マーケティングとユーザビリティってどこに違いがあるんだろう?って。
マーケティングのMAXレベル、ユーザビリティのMAXレベル
そんなのぜんぜん違うよと思う人が多いでしょうね。それはそれでいいと思います。それを否定する気はぜんぜんありません。ただ、僕が思ったのは、マーケティングもユーザビリティもともに狭義のそれではなく、いっぱいまでそのスコープを広げてしまったとき、その2つはぴったり重なってしまうのでは?っていう悩みだったからです。
僕が考えるマーケティングは、顧客中心の志向をもつものです。その場合の顧客は購入した商品・サービスを利用する人です。とうぜん、買ったものを使ってみて、ある程度の効果、効率、満足を得られなければ、再度、購入しようと思ったり、他の人に勧めたりということはしないでしょう。
僕が考えるユーザビリティは、ユーザー中心の志向をもつものです。その場合のユーザーは実際にそのものを使う際に、まず、そのものを手に入れようと情報収集を行うでしょうし、手に入れるために購入を行うでしょう。そして、そのものを利用するまですべての過程を含めて、僕はそのもののユーザビリティだと解釈しています。
こんな風に双方のスコープをMAXに近いレベルにまでもってきてしまうと、両者の区別はほとんどなくなってしまうのではないか? いや、なくなってしまっていると僕は悩んでいました。
最も効果的なマーケティングはユーザビリティでは?
そんな風な悩みを強化させたのが、最近、このブログでよく紹介している『デザイン思考の道具箱―イノベーションを生む会社のつくり方』『発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法』『イノベーションの達人-発想する会社をつくる10の人材』『』などの本の影響がとにかく大きいのです。これらの本で共通に描かれている、人々の観察、プロトタイピング、デザイン思考(デザインごころ)、ブレインストーミング(ホンダのワイガヤ)などは、どれもユーザビリティを実現するためにも用いられるISO13407:人間中心設計プロセスに酷似していると同時に、最高のマーケティング的な成果を生み出すものです。
また、『ペルソナ戦略―マーケティング、製品開発、デザインを顧客志向にする』を読んで以来、最近では一番の研究対象であるペルソナにしても、マーケティングと製品開発におけるユーザビリティの両方で利用されます。
その意味で、両者はまったく同じではないかと悩みつつ、すくなくとも、現在において最も効果的なマーケティング戦略はユーザビリティの追求だろうと確信をもってはいたのです。
売るためのマーケティング・コミュニケーションでさえユーザビリティの対象
しかし、悩みはその両者は本当にまったく同じものなのか?ということでした。売るためのマーケティング・コミュニケーションでさえ、僕はユーザビリティの対象だと考えています。
ある特定のユーザーがある特定の目的を目指して使うある特定のものとして、その効果、効率、満足が論じられるのであれば、自分が欲しいものにちゃんと苦もなく不快さもなく出会うためのマーケティング・コミュニケーションであるなら、それは立派に商品・サービスのパッケージの一部として商品・サービスのユーザビリティとして捉えられると思っています。
それはニールセンが『新ウェブ・ユーザビリティ』のなかで情報の検索性の問題を論じているのとまったく変わらないものだと考えます。
そういう視野にたつと、ますますマーケティングとユーザビリティの差異が見つけられずに、ずっと困っていました。
差別化という要素
そんな悩みをしばらく抱えて過ごしていたのですが、実は昨夜の帰宅中についに閃きました。マーケティングとユーザビリティの違いを!
それは「差別化」という要素にあるのではないか、と。
コトラーは、マーケティングとは差別化であるというような旨のことを言っています。
実際、差別化はマーケティングにおける基本的な戦略の1つです。
しかし、ユーザビリティ的な要件からは、差別化の必要性は生まれ得ないのではないか?
現時点ではそんな風に考えています。
人は多少、使い勝手が悪くても他人とは違うものを求める場合があります。
それがマーケティングにおいてはうまく機能する場合がある。
それはユーザビリティの範疇に入るか否か?
現時点での答えはいちお"NO"ですが、今後、考えを進めるうえではそれもユーザビリティの条件なのかもと思えてくるのかもしれません。
しかし、現時点ではそれがマーケティングをユーザビリティから差別化する1つの要素として僕のなかでは機能しています。
このことでしばらく悩み続けていた「マーケティングとユーザビリティってどこに違いがあるんだろう?」という問いに1つの答えを見つけることができました。
ただし、逆の言い方をすれば、僕にとっては「差別化」という唯一の差別化要因を除けば、マーケティングとユーザビリティはほぼ同一の考え方、プロセス、戦略で、ともに成果を出せるものでもあるのです。
この記事へのコメント