扱われる問題は次のように定義されています。
「1.デザインとは何か? デザイン行為の中では何が起こるのか?」
「2.デザインを幅広く理解して、それをソフトウェア・デザイン領域に応用することによって、ソフトウェアをどう改良できるのか?」
目次をみて、ちょっと読み始めたけど、なかなか面白そう。
デザイナーが何かが機能すると言う時(たとえば、本のカバーのレイアウトや集合住宅のデザインなど)それはもっと広い意味を持っている。優れたデザインは、価値観や必要性というコンテキストの中で人に役立ち、クオリティという満足のいく経験を生み出すものをつくるものだ。
テリー・ウィノグラード『ソフトウェアの達人たち―認知科学からのアプローチ』
この「価値観や必要性というコンテキストの中で」だとか、「クオリティという満足のいく経験を生み出す」ことこそが、デザインのもつ有効性、価値ですよね。
usability.
この言葉の定義とデザインという行為の関係をもう一度考え直さないといけないと思います。
この言葉に「1つの答え」などありえない。usabilityを実現するデザイン手法だって、決して1つではないと思う。ISO13407にような標準的なプロセスを参照するにしても、デザインという創造的な行為をそこに縛るのはおかしいはずです。
デザイン・プロセスには多様性があったほうがよいと思う。
そこで交わる人びとの多様性、usabilityという言葉に対する多様性、デザイン手法に対する多様性。
1つ1つのプロジェクトにおいて多様な要素をぶつけ合うことで、そこにはじめて創造性が生まれえるのではないでしょうか。
その意味で、誰もがusabilityの専門家になりうるし、誰もがusabilityについて考え、デザインを実践的に行っていくべきだと思います。多様性を排したusability感など、信じないほうがいい。それはusabilityに対する創造性を損なうと思うから。
デザインという活動に画一的な手法やプロセス、一部の専門家などの障害をもちこむことで、「クオリティという満足のいく経験を生み出」せなくなるのなら、それは本末転倒です。
デザインとは何かを型どおりに行うことではないはずです。
それは何かを生み出すこと、そして、自分自身を生み出す行為だと思うから。
「デザイナーが何かが機能すると言う時、それはもっと広い意味を持っている」のです。
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