況は常に変化し、その時々の戦況に応じて何が競争優位性になるかも決まってくるのだといえるでしょう。

例えば、「マイケル・トレーシーとフレッド・ウィアセーマの3つの価値基準」で書いたように、

  • オペレーショナル・エクセレンス戦略
  • 製品リーダー戦略
  • カスタマー・インティマシー戦略

が競争優位性の鍵を握る場合もあるでしょう。

「オペレーショナル・エクセレンス戦略」をとる企業であれば、シックスシグマのようなツールを用いることで、その戦略をさらに推し進めることができるでしょう。

マーケティングは元来、顧客志向であり、そのことから「カスタマー・インティマシー戦略」を推し進めようという企業は多いかもしれませんが、それもすべての企業が同じように顧客志向で顧客のニーズに忠実になろうとすれば、結果としてどこも差のない商品展開、コミュニケーションをはかるはめにもなりかねません。
もちろん、そこに競争優位性は生まれません。

一方、最近のトレンドでいえば「組織のクリエイティビティ」「イノベーション力」現在の市場環境においては、競争優位性になることもあるでしょう。(「デザイン戦略とはデザインプロセスを経営戦略として立案すること」参照)

しかし、それも自社にとっての戦況がどうなのか。
同じ市場環境で戦っていたとしても、市場リーダーとして戦うのと2番手、3番手として戦うのとでは戦略はおのずと違うはずだし、より戦力的な分の悪さがある企業であればゲリラ戦略、ニッチ戦略をとることが競争に勝つためには必要でしょう。

戦況を読んで適切な戦略をたてる力がマーケターには必要なんでしょうね。

   

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