結局は「デザイン過程においては、そのデザイン・プロセスそのものをデザインすることが重要なんだ」と。
デザイン・プロセスに対する守破離
「デザインは"デザイン"の下流工程ではない」では、脱「5 Planes Model」ということで、ビジュアルデザインを企画段階においてはじめる、ホンダのラグビーアプローチに近いモデルが必要だと感じていることを書きました。これまでこのブログでは、Jesse James Garrettの5 Planes ModelやISO13407の人間中心設計プロセスを紹介してきましたが、そうした標準的なプロセスは基本として学ぶことはとても重要なことであっても、それに縛られてはいけないと思っています。
理由はそのプロセスに縛られてしまうことによって、参加メンバーの創造性が失われたり、組織的にも発想が硬直してしまい、新しいものが生み出せなくなってしまう可能性が大きいと思うからです。
デザインは"デザイン"の下流工程ではないと思うのも、まさに同じ理由です。
最終的にビジュアル・デザインのクオリティを高め、それを武器にしようと考えるなら、それを得意とする人をプロジェクトの中心に据え、ビジュアル・デザインを最上流にもってくるデザイン・プロセスを設計することだってアリだと思います。
大事なのは、基本の型を学び、その型を破り、そして、型から離れて創造的に行動できるようになることだと感じます。
専門性は縄張りではなく信頼
デザイン・プロセスにこうした柔軟性をもつことが重要だと思うのは、各工程にたずさわる人が孤立することなく、常に周囲とのコラボレーションの意識を維持していくことを可能にしてくれると思えるからです。コラボレーションについては「サッカーチームに学ぶ5つのチームワークの鍵」というエントリーでも触れました。
全員がボールに触れる。
ボールという責任をチーム全員で共有すること。チームなので誰かひとりが何の責任ももたないということではゲームは成り立ちません。デザインチームにおいても必ず参加するメンバーのすべてに重要な責任をになわせることがホットなチームで創造的なデザインを開発するためには必要なことだと思います。
サッカーチームに学ぶ5つのチームワークの鍵
全員がボールに触れられるようにすること。そして、オランダのトータル・サッカーのように各自が自分のポジションだけにこだわらず、複数のポジションを守れる技能を身につけ、ゲームの流れに応じて臨機応変に対応できるようにすること。
「とにかく自分の専門性にこだわってはダメで、外にある他の専門性といかに交わるかが重要だと思っています」とも書きました。
また、1つの前の「デザインにより人びとの生活を豊かにすることを真剣に考える」というエントリーでも、
ヘンにガチガチに機能分化させたりするんじゃなくて、ビジュアル・デザイナーがマーケティング語ってもいいし、システム・エンジニアがユーザビリティ語ってもいい。ビジネスコンサルタントがスタイルシートを語ろうが、サーバー管理者がブランディングに関するアイデアを述べたっていい。
デザインにより人びとの生活を豊かにすることを真剣に考える
とも書きました。
専門性を人に固定してしまい、縄張り争いを避けるためにも、専門性をよりフリーなものとして捉え、専門=縄張りではなく、専門=周囲からの信頼に変えていかなくてはならないと思います。
もちろん、周囲からの信頼を得るためには、ボールまわしの中でパスする相手の利益、そして、組織全体がゴールを目指すうえでの利益を考えたうえでのパス出しが必要になるのでしょう。
デザイン・プロセスをデザインするために
しかし、こうした個々の能力を生かすためにも、デザイン・プロセスを固定せず、各プロジェクトごとの要求に応じて、デザイン・プロセスそのものをデザインしていくことが必要になるのではないかと考えます。それには、
- タスクがモジュール化されていること
- 各タスクを担当する人がプロジェクトに
よりリーダーの役目もこなせばメンバーの役割もこなせるスキルをもつこと - 各人は複数のタスクをこなす複合的な専門領域をもつこと
- モジュール化されたタスク、担当者、アウトプットを組みあげるためのタスク間インターフェースをもつこと
- 全体を組み上げるためのフレームワークを有すること
などが必要になるのでしょう。
結構、実現するには難易度の高いことだと思いますが、こうした組織ができれば組織の創造性は非常に高まるのではないかと思っています。
関連エントリー
- デザインにより人びとの生活を豊かにすることを真剣に考える
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